2日間で1万人余りを集めた「三陸ぐるっと食堂」
食をテーマにした地域づくりイベント「三陸ぐるっと食堂in KAMAISHI×B―1グランプリ」(同実行委員会主催)が8月29、30の両日、釜石市鈴子町のシープラザ遊で開かれた。食による地域づくりに取り組む地元の8団体や、全国B―1グランプリに出展経験のある県内外の7団体などが料理を提供。個性あふれるご当地グルメが味わえるとあって多くの家族連れなどでにぎわい、2日間で延べ1万1千人(主催者発表)が訪れた。会場に設けられたステージでは釜石や大槌町の郷土芸能団体やバンドによるパワフルな演舞や演奏もあり、食と合わせ元気な三陸をアピールした。
かまいしこども園の園児は元気な虎舞を披露し、会場を盛り上げた
「B―1グランプリ」を各地で開く一般社団法人愛Bリーグ本部の公認イベントで、本県沿岸部では初の開催。静岡県富士宮市の富士宮やきそば、山形県河北町のかほく冷たい肉そば、北上市の北上コロッケなどが集結し、全国で愛される味を提供した。
ご当地グルメを求めて訪れた人に、出来たてをおいしく食べてもらおうと腕を振るう「富士宮やきそば学会」のスタッフ
地元からは釜石、宮古、大船渡、岩泉、大槌、住田の6市町にある地域づくり団体が参加した。釜石ラーメン、甲子柿を使ったスムージー、ホルモン、鶏ハラミから揚げなど多種多様なメニューを提供。自慢の味を紹介しながらそれぞれのまちを売り込んだ。
地元から出展した「釜石ラーメン」にも長蛇の列
ふだんは食べられないご当地グルメを楽しめるのはもちろんだが、もうひとつの見所が各参加団体によるPR合戦。緑色のマスクをかぶった「キャベツマン」、作業着やヘルメットを装着した炭鉱マン、甲冑(かっちゅう)姿の火縄銃鉄砲隊員など人目を引くユニークな衣装で地元愛をアピールしながら、「おいしいよ」「揚げたて、あつあつだよ」などと掛け声を響かせていた。
初日のステージでは、唐丹町の桜舞太鼓が見事なばちさばきで勇壮な演奏を披露。市内の幼稚園児らもかわいらしい虎舞で会場を盛り上げた。
野田町の山本カツ子さん(75)は「いろんな味を楽しめるのがいい。調理したてなのでおいしい。活気があって、うれしい」と会場の雰囲気を楽しんだ。盛岡市の村上和央さん(26)は、3カ月ほど前に釜石に転勤した坂井美香子さん(28)と足を運び、「三陸の味を知る機会。おなかが許す限り食べたい」と話した。
「おいしいよ」の掛け声が響く中、老いも若きもグルメを満喫
地元の釜石はまゆりプロジェクトは、ハマユリ由来の酵母を活用したパンに大豆のハム「タンパッキー」を挟んだ「釜石バーガー」を出展した。初日に用意した150人分を約2時間で売り切る人気ぶり。バーガーを商品化した鵜住居町のパン製造販売「あんでるせん」の小笠原泰樹さん(32)は「地元の食材を使った商品を多くの人に知ってもらえるチャンスの場。『釜石ならこれ』という商品にできれば、今後予想される多くの観光客へのおもてなしにつながる。頑張らなきゃという思いが強まった」と意欲を新たにした。
本県初登場で、B―1グランプリで準優勝経験もある「勝浦タンタンメン」を提供した千葉県勝浦市の「熱血!!勝浦タンタンメン船団」の磯野典正船団長(41)は「まちおこしは人おこし。人づくりはまちづくり。とにかく人を巻き込み、地域をPRすることがまちづくりにつながる」と活動への思いを語った。
前日の28日には、食によるブランド・地域づくりフォーラムを開いた。富士宮やきそば学会会長で愛Bリーグ本部代表理事の渡邉英彦さんが「市民主導による地域ブランド確立戦略」と題して講演。B―1グランプリ出展団体、地元のまちづくり会社の代表者らを交えたパネルディスカッションでは三陸地域の活性化、可能性について意見を交わした。
来場者数は初日が5千人、2日目は6千人と主催者見込み(6千人)を上回った。実行委は来年以降も継続して沿岸部で開催したい意向で、担当者は「食を通じてそれぞれのまちを売り込むことができ、三陸がつながったようだった。三陸を盛り上げるイベントになるよう、このネットワークを生かしていきたい」と話した。
(復興釜石新聞 2015年9月2日発行 第415号より)
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