釜石市役所本庁舎前で、下松市の映画のラストシーンを演じる釜石市民
東日本大震災後に釜石市と交流を深めている山口県下松市で、両市のつながりを取り入れた映画の製作が進められており、16日には釜石市内で撮影が行われた。映画は、下松市で毎年開かれている震災復興応援イベント「がんばろう日本フェア」に合わせて企画されたもので、来年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催の盛り上げと、両市の交流をさらに進めることなどが目的。撮影には市民ら約20人が協力し、さらなる関係発展に期待を込めた。
両市の交流は2012年、下松市の企業が開催した同イベントに釜石の物産品が出品されたことでスタート。絵本の寄贈や寄付などの支援のほか、高校生の交流事業や文化面でも友好を深め、防災を通じた行政間の交流へと広がりを見せている。
同イベントは今年で7回目となり、2月24日から3月18日まで開かれる。今回はスポーツをテーマに東北、W杯を応援する企画を準備。加えて、これまでとは違った視点の釜石応援にしようと映画製作も企画に取り入れ、イベント期間中に上映することを決めた。
映画は「人とのつながりを大切にする街、下松」を舞台にした地域発信型作品で、タイトルは「ただいま」。お笑い芸人という人を笑わせる仕事に挫折し、複雑な思いを抱えながら古里に戻った主人公が、地域の人と触れ合う中で新たな希望を見いだすという物語。45分ほどの短編映画で、映像を通して街の魅力を全国に発信する活動を展開する下松フィルム・コミッションなどが製作を進めている。
釜石で撮影するのは、映画の最後に使う予定の場面。下松から投げられたラグビーボールを釜石で受け取るという設定で、両市のつながりを表現しているという。
この日は、監督・脚本を担当する渡辺熱(あつし)さん(54)=東京・デッドストックユニオン社長=と、製作協力する下松市のケーブルテレビ局Kビジョン放送制作部の3人が来釜。市役所本庁舎玄関前で、市職員、釜石シーウェイブスRFCの選手らとともに撮影に臨んだ。
両市の交流のきっかけを作った釜石振興開発の菊池利教部長がパスボールをキャッチし、参加者全員で「オール・フォー・ワン」と声を合わせる。10回ほど繰り返し、無事終了。菊池部長は交流の新たな形が生まれたことに「感無量。下松の応援、思いが伝わってくる。今まで積み上げてきた心のつながりを発展させながら続けたい。釜石でも映画を上映してほしい」と期待した。
渡辺さんは「人とのつながり、思いやりがテーマで、全国どこでも共感できる物語。心のすれ違いや挫折を癒やしてくれる人の優しさ、古里の良さを伝えられれば」と思いを込め、Kビジョンの宗森達司さん(42)は「つながった釜石で開催されるW杯の応援もあるが、映画の第2部として釜石を舞台にした物語も撮れればとの思いがある。下松のイベント、各地の映画祭にも出品し、つながりを発信したい」と意気込んでいる。
撮影の後、菊池部長と下松からの一行は野田武則市長を訪問。映画製作を報告し、釜石でも上映会を開きたいとの思いを伝えた。
(復興釜石新聞 2018年2月21日発行 第666号より)
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