サプライズで贈られた大漁旗を広げる加藤さんと荻野会長

震災時に助け合い、釜石小避難所スタッフ「同窓会」〜絆の強さ確かめ合う、市内外から32人 7年ぶりに再会

サプライズで贈られた大漁旗を広げる加藤さんと荻野会長

サプライズで贈られた大漁旗を広げる加藤さんと荻野会長

 

 東日本大震災から間もなく7年―。発災直後から辛苦を共にした避難所スタッフが6年の時を経て再会の喜びを分かち合った。当時、釜石市大渡町の釜石小避難所の運営に当たった大渡町内会(荻野哲郎会長)、同校教職員、行政職員らが3日、ホテルサンルート釜石で“同窓会”を開き、思い出を語り合いながら互いの労をねぎらった。

 

 県内外から32人が出席。円滑な避難所運営を率いた荻野会長、震災時に釜石小校長だった加藤孔子さん(現・見前小校長)に、それぞれの名前がプリントされたオリジナルの「釜小丸」大漁旗を贈り、感謝の気持ちを表した。津波の爪痕や避難所生活を記録したスライドも上映。生きるため必死だった日々をよみがえらせ、目を潤ませる人もいた。

 

 同校では、2011年3月11日の大地震発生後いち早く、避難者を受け入れる準備を開始。駆け付けた町内会員、教職員、市職員が対策本部を設置し、電気や水、暖房の確保に努めた。自主防災会を組織する同町内会。翌日には長期にわたる避難生活に必要な分担体制を整え、炊き出しや衛生管理、連絡調整などさまざまな活動に奔走した。ピーク時には700人以上が身を寄せ、各教室や体育館はすし詰め状態に。幾多の困難を乗り越えながら、8月10日の閉鎖まで避難者を支え続けた。

 

久しぶりの再会に明るい笑顔を輝かせる元スタッフら

久しぶりの再会に明るい笑顔を輝かせる元スタッフら

 

 当時の教職員約20人と運営を支えた加藤さん(60)は「自らも被災し大変な中で、頑張ってくださった皆さん。陰で涙をぬぐう姿を何度目にしたか…。本当に感謝の思いでいっぱい。“チーム釜小”の力は素晴らしかった」と振り返る。

 

 町内で割ぽう「丸藤」を営む藤田正社長(67)は、店舗や自宅が被災しながらも避難者の食事作りに尽力。地元の米穀店、仕出し店などから食材を提供してもらい、避難者の要望にもできるだけ応えた。「誰かがやらねばという一心で、とにかく前向きになった。7月に店を再開したが、避難所にいた家族が来てくれた時はうれしくてね」と、共に支え合った仲間との絆をかみしめた。

 

 北九州市から同避難所に応援職員として派遣されて以来、釜石とのつながりを持ち続け、昨年4月から長期派遣で市水産課に勤務する藏本英司さん(43)は「釜小の避難所運営は普段の訓練の賜(たまもの)で、他地域の模範となる。こちらで学んだことを九州でも生かしたい」と誓った。

 

 5カ月に及ぶ避難所生活で関係者の心に深く刻まれているのが、1カ月遅れで行った同校の卒業式。学校側は当初、音楽室で卒業証書の伝達だけできればと考えていたが、荻野会長らから「みんなで祝ってやっぺし」との声が上がり、布団などをよけた体育館で開催することに。避難者やスタッフも式を見守り、避難所で毎朝、歌っていた校歌「いきいき生きる」(井上ひさし作詞)を高らかに歌い、42人の卒業生を送り出した。

 

 荻野会長(75)は「大勢の人が集まる避難所では人間関係など苦労もあるが、班編成し連絡系統を明確にすることで混乱を避けられた。有事の際は、やはり普段からの町内会活動がものをいう。この経験を後世にしっかりと伝えねば」と思いを新たにした。

 

(復興釜石新聞 2018年2月7日発行 第662号より)

 

復興釜石新聞

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冬の日差しを背に元気に駆け出す親子の部の参加者。命を守る意識を高めながら高台を目指す

「津波だ、逃げろ」高台へ、教訓胸に駆け上がる〜仙寿院で5回目の新春韋駄天競走、市内外から123人が参加

冬の日差しを背に元気に駆け出す親子の部の参加者。命を守る意識を高めながら高台を目指す

冬の日差しを背に元気に駆け出す親子の部の参加者。命を守る意識を高めながら高台を目指す

 

 津波から命を守る“高台避難”の意識啓発を目的とした「新春韋駄天(いだてん)競走」が4日、釜石市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝崎恵応住職)をゴール地点に行われた。同寺の節分行事の一環で、5回目の開催。3~58歳の男女123人が境内に続く急坂を駆け上がり、迅速な津波避難の大切さを体感した。

 

 年齢や性別などで分けた6部門でレースを実施。東日本大震災の津波で浸水した只越町、現消防屯所付近をスタート地点に、津波避難場所となっている標高約30メートルの同寺まで286メートルを駆け抜けた。沿道の声援や只越虎舞の太鼓が参加者を後押し。息を切らせて上ってくる人たちを温かい拍手で迎えた。

 

 八雲町の和田茂さん(58)は「てんでんこ未来へ」と記した鉢巻きを締め、津波で亡くなった元職場の同僚5人の名前を書いた鎮魂のバトンを握りしめて一度も止まることなく走り切った。「『逃げるが勝ち』です。自分の命は自分で守るのが基本。難しい場合は誰かに助けを求めることも必要」と実感を込めた。

 

 各部門の1位には「福男」や「福女」の認定書を授与。同行事のヒントとなり、“福男選び”の開門神事で全国的に有名な兵庫県西宮神社から、福の神「えびす様」の木像が記念品として贈られた。

 

 最もエントリーが多い男性29歳以下の部を制したのは、県沿岸広域振興局に勤務する高橋拓実さん(23)。初任地釜石で舞い込んだ思わぬ福に笑顔を輝かせた。「スタート位置が後方で上位は無理だと思ったが、逆にリラックスして走れた」と勝因を明かし、「農林部で働いているので、台風とかの農業被害がない1年になれば」と福男効果に期待した。

 

 親子の部で「福親子」となった花巻市の後藤竜也さん(46)、尚希君(10)は昨年に続き2回目の参加。大槌町出身の竜也さんは津波で実家が流され、難を逃れた両親を呼び寄せ、共に花巻で暮らす。「息子は津波を経験していない。将来、沿岸部に住むこともあるだろう。津波から逃げることをこの行事で教えたい」と竜也さん。尚希君は「お父さんが引っ張ってくれて最後まで走れた。もし津波にあっても、友達と一緒に避難できるようにしたい」と誓った。

 

各部門で1位になった参加者。周りに福を分け与える1年に

各部門で1位になった参加者。周りに福を分け与える1年に

 

 同行事は、関東在住の釜石出身者らで結成する「釜石応援団あらまぎハート」が企画。津波の教訓を地域に根付いた形で未来に残したいと構想を練り、仙寿院の賛同を得て実現させた。釜石支部長の下村達志さん(42)は「復興が進み日常が急激に戻る中で、震災の風化は避けられない。こういう機会に意識を高めることが大事。震災を知らない子どもに伝えたいと親子で継続参加してくれる人がいるのも意義あること」と話した。

 

 西宮神社開門神事講社の平尾亮講長(41)は、福男選びでも身に着けられる黄色の“えべっさん”手袋を参拝客や中学生が寄せたメッセージカードと共に参加者に贈呈。事故による負傷で右足が不自由ながら、今年も松葉づえをついて坂道を駆け、同行事の趣旨に賛同と感謝を表した。

 

 その他、4部門の1位は次の通り。
 【女性】阿部美由紀(35)北上市【小学生】田村葵里(12)山田町【中高生】長沼琉唯(14)矢巾町【男性30歳以上】遊佐昌由(33)福島市

 

(復興釜石新聞 2018年2月7日発行 第662号より)

 

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2階展示をリニューアル。世界遺産関連の解説を充実させた

鉄の歴史館、展示をリニューアル〜「橋野鉄鉱山」世界遺産登録にちなみ、総合資料館へ魅力高める

2階展示をリニューアル。世界遺産関連の解説を充実させた

2階展示をリニューアル。世界遺産関連の解説を充実させた

 

 釜石市は、大平町の市立鉄の歴史館の展示をリニューアルした。「橋野鉄鉱山」の世界遺産登録にちなんだ展示を充実させ、総合演出シアターを一部改修。「鉄の総合的な資料館」としての魅力を高め、市全体の観光促進につなげる。

 

 リニューアルしたのは、官営から民営へと移り、やがて隆盛を極めた釜石の鉄鋼産業の近現代と、そこに登場する先駆的人物を取り上げている2階の展示で、パネルを全て作り変えた。時代解説22枚、人物解説6枚、年表が4枚の計32枚。市世界遺産室の森一欽係長は「釜石から八幡製鉄所につながる部分の解説を充実させた。流れが分かりやすくなったと思う。写真も以前より多く使うことができた」と話す。

 

 橋野高炉跡三番高炉の原寸大模型を中心に、音と光と映像によって釜石の鉄の歴史を幻想的に展開させるシアター(1階)も改修。模型はこれまで上映中のみの稼働となっていたが、上映していない時でも同館職員らが動かして鉄づくりの流れを解説できるよう操作装置を設置した。

 

 同館は1985年に開館し、2017年度で33年目を迎えた。同室によると、1994年に大規模な改修工事を行って再オープンし、近代製鉄発祥150周年に合わせ2007年に1階展示コーナーの展示パネルをリニューアル。世界遺産登録を機に16年4月にはシアターで流す映像を新たにした。

 

 ここ数年の来館者は1万2千人前後で推移し、世界遺産に登録された15年度は1万8千人余りと伸びた。今年度は1月30日現在で1万949人。1、2階の展示方法の整合性と内容の充実などと合わせて新たな魅力発信を図るため、改修を決めた。

 

 事業費は約1300万円で、国の地方創生拠点整備交付金を充てた。

 

(復興釜石新聞 2018年2月3日発行 第661号より)

 

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初出場で優勝した釜石の「ウル虎セブン」(左端は佐久間監督)

強豪破り雪合戦制す、北海道で開かれる国際大会へ〜釜石市の女子チーム「ウル虎セブン」ハンディ克服し快挙

初出場で優勝した釜石の「ウル虎セブン」(左端は佐久間監督)

初出場で優勝した釜石の「ウル虎セブン」(左端は佐久間監督)

 

 第24回「ほっとゆだ北日本雪合戦大会~西和賀町長旗争奪2018」は1月27、28の両日、同町の湯田小グラウンド特設コートで開かれ、釜石市からレディース部門に初出場した「ウル虎セブン」は雪国の強豪チームを蹴散らし、優勝した。同チームは今月24、25日に北海道壮瞥町で開かれる第30回「昭和新山国際雪合戦」に出場する。

 

 3部門に分けて行われた大会には、一般男子57、ミックス(男女混成)38、レディース9の計104チームが参加し、雪上の戦いを繰り広げた。レディース部門は4年目で、地元の紅部レイダースが3連覇を狙っていた。

 

 釜石は予選リーグで西和賀を破り1位通過。6チームによる準決勝リーグも突破した。4チームが進んだ決勝トーナメントで、準決勝の相手は再び西和賀。釜石は2セットを先取して実力を証明した。

 

 決勝の相手は前年の日本選手権チャンピオン、花巻めしべ。2セットまでノーカウントの接戦となり、釜石は最終セットでわずかな得点差を守り切り、初出場初優勝の快挙を達成した。

 

 釜石のメンバーは、釜石市、大槌町、宮古市、遠野市の中学生、高校生、社会人の10人で編成。母子が2組あり、宮古に女子チームがなく、釜石に加入した高校生もある。

 

 あまり雪が降らない釜石市に雪合戦競技の戦術、技術、魅力を広めたのは、レディース監督の佐久間定樹さん(35)=市スポーツ推進委員、唐丹すぽこんクラブ事務局。15年前から内陸部の企業に勤め、雪合戦競技に熱中。震災を機に釜石に戻り、夏場の砂浜での模擬大会、冬場の遠征・交流を重ね、雪のないハンディキャップを克服してきた。

 

奮戦する釜石(手前)は実戦不足のハンデもはねのけて

奮戦する釜石(手前)は実戦不足のハンデもはねのけて

 

 佐久間さんは「メンバーは、ほぼ毎週の練習を楽しんで行っている。熱心で、雪合戦の戦術理解も早い」と評価する。北海道での国際大会は高校受験に向けた追い込みの時期と重なるが、釜石中3年の大和田琳さんは「優勝を目指して1年間、作戦を考え、練習を積み重ねてきた。うれしい」と喜んだ。

 

 釜石から昨年に続き一般男子の部に出場した「タイガーセブン」はベスト16まで進出したが、決勝トーナメントの初戦で宮古(準優勝)に敗れた。

 

(復興釜石新聞 2018年2月3日発行 第661号より)

 

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郷土の原風景の一つ「本郷の桜並木」の手入れに励む唐丹町住民ら

桜祭りへ並木を手入れ、唐丹町本郷〜地域住民 春待ち望み精を出す

郷土の原風景の一つ「本郷の桜並木」の手入れに励む唐丹町住民ら

郷土の原風景の一つ「本郷の桜並木」の手入れに励む唐丹町住民ら

 

 桜並木の花吹雪の中を大名行列が進む壮観な桜祭りで知られる釜石市唐丹町の本郷地区で28日、並木の手入れが行われた。住民、ボランティアら60人が参加し、植樹から84年を経て老化が進む木の枝打ちに精を出した。東日本大震災後は、2015年以来2回目となる桜祭り(天照御祖神社式年大祭)は今年4月下旬を見込むが、震災の復興途上で、大名行列が桜並木を渡御するかどうかはまだ決まっていない。

 

 午前中行われた桜並木の手入れ作業には、全町で構成する唐丹地域会議(川原清文会長)と本郷町内会(小池直太郎会長)を主体に、市職員らも参加した。電気工事業のアイ・デン社が高所作業車2台、釜石地方森林組合は大型グラップル積載車を出し、それぞれの職員が協力。専門知識を持つNPO法人桜onプロジェクトの樹木医、西山正大(ただし)さん(38)ら4人が指導した。

 

 並木は1933(昭和8)年12月23日の天皇生誕を祝い、翌年に旧唐丹村青年団が村内の幹線道路(旧国道45号)の全区間にソメイヨシノの苗木を植えた。同年3月3日の三陸大津波からの復興機運の醸成も願う大事業だった。

 

 本郷地区の中心部には850メートルにわたる並木がある。満開の桜の下で繰り広げられる大名行列の美しさは長年、祭りの白眉とされてきた。その名勝も、木の老化で失われかけている。

 

 今回の作業の対象となったのは約70本で、うち50本を手入れした。テングス病の枝や朽ちた幹を切除し、根や幹の負荷を軽減。花芽を採取し保存、肥料を施した。住民やボランティアは手作業でせん定し、切り落とした大小の枝を集めた。

 

 樹木医の西山さんらは震災後、3度目の本郷来訪。手入れの指導とともに花芽の採取も行い、唐丹の桜の遺伝子を保管する。「手入れと同時に、唐丹の桜の物語を残すことが大事。それを決めるのは住民であり、その意向によって、私たちが支援できることもあるだろう」と語った。

 

 この活動は、唐丹地域会議に対する宝くじ(自治総合センター)のコミュニティ助成金を活用した。

 

(復興釜石新聞 2018年1月31日発行 第660号より)

 

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第21回女性文化賞を受賞した千田ハルさん(中)。贈呈した米田佐代子さん(右)と

千田ハルさんに女性文化賞、艦砲記録に力を尽くす〜米田さん(女性史研究家)釜石を訪れ受賞祝う

 第21回女性文化賞を受賞した千田ハルさん(中)。贈呈した米田佐代子さん(右)と

第21回女性文化賞を受賞した千田ハルさん(中)。贈呈した米田佐代子さん(右)と

 

 終戦間際に釜石を襲った2度の艦砲射撃を体験し、詩人集団「花貌(かぼう)」の活動などで平和の尊さを訴え続けてきた釜石市中妻町の千田ハルさん(93)が、第21回女性文化賞(詩人・高良留美子さん創設)を受賞した。27日、地元有志が開いた受賞を祝う会で、今回から同賞を引き継いだ女性史研究家の米田佐代子さん(83)=NPO法人平塚らいてうの会(東京都)会長=が、賞金と記念品を贈呈。千田さんは「これまで一緒にやってきた仲間といただいた賞。大変ありがたい」と感謝の気持ちを表した。

 

 同賞は、女性の文化の担い手を支援し、その活動に感謝しようと、1997年に高良さん(東京)が個人で創設。20回継続後、健康上の理由などで後継者を望んでいた高良さんの思いを、第13回受賞者でもある米田さんが継いだ。

 

 受賞者選定にあたり米田さんは、2015年に本県で開かれた「第12回全国女性史研究交流のつどい」にゲスト出演し、自身の人生を語った千田さんに着目。昨年9月、釜石入りし、その功績や作品の素晴らしさに触れ、贈呈の意思を強くした。

 

 米田さんは「花貌の活動で多くの戦争体験記録を集め世に伝えてきたことに加え、千田さんの生活実感、平和への願いが込められた文章や短歌に、自分の精神を強く持ち現実に立ち向かおうとする気持ちが見える」と選定理由を説明。千田さんが戦後、戦争の本質を知ろうと一生懸命勉強し、自ら考え行動に移してきた姿勢も高く評価した。

 

 祝う会には、千田さんと共に平和運動に取り組んできた地元関係者ら24人が出席。米田さんから賞金と副賞のリトグラフ(版画)、写真立てが千田さんに贈られ、全員で喜びを分かちあった。

 

 千田さんは1924(大正13)年、釜石市鈴子町生まれ。戦時中、釜石製鉄所にタイピストとして勤務し、45年7月14日、8月9日の米英連合軍による艦砲射撃を体験した。21歳の時だった。戦後、職場に労働組合が結成され、学習会や文化活動に参加。47年、文学や憲法を学んできたサークル仲間で詩人集団「花貌」を立ち上げ、同人誌を創刊。詩や短歌、随想などを発表し続けた。

 

千田さんらが刊行した「花貌」の冊子

千田さんらが刊行した「花貌」の冊子

 

 71年からは分冊として釜石艦砲記録集を刊行。95年までの20分冊に延べ300人以上の戦争体験証言を掲載し、合本は全国から反響があった。千田さんは92年から花貌の編集責任者となり、2004年、73号で終刊するまで、文芸によるメッセージ発信に情熱を傾けた。

 

 並行してさまざまな反戦、平和運動にも参加。戦争を知らない子どもたちに戦争体験を語り伝える活動も行ってきた。15年には“卒寿記念”として、絵本「あぁ、わが街に砲弾の雨が降る―釜石を二度も襲った艦砲射撃で千人の命が!」を自費出版。今も「艦砲から助かった命だから」と、平和を守る活動を続ける。

 

 「何も分からず戦争に協力した悔しさが自分の活動の原点。そういう過ちを繰り返さぬよう、今の子どもたちには、よく勉強してもらいたい」と千田さん。自衛隊や憲法に関する国会審議にも触れ、「戦争は絶対ダメ。憲法を守るために今が大事な時。これからの人たちに頑張ってほしい」と願った。

 

(復興釜石新聞 2018年1月31日発行 第660号より)

 

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近代製鉄発祥160周年記念フォーラム

近代製鉄発祥160周年記念フォーラム

近代製鉄発祥160周年記念フォーラム

 

安政4(1857)年に盛岡藩士 大島高任が洋式高炉による連続出銑に成功してから160年が経ちました。

 

近代製鉄発祥の地・釡石の情報発信とものづくりの魂の次世代への継承、さらには橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産」の理解増進のため、記念フォーラムを開催します。

主催

釜石市、釜石市教育委員会

共催

鉄のふるさと釜石創造事業実行委員会

後援

岩手県、岩手県教育委員会、一般社団法人日本鉄鋼連盟

日時

平成30年2月10日(土)
10時開演(開場9時30分)、終演13時予定

会場

釜石市民ホールTETTO ホールA ※入場無料

主な内容

※司会進行 テレビ岩手アナウンサー 古舘 友華 氏
■記念対談
テーマ:鉄のまち釜石から世界へ
対談予定者
・内閣官房参与 加藤 康子 氏
・国連人口基金東京事務所長 佐藤 摩利子 氏
・釜石応援ふるさと大使(元釜石製鐵所長) 猪瀬 迪夫 氏
・釜石市長 野田 武則
 
■「鉄とともに!!」スペシャルライブ  テツandトモ
音楽パフォーマンスと釜石にちなんだオリジナル曲の披露
釜石の特産品が当たる抽選会
■鉄のふるさと宣言
釜石市立白山小学校 6年生6人による朗読

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釜石市 産業振興部 世界遺産室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話 0193-22-2111 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/spot/hashino_tekkouzan/detail/1216042_3028.html
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釜石市制施行80周年記念式典

釜石市制施行80周年記念式典

釜石市制施行80周年記念式典
 

昭和12(1937)年5月5日、盛岡市に次いで県下で2番目に市制を施行した釡石市。

 

今年度は市制施行から80年を記念し、先人たちが築き上げてきた歴史を振り返るとともに、東日本大震災を経験した私たちの、次の10年に向けたキックオフとなる記念式典を開催します。市民の皆さんのご来場をお待ちしています。

日時

2月9日(金)14時(開場13時30分)

場所

釡石市民ホールTETTO ホールA(入場無料)

主な内容

・市民憲章唱和
・市勢功労者表彰
・市制80年のあゆみ
映像上映
・アトラクション
釡石東中学校・東海市加木屋中学校合同合唱
釡石商工高校虎舞
・市民歌斉唱
参列者全員

問い合わせ

総務課 市制施行80周年記念事業推進室 ☎22-2111(内線111)

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広報かまいし2018年2月1日号(No.1681)

 広報かまいし2018年2月1日号(No.1681)

 

 広報かまいし2018年2月1日号(No.1681)

広報かまいし2018年2月1日号(No.1681)

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【目次】
表紙:釜石市制施行80周年記念式典、近代製鉄発祥160周年記念フォーラム、第8回全国虎舞フェスティバルを開催します
P02:復興住宅の入居者を再募集します、空き家有効活用セミナーを開催します
P03:岩手県海洋エネルギーシンポジウム、岩手県海洋エネルギー産業化研究会・講演会を開催します など
P04:意見を募集しています
P06:今月のインフォメーション
P08:第23回釜石市郷土芸能祭を開催します

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/koho/backnumber/detail/1215945_2596.html
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取り組みの成果を野田市長に報告した日本IBMと釜援隊の関係者

「釜石モデル」広めよう、活動成果をまちづくりに〜釜援隊 野田市長に取り組み案報告、地域への還元が今後の課題

取り組みの成果を野田市長に報告した日本IBMと釜援隊の関係者

取り組みの成果を野田市長に報告した日本IBMと釜援隊の関係者

 

 国が東日本大震災からの復興・創生期間終了と位置付ける2020年に向け、釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)の総括と方向性の検討を進めてきた釜石市と日本IBM(東京都中央区)は23日、釜援隊の活動成果や生み出した価値を今後のまちづくりにつなぐための取り組み案がまとまったとして野田武則市長に報告した。

 

 リージョナルコーディネーターは、復興事業やまちづくりの手助けをする復興支援員。釜援隊は市が総務省の復興支援員制度を活用して全国から募集し、13年4月に導入した。まちづくりに取り組む人や組織をつなぐ「調整役」として、これまで26人を受け入れ、うち12人が卒業し、現在14人が活動。メンバーはマスコミ、商社、国際開発機関など多様な経歴を持つU・Iターン者で、前職の経験や民間感覚を生かして地域活動や産業振興などを支援している。同支援員制度は20年度に終了が見込まれる。

 

 復興から地方創生へと移り変わる中、市は釜援隊が担っている役割や得た知見を未来に引き継ごうと、IBM戦略策定助成サービスを活用した「釜援隊の海図プロジェクト」を昨年10月から3カ月間展開。同社社員が隊員、市や隊員の派遣先の担当者ら15人に聞き取りを行い、隊員が提供した価値や残すべき事業と方法などを報告書(80ページ)にまとめた。

 

 報告は市役所で行われ、同社グローバルビジネスサービス事業部の中村健一部長が報告書の概要版で必要な取り組みを説明。「日本の中でも他にない活動。震災復興の中で隊員それぞれが個人事業主として構想を練り実行し、新しい風や人のつながりを生み、それが隊全体の力になった。そこに大きな価値がある。釜石らしいモデルとしてパッケージ化し、日本に広めてほしい」と強調した。

 

 海図としてまとめた取り組み案は、▽3つの総括=釜援隊を振り返る(残すべき組織活動・機能の検討、市・市民に提供した価値の定義など)▽5つの実践=閉じる活動・残すべき活動の整理(市とのコミュニケーション実施、継続活動のための財源確保の検討など)▽1つの開拓=釜石発リージョナルコーディネーター(展開方法の検討など)。20年度までに関係者と協議を進めていく。

 

 釜援隊の二宮雄岳隊長は「よそ者が多い組織を受け入れてくれた地域のおかげで活動できた。きっかけをつくったのは隊員だが、地域とともに起こした事業をどうやって地域に還元するかが課題。必要なものを残していくため取り組みを進めたい」と力を込めた。

 

 野田市長は「未曽有の大災害の中、志を持った人が集まったのが釜援隊。復興を中身の濃いものにしてもらった感がある。地方創生に向けた取り組みにいい効果を生み出してくれた大事なプロジェクト」と評価。報告書作成に協力したとして同社に感謝状を贈った。

 

 同席した山崎秀樹副市長は「次のステップアップとして価値を引き継ぐため、行政としても改めて方向性を考えなければ」と話した。

 

(復興釜石新聞 2018年1月27日発行 第659号より)

 

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