「津波だ、逃げろ」高台へ、教訓胸に駆け上がる〜仙寿院で5回目の新春韋駄天競走、市内外から123人が参加

復興釜石新聞2018/02/13

冬の日差しを背に元気に駆け出す親子の部の参加者。命を守る意識を高めながら高台を目指す

冬の日差しを背に元気に駆け出す親子の部の参加者。命を守る意識を高めながら高台を目指す

 

 津波から命を守る“高台避難”の意識啓発を目的とした「新春韋駄天(いだてん)競走」が4日、釜石市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝崎恵応住職)をゴール地点に行われた。同寺の節分行事の一環で、5回目の開催。3~58歳の男女123人が境内に続く急坂を駆け上がり、迅速な津波避難の大切さを体感した。

 

 年齢や性別などで分けた6部門でレースを実施。東日本大震災の津波で浸水した只越町、現消防屯所付近をスタート地点に、津波避難場所となっている標高約30メートルの同寺まで286メートルを駆け抜けた。沿道の声援や只越虎舞の太鼓が参加者を後押し。息を切らせて上ってくる人たちを温かい拍手で迎えた。

 

 八雲町の和田茂さん(58)は「てんでんこ未来へ」と記した鉢巻きを締め、津波で亡くなった元職場の同僚5人の名前を書いた鎮魂のバトンを握りしめて一度も止まることなく走り切った。「『逃げるが勝ち』です。自分の命は自分で守るのが基本。難しい場合は誰かに助けを求めることも必要」と実感を込めた。

 

 各部門の1位には「福男」や「福女」の認定書を授与。同行事のヒントとなり、“福男選び”の開門神事で全国的に有名な兵庫県西宮神社から、福の神「えびす様」の木像が記念品として贈られた。

 

 最もエントリーが多い男性29歳以下の部を制したのは、県沿岸広域振興局に勤務する高橋拓実さん(23)。初任地釜石で舞い込んだ思わぬ福に笑顔を輝かせた。「スタート位置が後方で上位は無理だと思ったが、逆にリラックスして走れた」と勝因を明かし、「農林部で働いているので、台風とかの農業被害がない1年になれば」と福男効果に期待した。

 

 親子の部で「福親子」となった花巻市の後藤竜也さん(46)、尚希君(10)は昨年に続き2回目の参加。大槌町出身の竜也さんは津波で実家が流され、難を逃れた両親を呼び寄せ、共に花巻で暮らす。「息子は津波を経験していない。将来、沿岸部に住むこともあるだろう。津波から逃げることをこの行事で教えたい」と竜也さん。尚希君は「お父さんが引っ張ってくれて最後まで走れた。もし津波にあっても、友達と一緒に避難できるようにしたい」と誓った。

 

各部門で1位になった参加者。周りに福を分け与える1年に

各部門で1位になった参加者。周りに福を分け与える1年に

 

 同行事は、関東在住の釜石出身者らで結成する「釜石応援団あらまぎハート」が企画。津波の教訓を地域に根付いた形で未来に残したいと構想を練り、仙寿院の賛同を得て実現させた。釜石支部長の下村達志さん(42)は「復興が進み日常が急激に戻る中で、震災の風化は避けられない。こういう機会に意識を高めることが大事。震災を知らない子どもに伝えたいと親子で継続参加してくれる人がいるのも意義あること」と話した。

 

 西宮神社開門神事講社の平尾亮講長(41)は、福男選びでも身に着けられる黄色の“えべっさん”手袋を参拝客や中学生が寄せたメッセージカードと共に参加者に贈呈。事故による負傷で右足が不自由ながら、今年も松葉づえをついて坂道を駆け、同行事の趣旨に賛同と感謝を表した。

 

 その他、4部門の1位は次の通り。
 【女性】阿部美由紀(35)北上市【小学生】田村葵里(12)山田町【中高生】長沼琉唯(14)矢巾町【男性30歳以上】遊佐昌由(33)福島市

 

(復興釜石新聞 2018年2月7日発行 第662号より)

 

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