ビールをアピールする佐藤社長、野田市長、笠井部長(右から)
釜石市、北里大感染制御研究機構釜石研究所などでつくる「釜石はまゆりプロジェクト」は、一関市の世嬉の一酒造(佐藤航社長)の協力を得て、釜石市の花ハマユリから採取した酵母を使用したビールを商品化した。同社オリジナル商品として「東北復興支援ビール 渚咲〜Nagisa〜」を20日から全国向けに販売、同じ中身でラベルが異なる「はまゆりエール」は12月初旬から釜石市内限定で販売を開始する。使われている「釜石はまゆり酵母」は、震災の津波に耐えて自生し続けるハマユリから採取したもので、釜石の元気と復興への思いをビールに込めて市内外に発信する。
ハマユリは平田・佐須地区の岩場から採取。震災の津波で水没したが、その年の夏に花を咲かせ、復興に向かう住民らの心の支えになったという。同プロジェクトでは2013年夏、そのハマユリ10輪から酵母の採取に成功。採集された400の酵母の中から食品加工用に厳選されたのが釜石はまゆり酵母で、香りの良さが特徴だという。
同社は江戸時代から続く蔵元で、1995年にクラフトビール(地ビール)の醸造を開始。岩手の食材や地域文化を生かしたクラフトビールの提案を行っており、12年に北里大と共同で石割桜の酵母を使った「東北復興支援ビール 福香」を開発している。
こういったつながりで同プロジェクトから依頼を受けた同社が、色や香り、飲みやすさなど試行錯誤を重ねながら約1年がかりで開発。ハマユリらしさを伝えるオレンジに近い赤色で、フルーティーな香りが特徴のビールを完成させた。同社によると、野生の酵母を使ったビールは全国的にも珍しいという。
全国向けに販売する東北復興支援ビール「渚咲」
販売開始に合わせた20日、佐藤社長や同研究所の笠井宏朗部長らが釜石市役所を訪れ、野田武則市長に商品を披露した。佐藤社長は「ストーリー性を楽しみ、釜石を思って飲んでもらいたい。多くの人が岩手に来るきっかけになれば」と期待。「はまゆり酵母は香りが良く、発酵力も強く商品化しやすい酵母」と話し、新たな商品開発にも意欲を示した。
はまゆり酵母を使った商品は、「釜石バーガー」「釜石海まん」に続き、今回が第3弾。笠井部長は「ビール片手にバーガーといった感じで楽しんでもらいたい」とアピールした。
野田市長は「震災を乗り越えた奇跡のハマユリから作ったもので、不撓(ふとう)不屈を体現した、釜石そのものといえるビール」と太鼓判。食を通じ元気な釜石の発信に取り組む市では、世界遺産やラグビーワールドカップなどで増加が見込まれる観光客らの土産物として活用したい考えで、市内限定販売のビールには「ハマユリを知ってもらうとともに、釜石を応援してほしい」との思いを込めている。
共に330ml。「渚咲」(税込み518円)は全国の同社商品取扱店と同社ホームページで、「はまゆりエール」(同500円)は道の駅「釜石仙人峠」とシープラザ釜石で販売される。問い合わせは同社(電話0191・21・1144)へ。
(復興釜石新聞 2015年11月25日発行 第439号より)
世嬉の一酒蔵 公式サイト
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