タグ別アーカイブ: 地域

ks500_02

【復興釜石新聞 500号発行記念】釜石の日常と復興を伝えて5年〜これからも地域のつなぎ役として役立ちたい

復興釜石新聞 500号発行記念インタビュー

 

2011年6月11日の創刊から5周年、2016年7月2日には第500号を発行する「復興釜石新聞」。この節目を記念して、かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんすでは、釜石新聞社 川向編集長にインタビューを行い、復興釜石新聞のこれまでとこれからについてお話しを伺いました。

 

インタビュアー:平松 伸一郎(釜石スイミンシャ事務所)

 

震災直後の情報不足の中、市の要請で市民待望の創刊

 

——『復興 釜石新聞』(以下、釜石新聞)は、震災からちょうど3カ月後の2011年6月11日、まだまだ混乱が続く中での創刊から5年が経ち、7月2日には第500号が発行されます。この一つの大きな区切りを迎えていかがですか。

 

 創刊5年、あるいは通算500号という区切りを迎えること自体、知りませんでした。他紙の記者さんに言われて気づいたほどです。それだけ1号1号を出すのに精一杯でした。それはマンパワーも時間もお金もギリギリの状態で次号のことを考えるのが精一杯で、それを積み重ねてきたらあっという間に500号に達したということです。

 

——創刊までの経緯を伺いたいと思います。発災直後、われわれ市民は情報に飢えていました。

 

 あの頃は、市でも広報誌を出せない状態で、市から2週間に1回程度発行される「災害対策本部情報」が唯一の紙媒体による情報源でした。ラジオなどは情報をどんどん流せますが、情報を手元に残すことができません。特に行政からの情報は紙媒体で確認しないと被災者の方々も行動できない状況もあり、4月半ばに市から協力要請がありました。そして6月に新聞の形態を採って創刊したというわけです。そのとき野田武則市長は「行政情報もイベントなどのお知らせも、新聞のような日常の記事の中にあると読まれる」とおっしゃいました。実際にやってみると市長の慧眼でした。特に無料で全戸配布だった頃は、お知らせ記事で紹介したイベントにたくさんの人が来ている光景を見ると、実際に『釜石新聞』が読まれているのを実感したものです。この春も、ある文化サークルを紹介したら、震災後は募集活動をしていなかったのだけど、記事になって5人が入会したそうです。それを聞いてびっくりしました。

 

——今やネット社会とはいえ、釜石の場合はまだまだ紙媒体への需要がありますよね。

 

 そうですね。2014年11月に有料化して以来、今もこうして続いていることの裏には、釜石の特殊な事情があると思います。一つめは、いわゆる高齢化が他市町村より進んでいるわけですから、「情報は紙で確認したい」というニーズが根強かったこと。二つめは、三陸沿岸の地理的に隔絶された社会であることから、地域紙文化が育っていたこと。隣の大船渡市には『東海新報』さんという地域紙がありますが、震災前の釜石にも『岩手東海新聞』という地域紙があり、半世紀近く読まれてきたという歴史的習慣がありました。地域紙では、ある程度エリアを限定することが重要です。今回われわれは、大槌は含めず釜石だけを対象エリアとしてくくりましたが、平地続きの盛岡などではどこでくくったらよいか分からないわけです。

 

 ちなみに、有料化する際のいちばんの判断基準になったのが、お金を払ってどれだけの人が読んでくれるかということでした。購読数が3,000部では有料化は無理でした。月極900円で4,000部を超えればいけるかなと読んでいましたが、5,000部を超えたので有料化に踏み切ったのです。これは大きな決断でした。もちろん講読料だけでは継続できませんので、あとは広告主さまのおかげです。

 

ks500_02

 

地域紙にしかできない紙面づくり。10年後、20年後に、さらなる価値が生まれる

 

——紙面づくりのコンセプト(基本となる考え方)のようなものはあったのですか。

 

 週2回の発行ですから、3日間の日々の出来事や情報をコンパクトにまとめ、そこに行政の情報をプラスして紙面を構成すること。実際のところは、それしか出来ないのが現状でもあります。深く掘り下げた記事を書くには、人も時間も必要です。コンセプトというより、実態に合わせた結果です。

 

——しかしながら、それこそ市民が求めているものではないでしょうか。

 

 確かに、うちに求められているのは、釜石という地域の日々の空気、あるいは日々の動きを、日記を読むように知りたいということではないかと感じています。例えば、あるテーマに対して論陣を張るような難しいことを書いても、これだけの部数は出ないだろうし、読まれないでしょう。

 

——そうは言いながらも、週2回の発行は実際には大変だと思いますが、どのような体制で臨んでいるのですか。

 

 週2回の発行を続けるのは、それは大変です。現在の社員数は10名。仕事内容は、記事制作、パソコンを使っての紙面制作、校正、さらに経理もあります。そして一部地域の配達、集金もやらねばならず、一人二役、三役をこなしながら何とか成り立っているわけです。

 

 取材体制は、創刊時には未経験者だった者を含む記者が4名。もちろん私も記事を書きますが、レイアウト(割り付け)も担当しています。分担すればいいじゃないと言われますが、私が頭に入れて管理しないと間に合わないんですよ。それで、このあいだの釜石高校の甲子園取材のときは大変でした。レイアウトなどもネットを活用すればできるのでしょうが、編集部でないとできない作業があるので、他紙の記者さんに笑われながら釜石と甲子園を3回往復しました。

 

 新聞と名付けた以上は、紙面にはスポーツあり文化あり、ある特定のテーマに限らず、いろいろな分野の記事を入れなければなりません。やはり地元の子供たちの活躍を伝えるこういう記事があるから『釜石新聞』は読まれているんですよ。

 

——中総体など学校関連のスポーツ記事はとても読まれると聞きます。スポーツに限らず、自分の知っている人が載っている、顔の見える記事が求められているのでしょうか。

 

 そうした記事の役割は大きいです。また、それこそ地域紙じゃないとできないことですよね。学校の読書感想文コンクールなどの受賞生徒の名前を見る楽しみもあると思います。さっき日記のつもりでやっていると言ったのは、こういう小さな情報はうちの新聞がなかったら絶対に残らないからです。われわれが現場に行って、取材して、写真を撮ってくるから新聞記事というかたちとして残るし、地域紙でなければ、ここまで細かく紹介されることはないわけです。そこでお役に立っているという実感はあります。

 

 逆に言えば、今は日々の事象だけど、10年、20年が経って『釜石新聞』の価値が出てくるものだと思います。

 

——まさに、10年後、20年後に自分の日記を読み返すように、釜石の日記を読み返すわけですね

 

 時が経って読み返す価値はありますよね。この新聞からいろいろなことが広がる可能性はあります。今は分析できていないけど、その人なりの時代の捉え方がありますので、過去の記事を見て、そこから何かを読み解くきっかけにはなりますよね。

 

ks500_04

 

地道な新聞づくりを通して、釜石の復興の後押しになればうれしい

 

——この5年間は、現場取材を含めた新聞制作を通じて、まさに釜石の復興の様子を見つめてきたわけですが、いわゆる「復興」に対してはどのように感じていますか。

 

 こうした「復興」に関する質問をよくされるのですが、正直に言えば、過去を振り返る余裕もないし、先を見通す余裕もない状況なので、お答えできせん。それでいいのかと自問自答もしますが、前述のとおり、とにかく次号を出すことで常に頭がいっぱいなのです。「印象に残っている記事や取材は何か」とも聞かれますが、それもないです。もちろん、ラグビーワールドカップ2019の開催地決定や橋野鉄鉱山の世界遺産登録、釜石高校の甲子園出場などは大きな出来事でしたが、既に過去の1号の記事の一つです。

 

 ただ、釜石は、他の地域に比べて相対的に復興が進んでいると言われていますが、『釜石新聞』がその雰囲気づくりの一助になっているのではないかとは思います。この新聞がなかったら、市民のみなさんが釜石の復興の度合や現状を今ほどに感じることはできないのではないでしょうか。確かにわれわれは深い掘り下げはできないけれど、日々の空気を伝えることはできます。その空気を感じることで、被災者だけでなく、被災者以外の日常の生活を感じながら、復興の状況を地域全体で共有できるのは大きいのではないでしょうか。復興のために頑張っている方がたくさんいらっしゃいますが、その活動をコンパクトにまとめてお知らせするのがうちの役割です。みなさんの実際の活動とそれを伝える『釜石新聞』の存在が相まって、釜石が比較的に復興が進んでいると言われる理由の一つになっているのではないかとも思います。

 

——『釜石新聞』のこれからについてはいかがですか。

 

これも、1号1号を地道に重ねていくしかない。それだけです。1年後に釜石がどうなっているか考える余力もないので、これまでやってきたことをコツコツと、地域の動きをコンパクトにまとめて共有する。それが結果的に釜石の復興の後押し、雰囲気づくりに役立てばうれしいです。また、県外を含む市外にも約150部が購読されており、釜石に思いを寄せる他地域の人と釜石とをつなぐ役割もあると思います。さらに、釜石市内には一般紙が届かない地域があるのですが、そうした地域にも無料時代は全戸配布し、約80部の購読数がある今では発行日には届くよう郵送で購読者に送っています。要するに、われわれ『釜石新聞』がなすべきことは、“つなぐ”ということ。国からの補助金で新聞制作を3年間やらせていただいたことに対して、われわれは地域のために応えないといけないという思いがあるのです。

縁とらんすからのお知らせ
復興釜石新聞では、釜石市内はもちろん市外県外からも、新聞の定期購読を受け付けています。配送や支払方法などご不明な点は、釜石新聞社までお気軽にお問い合わせください。
復興釜石新聞 定期購読、広告掲載のご案内 | 縁とらんす
合同会社 釜石新聞社
電話 0193-55-4713 / メール kamaishi-shinbun[at]kmail.plala.or.jp([at]→@に置換)

縁とらんす

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす

縁とらんす編集部による記事です。

問い合わせ:0193-22-3607 〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内

広報かまいし2016年7月1日号(No.1643)

広報かまいし2016年7月1日号(No.1643)

https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/koho/backnumber/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/07/01/1643.pdf

広報かまいし2016年7月1日号(No.1643)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 3,442 KB
ダウンロード


 

【目次】
表紙:橋野鉄鉱山 世界遺産登録1周年 記念フォーラム開催・記念特別企画、夏休み特別企画
P02:津波避難訓練
P03:人材育成道場「第4期未来創造塾」塾生を募集します、個人番号(マイナンバー)カード休日交付・平日の受付時間延長を行います、福祉タクシー助成券対象事業者追加のお知らせ
P04:健康診査を受けましょう
P05:釜石市産直スタンプラリー、釜石鉱山坑道見学会参加者募集、第28回釜石よいさ参加団体募集
P06:今月のインフォメーション、おもいをつむぐはなみずき
P08:ダン・カーター チャリティ フォー オール 釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)建設現場見学タウンミーティング、釜石地区被災者相談支援センターをご利用ください、市長のつぶや記

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-2111 / 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/koho/backnumber/detail/1202403_2596.html
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
県から届いた花苗を運び入れるスタッフら

国体歓迎 花苗届く、1万株 26日から植栽

県から届いた花苗を運び入れるスタッフら

県から届いた花苗を運び入れるスタッフら

 

 希望郷いわて国体で釜石市を訪れる人たちを花で歓迎する市実行委の「花いっぱい運動」が始まるのを前に、23日、県から配布される花苗5040株が管理場所となる甲子町の創作農家こすもす(藤井了代表)に届いた。実行委は他に、同町のミッキーファーム(柏木幹彦代表)に花苗約5千株の栽培を委託しており、合わせて約1万株を用意。26日から、運動に協力する町内会や学校などで花植え作業が始まる。

 

 県から届いた苗は、県内の農業高校や花き施設などで種から育てられたもので、サルビア、ベゴニア、マリーゴールド各1680株。こすもす公園内でトラックから降ろす作業が行われ、公園スタッフと市国体推進課職員9人が手渡しで、花のケースを管理スペースに運び入れた。

 

 藤井代表は「花で彩られたきれいなまちを見れば、来る人も気持ちがいいだろうし、花に心のある市民なんだなと思ってもらえるのでは」と運動に共感。市民が植えるまでの間、シカ対策もしながら管理に努める。

 

 同運動は、全国から訪れる選手や役員、一般観戦者を美しい花で迎えようという”おもてなし”の一環。市民がプランターに花を植えて育て、大会前から大会期間中にかけて、競技会場や国道沿いなどに配置する。プランターには、市民が応援や歓迎のメッセージを書いたシールが貼られる。

 

 花苗は協力団体の作業日に合わせて、こすもすとミッキーファームから輸送業者によって順次、配送される。花植え作業は7月中旬までに完了し、花を植えた後は、9月上旬に予定するプランター設置まで各学校や施設、家庭で水やりなどの管理を行う。

 

 市国体推進課の坂本琢磨係長は「市民が直接手をかけることで、一人一人の思いも届けることができる。夏を越す(管理の)手間もかけるが、大事に育てていただき、おもてなしの気持ちを表してほしい」と国体成功への協力を願った。

 

(復興釜石新聞 2016年6月25日発行 第498号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

委嘱状を手に全校生徒で記念撮影。これから特使の活動が本格化する

希望郷いわて国体〜釜石市内 全小・中学生を「おもてなし特使」に、釜石中で委嘱状交付式

委嘱状を手に全校生徒で記念撮影。これから特使の活動が本格化する

委嘱状を手に全校生徒で記念撮影。これから特使の活動が本格化する

 

 希望郷いわて国体(第71回国民体育大会)本大会開幕までちょうど100日となった23日、釜石市実行委員会(会長=野田武則市長)は、同市の開催競技を盛り上げてもらおうと市内の全小・中学生2259人(14校)を「PR・おもてなし特使」に任命。釜石中学校(川崎一弘校長、生徒349人)で委嘱状交付式を行った。

 

 式には釜石中の全校生徒が参加。代表して、生徒会長の千葉佑人君(3年)が野田市長から委嘱状を、同副会長の門脇聡志君(3年)が佐藤功教育長から記念品(クリアファイル、ボールペン、缶バッジ)を受け取った。

 

 野田市長は「選手が存分に力を発揮できるような環境を整えてあげたい。本国体は震災後の支援に感謝の気持ちを伝える場でもある。『釜石に来て良かった』と思ってもらえるよう、皆さんのお力添えをお願いしたい」と協力を呼びかけた。

 

 千葉君は「震災時は不安しかなかったが、全国の方々の温かさでここまで復興できた。ラグビー会場では、伝統の釜中ソーランを披露する。全校生徒一丸となって踊り、支援への感謝と元気になった私たちの姿を伝えたい」と特使としての決意を示した。

 

国体マスコットキャラクター「うにっち」と共に成功を誓う生徒ら

国体マスコットキャラクター「うにっち」と共に成功を誓う生徒ら

 

 同特使は、子どもたちが自主性を持って国体成功へ取り組むことで記念になる大会になればと同実行委が発案。各校では手作りの応援のぼり旗や歓迎横断幕の製作、まちを彩る花の栽培に取り組むほか、競技会場での応援などを通じて全国から訪れる選手や役員、観戦客らを”おもてなし”の心で迎える。

 

 釜石中ではすでに、来釜者へのメッセージを書いたプランター準備に取りかかっており、27日には約380株の花苗を植える予定。川崎校長は「あいさつなど普段から実践していることを改めて見つめ、市民の皆さんと一緒に釜石を訪れる人たちを温かく迎えてほしい」と期待した。

 

 式のあとは国体についての説明、○×クイズも行われ、生徒らは楽しみながら国体の知識を深めた。

 

(復興釜石新聞 2016年6月25日発行 第498号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

老人ホーム合同避難訓練 鵜住居で初めて

土砂災害を想定した訓練で老人ホームに避難した園児ら

土砂災害を想定した訓練で老人ホームに避難した園児ら

 

 6月の「土砂災害防止月間」に合わせ、釜石市鵜住居町の特別養護老人ホーム三峯の杜(齊藤敦子施設長、入所者29人・ショートステイ利用者20人)で16日、土砂災害を想定した避難訓練が行われた。隣接する鵜住居幼稚園(磯田育子園長、園児24人)、養護老人ホーム五葉寮(久保喜雅施設長、入所者50人・ショートステイ利用者2人)と合同で実施する初めての訓練。あいにくの雨模様で参加人数や内容など規模を縮小したが、園児は避難経路や場所、両施設は受け入れ体制や誘導など災害時の対応を確認した。

 

 両施設では火災などの非常事態に相互に協力できるよう連携した訓練を定期的に実施。同園でも地震、火災、防犯訓練などを独自に行っている。

 

 昨年秋ごろ、3者が加入する地元の川目町内会で防災ハザードマップづくりが行われた際、園や施設そばの山に土砂災害の危険があることを知り、防災連携を検討。園児が迅速、安全に避難できるよう、三峯の杜を1次避難、五葉寮を2次避難場所に設定した訓練内容で準備を進めてきた。

 

 この日は、年長児5人が参加。三峯の杜が園から避難の要請を受け、訓練を開始した。園児は教諭の指示で施設に移動し、施設職員の誘導で建物の1階から2階に避難。雨のため、1次避難で終了したが、園児は「ここの階段は初めてだよね。高いね」などと避難ルートを確認していた。

 

 梅雨に入り、大雨で土砂災害の恐れが高まることも考えられる中での訓練に、磯田園長は「いざという時には高いところに逃げようと考えるが、そういう場所がそばにあると安心する。初めてのことは誰でも緊張するので、なおさら園児にはいい体験になった」と話した。

 

 齊藤施設長は「高齢者は子どもとの触れ合いを喜ぶので、何かあった時の協力体制づくりだけでなく、いっそうの交流につながれば」と期待。今回参加できなかった園児も体験し、きちんとした避難経路を覚えてもらうため、今後も同様の訓練を行うことにしている。

 

(復興釜石新聞 2016年6月18日発行 第496号より)

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

協定書に署名後、3者の連携に向け握手を交わす日立製作所の星野達朗東北支社長、野田武則市長、新興事業創出機構の鷹野秀征理事長

オープンシティ戦略推進 日立製作所・JEBDA ~復興から新興へ 3者連携で地域づくり

協定書に署名後、3者の連携に向け握手を交わす日立製作所の星野達朗東北支社長、野田武則市長、新興事業創出機構の鷹野秀征理事長

協定書に署名後、3者の連携に向け握手を交わす日立製作所の星野達朗東北支社長、野田武則市長、新興事業創出機構の鷹野秀征理事長(左から)

 

釜石市と協定結ぶ

 

 釜石市、日立製作所(東京都千代田区)、一般社団法人新興事業創出機構(JEBDA、宮城県仙台市)は14日、地域の活性化に向けた取り組みに関する協定を締結した。昨年度策定した「釜石市オープンシティ戦略(市総合戦略)」を3者の連携で推進し、持続可能な地域社会の実現に貢献するのが狙い。関係者14人が出席し、市役所で協定締結式が行われた。

 

 野田武則市長、日立製作所東北支社の星野達朗支社長、JEBDAの鷹野秀征理事長が協定書に署名した。協定に盛り込まれた連携事項は、地域コミュニティーの活性化、産業振興、人材育成、高齢者・障害者支援に関することなど。復興の先にある釜石の将来像を確かなものとするため、両事業体が持つ知見やネットワーク、課題解決能力を最大限生かし、共に地域づくりを進めていく。

 

 日立とJEBDAは2012年から唐丹町とつながり、ITを活用した地域活性化策を展開。唐丹町漁協のホームページ再構築や水産加工会社釜石ヒカリフーズの業務支援を行う中で住民と絆を深め、地域全体の魅力発信、内外の人的交流促進に貢献してきた。JEBDAは市内企業の販路開拓、ブランド化支援なども手がける。

 

 締結式で星野支社長は「釜石の総合戦略は全国から注目を集める活動と認識している。日立グループのノウハウなどを提供し、市の持続的発展に力を尽くしていきたい」、鷹野理事長は「われわれが法人設立時に掲げた『復興から新興へ、支援から共創へ』という理念のもと、オープンシティ釜石を共に創る心意気でやっていく」と抱負を述べた。

 

 同戦略は、市内外の人たちが相互に連携・協力することで地域内にさまざまな市民・経済活動を生み出し、実人口(住民票)以上の活力を持った地域社会を作ることを目指す。野田市長は、日立とJEBDAのこれまでの取り組みを「まさに戦略に掲げる『つながり人口』そのもので、非常に心強い存在」とし、「協定を契機に連携を一層深め、戦略に掲げた当市の未来づくりに引き続きのご支援をお願いしたい」と協力を求めた。

 

(復興釜石新聞 2016年6月18日発行 第496号より)

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

住民交流しやすいよう配慮された天神復興住宅

天神復興公営住宅完成 17日から入居開始

住民交流しやすいよう配慮された天神復興住宅

住民交流しやすいよう配慮された天神復興住宅

 

当初計画より1年10ヶ月遅れ

 

 釜石市が天神町に建設を進めていた天神復興公営住宅が完成し、11日、現地で竣工(しゅんこう)式が行われた。市が東部地区14カ所(430戸)に整備する復興公営住宅のうち3番目の完成。入札不調が続いたため、民間事業者が設計施工して市が買い取る「建物提案型買い取り方式」に切り替えて建設を進めたが、作業員不足や他地区の復興公営住宅の遅延の影響もあり、当初の計画よりも1年10カ月遅れの完成となった。52戸(1LDK21戸、2LDK31戸)全ての入居者が決まっており、17日から順次入居が始まる。

 

 竣工式には工事関係者や地元住民代表など約30人が出席。神事を行ったあと、野田武則市長は「計画が二転三転し、入居希望者や地域の方々に大変な心配をかけた。一日千秋の思いで待ちわび、ようやく完成したという意味で思い入れのある住宅。今後の復興住宅や宅地整備も希望者の期待に応えられるよう取り組んでいきたい」とあいさつした。

 

完成を心待ちにしていた入居者らに公開した

完成を心待ちにしていた入居者らに公開した

 

 旧釜石一中跡地に建設された同住宅は鉄骨造りで、延べ床面積は約4070平方メートル。5階建て2棟と4階建て1棟が並び、蛇行するように配置された縁側で各棟をつないだ。通路を兼ねた縁側とバルコニーの配置が階ごとに互い違いになっており、プライバシーを確保しながらも互いの気配を感じ、住民のコミュニケーションがとりやすいよう工夫。敷地内の広場には平屋建ての集会所も整備した。

 

 同住宅は2012年11月、併設するこども園と合わせて東京の設計事務所の設計案が採用されたが、作業員不足や建設資材の高騰などの影響で建設工事の入札が3度も不調に終わった。このため市は、鉄筋コンクリート造りから、施工が簡単でコストも安い鉄骨づくりに計画を変更し、建物提案型買い取り方式を導入。大和ハウス工業岩手支店が施工し、市が14億2700万円で買い取った。

 

天神復興住宅の完成を喜ぶ関係者

天神復興住宅の完成を喜ぶ関係者

 

やっと落ち付いた生活に

 

 市内では復興住宅1314戸を整備する予定で、17番目の完成となった同住宅を含めると完成率は45%。本年度は1127戸、85%の完成を目指す。

 

 完成した住宅は早速、入居する住民に公開された。近くにある天神町仮設住宅で暮らす住民の入居が多いとのことで、只越町で被災し5年ほど一人で仮設生活を送ってきた笠森ミキさん(87)も見学。「すてきだ。今まで4畳半の狭い中で寝ているのも起きているのも同じように過ごしてきたからね。広くて掃除するのが大変そうだ」と入居を心待ちにした。「避難生活も今考えれば楽しかった」と振り返るのは只越町のみなし仮設住宅で暮らす小田島凌一さん(76)。「やっと落ち着いた生活ができそう。ただ、交流がうまくいくか心配な部分もある」と話していた。

 

(復興釜石新聞 2016年6月15日発行 第495号より)

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

広報かまいし2016年6月15日号(No.1642)

広報かまいし2016年6月15日号(No.1642)

広報かまいし2016年6月15日号(No.1642)

広報かまいし2016年6月15日号(No.1642)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 3,442 KB
ダウンロード


 

【目次】
表紙:近づく国体 希望の火をともして
P02:第24回参議院議員通常選挙
P04:トヨタ自動車ヴェルブリッツ・釜石シーウェイブス「ラグビー教室in釜石」、橋野鉄鉱山世界遺産登録一周年記念 平成28年度釜石うみやま郷土芸能大競演祭
P05:旧釜石鉱山事務所6月30日一般公開、泉沢屋敷遺跡の現地説明会を開催します
P06:釜石市空き家バンクを開設します、みんなでごみ減量へチャレンジ1
P07:食生活改善推進員活躍中!、65歳以上の人を対象とした「高齢者現況調査」を実施します
P08:まちの話題
P10:市民のひろば
P12:保健案内板
P14:まちのお知らせ
P16:かまいし徒然日記14

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-2111 / 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/koho/backnumber/detail/1202096_2596.html
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
遠隔操作のクレーンでごみを溶融炉に投入する作業を見学

沿岸南部 クリーンセンター一般公開〜55人見学 ごみ減量へ意識高める

遠隔操作のクレーンでごみを溶融炉に投入する作業を見学

遠隔操作のクレーンでごみを溶融炉に投入する作業を見学

 

 釜石市、大船渡市、陸前高田市、大槌町、住田町のごみ処理を担う釜石市平田の「岩手沿岸南部クリーンセンター」は5日、一般向けの施設見学会を開いた。6月の環境月間に合わせ2012年から実施。55人が見学に訪れ、工場棟や展示物の説明を聞きながら、施設の役割やごみ減量化への意識を高めた。

 

 見学者は施設紹介のDVDを見た後、職員の案内で工場棟へ。コンピューターで全設備の運転を24時間管理する中央操作室、遠隔操作を行うごみクレーン運転室、ごみを貯留し撹拌(かくはん)処理後、溶融炉に投入するごみピットなどを見学し、ごみ処理の過程を学んだ。

 

 展示室では、ごみの排出量など各種データを示すグラフや溶融炉から産出されるスラグ(砂)、メタル(金属)の利用法などが説明された。熱エネルギーを活用する浴場も開放された。

 

 鵜住居町の仮設住宅に暮らす男性は「風呂にはたまに来るが、施設見学は初めて。広域のごみ処理は復興にも役立っているのでは」と関心を深めた。

 

 同センターは沿岸南部の5市町が共同で建設し、ガス化溶融炉2炉を有する。11年4月1日から稼働予定だったが、3月に震災が発生。津波による大きな被害は免れたが、電気設備の復旧のため11日からの本格稼働となった。家庭や事業所のごみに加え、14年8月まで被災4市町の災害廃棄物処理を行い、3万トン余りの災害廃棄物を処理した。

 

 現在は1日に約130トンのごみを処理する。余熱を利用した蒸気タービン発電で施設の電力をまかない、余剰電力は売電。余熱で沸かす風呂は月~金曜日の昼間に無料で開放され、年間2万人以上が利用する。熔融物のスラグは道路の路盤材や建築骨材、メタルは重機のカウンターウエートなどに活用され、循環型社会に適応する環境に配慮した施設になっている。

 

 センターを運営管理する岩手沿岸南部広域環境組合(管理者・野田武則釜石市長)の岩間成好事務局長は「見学で施設を身近に感じ、日ごろからごみを減らすなどの意識づけにつなげてもらえれば」と期待。6月の見学会以外にも学校の社会見学や行政視察などを受け入れており、昨年は管内の10小学校から245人の児童が訪れたという。

 

(復興釜石新聞 2016年6月8日発行 第493号より)

関連情報 by 縁とらんす
岩手沿岸南部広域環境組合 – 釜石市
復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

復興釜石新聞500号発行記念企画

復興釜石新聞500号発行記念企画〜「復興釜石新聞へメッセージを届けよう」

復興釜石新聞500号発行記念企画

 

復興釜石新聞500号の広告枠及び縁とらんすの地域情報ページに掲載する皆さまからのメッセージを募集しています

 

2011年3月11日に発生した東日本大震災から3ヶ月後となる6月11日。「釜石を愛し、住み続けてほしい」という大きな見出しがつけらた『復興釜石新聞』の創刊号が市内全戸に配布されました。

 

そして本日、2016年6月11日、復興釜石新聞は創刊から5年を迎えます。更に、来月7月2日には500号目が発行されます。

 

復旧ままならない時期から、この地域とここで生きる人々の今を伝え残してきた復興釜石新聞の5年、そして500号という節目を記念し、”かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす”を運営する釜石まちづくり株式会社では、復興釜石新聞への応援メッセージを広く募集いたします。

 

皆様からお預かりした全てのメッセージは復興釜石新聞を発行する釜石新聞社へお届けいたします。また、釜石まちづくり会社による選定のうえ、復興釜石新聞500号の広告枠(3段通しを予定)での掲載のほか、かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんすでの地域情報記事としても掲載させて頂きます。

 

市内の方はもちろん、市外県外の方からも広く募集しております。皆さまからのメッセージを心よりお待ちしております。ご協力よろしくお願いいたします。

 

※広告枠及び縁とらんすにてメッセージを掲載する際、レイアウトの都合により文面を調整する場合があります。
※本企画は釜石まちづくり株式会社の主催企画であり、釜石新聞社の企画ではありません。

 

応募方法

以下の応募フォームより必要事項とメッセージを入力のうえご応募ください。

 

復興釜石新聞へのメッセージ

復興釜石新聞へのメッセージ – Google フォーム

応募フォームは、PCやスマートフォン等からどなたでもご利用できます。
リンク


 

募集期間

2016年6月11日(土)〜18日(土)

お問い合わせ

釜石まちづくり株式会社(電話 0193-22-3607)

 

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

大船渡方面の坑口から、建設中の唐丹第1高架橋を望む

吉浜釜石道路 荒川トンネル貫通〜唐丹小児童 祝いのソーラン、18年度開通へ見通しも明るく

大船渡方面の坑口から、建設中の唐丹第1高架橋を望む

大船渡方面の坑口から、建設中の唐丹第1高架橋を望む

 

 「復興道路」として整備が進む三陸沿岸道路・吉浜釜石道路(大船渡市三陸町吉浜―釜石市甲子町14キロ)の荒川トンネル(1169メートル)が貫通し、1日、現地で式典が行われた。工事関係者や唐丹小の児童ら約150人が参加。節目の貫通に、関係者は「目標とする2018年度開通も見えてきた」と喜んだ。

 

 貫通発破のスイッチを押す野田市長や唐丹小の児童ら

貫通発破のスイッチを押す野田市長や唐丹小の児童ら

 

 貫通式典は、工事を請け負う大林・富士ピーエス特定建設工事共同企業体が主催。野田武則市長と唐丹小の児童代表らが発破のスイッチを入れると、ドドンという大きな音とともにトンネルの穴をふさいでいた幕が落とされた。作業員らが樽(たる)みこしを繰り出し、唐丹小の5・6年生20人が「よさこいソーラン」を披露。最後に参加者全員で万歳三唱し貫通を祝った。

 

万歳三唱で荒川トンネルの貫通を祝う関係者

万歳三唱で荒川トンネルの貫通を祝う関係者

 

 野田武則市長は「震災で亡くなった多くの犠牲者があって整備が進む”尋常ならざる道路”ということに思いをはせ、一日も早い完成を願う」とあいさつ。工事を発注した国土交通省南三陸国道事務所の金ケ瀬光正所長は「トンネルは工期内で貫通した。18年度開通も見えてきたのではないか」と述べた。

 

 荒川トンネルは、釜石南インターチェンジ(IC)と釜石唐丹IC(共に仮称)の間にあり、14年9月から掘削が進められてきた。事業費は約103億円。吉浜釜石道路に建設されるトンネルのうち2番目の貫通で、道路全体の完成は18年度を見込む。

 

 吉浜釜石道路には5本のトンネルと3つの橋が建設されるが、1千メートルを超えるトンネルは荒川トンネルなど3本。工事は約75%まで進んでおり、新鍬台トンネル(3330メートル)は今秋、唐丹第3トンネル(2998メートル)は来春の貫通を見込む。

 

(復興釜石新聞 2016年6月4日発行 第492号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

作業前にハートのマグネットで彩られた仮設住宅の前で記念撮影する参加者

団地を彩るマグネット取り外し〜6月撤去へ中妻町仮設住宅(昭和園)、感謝のお別れイベント

作業前にハートのマグネットで彩られた仮設住宅の前で記念撮影する参加者

「ありがとう、昭和園」。作業前にハートのマグネットで彩られた仮設住宅の前で記念撮影する参加者

 

 津波ですべてを流されて5年余り。釜石市では復興公営住宅の整備とともに、仮設住宅の集約が本格化し、被災者の住環境が大きく変わる時期を迎えた。6月に撤去されることが決まっている中妻町仮設団地(昭和園)では5月28日、お別れイベントを開催。同団地の壁を彩るハートマークをあしらったカラフルなマグネットが役目を終えることから、元住民らが生活の場だった仮設住宅に感謝しながら取り外した。

 

 マグネットの装飾は同団地に住んでいた寺崎幸季さん(釜石高3年)が発案。「仮設」を「家」と呼べる雰囲気を作り、愛着を持って暮らしてもらえたら―との思いに共感した市内外の支援者が製作した6千枚を昨年9月に住宅の壁に飾り付けた。

 

 この約8カ月後、集約により寺崎さんは上中島町の仮設住宅に転居。「5年間の思い出が詰まっている。生活する中で課題を発見して、どうにかしようと行動するようになり、自分が成長できた場所でもある。寂しい気持ちもあるが、楽しくやりたい」と、この日の作業に取り組んだ。

 

 ありがとう、昭和園――。イベントには寺崎さんのような元住民、近隣住民、マグネット製作にかかわった人ら約50人が集まった。約4年を過ごした60代と40代の女性の親子は「最後だから見納めに」と参加。昨年春に上中島町の復興住宅に移って新しい生活をスタートさせたが、「ここ(仮設)での生活が長かったので、復興住宅より落ち着く。帰る場所を間違えている気になることも。寂しさがある」としみじみ話した。

 

 取り外したマグネットは水洗いして保管。寺崎さんによると、釜石情報交流センターやほかの仮設住宅での活用を検討しているという。「先月、地震があった熊本にも仮設ができると思うので、飾り付けに行きたい。同じ被災地の思いを共有できれば」とも。だが、「仮設はいつまでもあり続けてはいけないもの。違った形の活動もしていきたい」と前を向いた。

 

 昭和園グラウンドにある同団地(118戸)は震災1カ月半後の2011年4月下旬に入居が始まった。現在市内では復興住宅の整備など徐々に進んでいるものの、閉鎖時期の今年5月末までに多くの復興住宅や移転地が未完成のまま。集約先となる別の仮設住宅への転居を余儀なくされる世帯もあり、数世帯を残して退去済み。団地は近く解体予定で、跡地は津波で全壊した釜石警察署などの再建地になるという。

 

(復興釜石新聞 2016年6月1日発行 第491号より)

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3