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釜石・鵜住居川、甲子川にアユの稚魚放流 釣り解禁はともに7月6日 順調な成育に期待 

鵜住居川漁業協同組合による同川へのアユの稚魚放流=11日

鵜住居川漁業協同組合による同川へのアユの稚魚放流=11日

 
 釜石市の鵜住居川と甲子川に、このほどアユの稚魚が放流された。大船渡市の盛川漁業協同組合で中間育成された体長約7~8センチの稚魚を両河川の関係者が放流。釣り解禁日はともに7月6日。稚魚の繁殖保護のため、6月1日から解禁日前日まで全魚種が禁漁となる。(区域は現地の立て看板などを参照)
 
 鵜住居川への放流は11日、鵜住居川漁業協同組合(川崎公夫代表理事組合長、組合員153人)の組合員約30人によって行われた。鵜住居町の日ノ神橋下流域から橋野町の産直・橋野どんぐり広場付近までの区間18カ所に、重量にして400キロ(約4万6500尾)を放流した。稚魚は、人工放流のない三陸の河川に遡上する天然魚の卵から育ったもので、一尾平均8.6グラム。
 
 組合員らは2班に分かれて作業。稚魚を積んだトラックからバケツリレー、またはホースを延ばして放流した。稚魚購入代など放流にかかる費用は組合費、一般釣り客の遊漁料、関係企業・団体からの協力金で賄われている。
 
組合員らがバケツリレーで川岸まで稚魚を運んで放流=日ノ神橋下流

組合員らがバケツリレーで川岸まで稚魚を運んで放流=日ノ神橋下流

 
稚魚が入ったバケツをロープにくくり付け、慎重に下ろす=雲南橋

稚魚が入ったバケツをロープにくくり付け、慎重に下ろす=雲南橋

 
「解禁日に会おう!」順調に育つよう願いを込めながら…=住川橋

「解禁日に会おう!」順調に育つよう願いを込めながら…=住川橋

 
 同組合によると、昨季のアユ釣りは釣果、型ともに上々。遊漁券の売り上げは前年を若干上回り、過去最高を更新した。集客の要因の一つが「釣り場への入りやすさ」。例年、シーズン前に同組合や流域の各地区、県の委託業者が環境整備の一環で土手や河川敷の草刈りを行っていて、釣り客の評価も高い。
 
 川崎組合長は「河川も漁協経営は厳しい状況。沿岸地域の人口減もあり、全体的に釣り客は減っている。市外からもどんどん来ていただき、鵜住居川での釣りを楽しんでもらえれば」と期待する。本年度の組合員費は年間5000円。一般遊漁料は年券が7000円、日券が1500円。遊漁券は市内釣具店や流域の赤いのぼり旗を掲げた販売所のほか、スマホアプリ「フィッシュパス」で購入可能。
 
今季のアユ釣りを楽しみにする組合員ら。川の状態も確認(写真左)

今季のアユ釣りを楽しみにする組合員ら。川の状態も確認(写真左)

 
 一方、甲子川への放流は12日に行われた。甲子川鮎釣協力会(安久津吉延会長)、甲子地域会議、クボタ環境エンジニアリングの三者で実施。約20人が放流にあたった。2班に分かれ、上流は甲子町砂子渡付近から、下流は源太沢町と礼ケ口町の中間地点からそれぞれ甲子町松倉までの区間、計21カ所で計250キロ(約3万2000尾)を放流した。稚魚は盛川漁協から購入した。一尾平均7.8グラム。
 
甲子川鮎釣協力会などが行ったアユの稚魚放流=12日、松倉橋上流

甲子川鮎釣協力会などが行ったアユの稚魚放流=12日、松倉橋上流

 
 同協力会の安久津会長は「昨年の釣果は雨や気温の上下が激しかった関係で全体的に良くなかった。それでも大きいものでは22~23センチのものも。甲子川は水質が良く、アユの餌となるいいコケが育つので、味はおいしいと言われる」とし、今季の集客に期待を寄せる。
 
 甲子川には河川漁協がなく、入漁料を徴収しないため、稚魚の放流は同協力会に寄せられる釣り人らの協力金や企業の寄付金などで支えられる。250キロの放流は昨年と同じ量となる。例年だと、解禁日には16~18センチほどに成長する見込み。
 
最後はトラックの水槽からホースを延ばして稚魚を送り出した=松倉橋下流

最後はトラックの水槽からホースを延ばして稚魚を送り出した=松倉橋下流

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歌にピアノ生演奏、園児ノリノリ! 釜石の3保育施設つなぐ「すてきなおんがくかい」

上中島こども園で開かれた音楽会を楽しむ釜石の子どもたち

上中島こども園で開かれた音楽会を楽しむ釜石の子どもたち

 
 釜石市上中島町の市立上中島こども園(楢山知美園長、園児29人)で9日、公益財団法人「音楽の力による復興センター・東北」(仙台市)による幼児向けの企画「すてきなおんがくかい」が開かれた。「生の演奏にふれる機会を一緒に」と近くにある保育施設にも声をかけ、3施設の子どもら約90人が歌とピアノ演奏を楽しんだ。
 
 同園の全園児や、上中島町の神愛こども園(高橋仁美園長、園児32人)と中妻町の中妻子供の家保育園(佐々木啓子園長、園児55人)の4、5歳児が集合。メゾソプラノ歌手の谷地畝晶子さん(滝沢市)、ピアノ奏者の阿部夕季恵さん(盛岡市)が来園した。
 
阿部夕季恵さんのピアノ伴奏に合わせて歌声を響かせる谷地畝晶子さん

阿部夕季恵さんのピアノ伴奏に合わせて歌声を響かせる谷地畝晶子さん

 
 谷地畝さんは阿部さんの伴奏に合わせ、伸びやかな歌声を披露。季節感を込めた「こいのぼり」「ぶんぶんぶん」などの童謡では、子どもたちが一緒に口ずさみながら楽しんだ。「犬のおまわりさん」など動物が登場する歌や「ふしぎなポケット」といった甘いおやつにちなんだ曲ではイラストや手袋などの小道具を用意し、視覚からも歌の世界へ誘い込んだ。
 
 連弾で聴かせたディズニー音楽メドレーでは、息の合ったきれいな音色に子どもたちは感心した。運動会の定番ソングとして耳なじみのある「クシコス・ポスト」が聞こえてくると、体を上下に揺らしたり手をたたいたりしてノリノリに。「エリーゼのために」では一転して、じっと音に耳を傾けた。
 
子どもたちの関心をひく演出で音の世界へ誘い込む

子どもたちの関心をひく演出で音の世界へ誘い込む

 
歌ったり、リズムをとったりしながら楽しむ子どもたち

歌ったり、リズムをとったりしながら楽しむ子どもたち

 
 最後は、「となりのトトロ」「さんぽ」の2曲で園児らも元気な歌声を響かせ、会場が一体となった。来演のお礼に、谷地畝さんと阿部さんに手作りのメダルや花束をプレゼント。ハイタッチしながら、「歌、じょうずだったよ」「またね」などと気持ちを伝える子もいた。
 
 上中島こども園の佐々木絢斗ちゃん(5)は歌が好きで、音楽会が開かれて「うれしかった」とうなずく。他園から友達が参加したことは「いっしょで楽しかった」と歓迎。印象に残った曲を聞くと、「チューリップの歌」と、はにかみながら答えた。
 
「みんなと一緒で楽しい」。手をつないで表現する子どもたち

「みんなと一緒で楽しい」。手をつないで表現する子どもたち

 
「来てくれてありがとう」。ハイタッチで感謝を伝える

「来てくれてありがとう」。ハイタッチで感謝を伝える

 
 少子化により、釜石では幼児教育と小学校教育を円滑につなげるための取り組みを進める。「園は違っても同じ地域で生活し、どこかで顔を合わせることもある。小学校への入学がその一つで、滑らかな接続の機会に」と、楢山園長が他園に声がけ。「音楽は五感で楽しめ、子どもたちの成長過程に大切。生の演奏を聴いて感性を育んでもらえたら。『あの時、一緒に楽しんだよね』と交流のきっかけにもしてほしい」と、ノリノリな子どもたちにあたたかい視線を注いだ。
 
子どもたちの楽しさが大人にも伝わり笑顔が広がる

子どもたちの楽しさが大人にも伝わり笑顔が広がる

 
音楽会で交流を深めた3保育施設の子どもと職員ら

音楽会で交流を深めた3保育施設の子どもと職員ら

 
 同センターは仙台フィルハーモニー管弦楽団と市民有志が設立したもので、コンサートは東日本大震災の約2週間後から宮城県各地や福島、岩手両県の避難所や仮設住宅などで開催してきた。費用は寄付で賄い、同楽団を中心に国内外の演奏家が参加。法人化後も各種助成金などを活用して「音楽の力を東北の復興に役立ててゆく活動」を継続している。
 
 釜石では2014年から寺院や商業施設などで演奏会を開催。近年は岩手県の「被災者の参画による心の復興事業費補助金」を活用し、災害公営住宅や8地区の生活応援センターなどで一般向けの音楽会を続けていて、谷地畝さん、阿部さんが協力する。今回は、「東日本大震災こども未来基金」の助成を受けて実施。同園での演奏のほか、釜石高音楽部へのボイストレーニングなども行った。

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花の見頃はお預けもにぎわい 「橋野鉄鉱山」で八重桜まつり 世界遺産登録10周年をお祝い

春恒例の「橋野鉄鉱山」八重桜まつり。今年は世界遺産登録10周年も祝って開催。約500人が楽しんだ

春恒例の「橋野鉄鉱山」八重桜まつり。今年は世界遺産登録10周年も祝って開催。約500人が楽しんだ

 
 釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」で11日、八重桜まつりが開かれた。地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催する、この時期恒例のイベント。遺産エリア周辺の八重桜は大型連休後半から続いた低温や降雨の影響で開花が遅れ、花の見頃はお預けとなったが、訪れた人たちは餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡のガイドツアーなどを楽しんだ。橋野鉄鉱山は今年7月で世界遺産登録から10周年を迎える。
 
 釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、32人)による高炉場跡の見学ツアーでは、2人のガイドがインフォメーションセンターから希望者を案内し、史跡エリアに向かった。同会の川崎孝生副会長(84)は同所で鉄づくりが始まったきっかけ、1~3番高炉の稼働状況、高炉周辺にあった種砕水車場、長屋や御日払所などの役割を説明。良質な鉄鉱石の産出、燃料の木炭材料となる豊かな森林資源、高炉操業に必要な水車を回す水流(二又沢川)があったことで、一大製鉄産業が実現したことを教えた。
 
明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)の構成資産の一つ「橋野鉄鉱山」。見学エリアには3基の高炉の石組みなどが残る

明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)の構成資産の一つ「橋野鉄鉱山」。見学エリアには3基の高炉の石組みなどが残る

 
釜石観光ガイド会会員が当時の鉄づくりや操業規模などを説明。参加者は同所の歴史的意義も学んだ

釜石観光ガイド会会員が当時の鉄づくりや操業規模などを説明。参加者は同所の歴史的意義も学んだ

 
 釜石市内から足を運んだ紺野和子さん(45)は同ガイドツアーに初めて参加。子どもたちが学校で釜石の製鉄の歴史を学び、鉄の検定を受けてきたこともあり、「子ども伝いに話は聞いていた」が、ガイドの解説でさらに理解を深めた様子。「『へえ~』というのがいっぱいありました」と声を弾ませ、「橋野は(四季のイベント開催などで)PRも頑張っている印象。世界遺産登録10周年を機に、より多くの人にここの魅力を知ってほしい」と願った。
 
 まつり恒例の餅まきには幅広い年代が集まった。同振興協の菊池会長(70)ら地域の代表がトラックの荷台に上がり、「橋野鉄鉱山世界遺産登録10周年、おめでとうございます」との掛け声を合図に約800個の紅白餅をまいた。
 
大勢の人たちが楽しんだ餅まき。同まつりで長年続くおもてなし

大勢の人たちが楽しんだ餅まき。同まつりで長年続くおもてなし

 
子どもたちも手提げ袋を手に「こっちにも~」。たくさんの笑顔が広がった

子どもたちも手提げ袋を手に「こっちにも~」。たくさんの笑顔が広がった

 
 同振興協女性部が調理した豚汁のお振る舞いには、今年も長い列ができた。12の具材には地元産の山菜ウルイ、ワラビ、フキも入り、春ならではの味を提供。手作りみそで仕上げた豚汁は来場者に好評で、この味を楽しみに毎年足を運ぶ人も多い。会場内では大槌町のバンド「ZENBEY絆」の演奏や釜石市の女形舞踊・尚玉泉さんの踊りもあり、まつりを盛り上げた。
 
具だくさんの豚汁(右下)を求めて順番待ちの列に並ぶ来場者

具だくさんの豚汁(右下)を求めて順番待ちの列に並ぶ来場者

 
この日は寒さを感じる気候。豚汁が来場者の体を温めた

この日は寒さを感じる気候。豚汁が来場者の体を温めた

 
昨年からまつりを華やかに盛り上げる尚玉泉さん。スマホカメラを向けて楽しむ人も

昨年からまつりを華やかに盛り上げる尚玉泉さん。スマホカメラを向けて楽しむ人も

 
 大槌町の黒澤典子さん(61)は母スワさん(92)を連れて来場。「花は残念だったけど、おいしい豚汁をいただき、餅まきやバンド演奏もあって楽しめた。いい『母の日』になりました」と典子さん。初めて訪れたスワさんも「とてもいい時間を過ごせた」と笑顔を重ね、「(八重桜が)満開の時にまたぜひ」と再訪を望んだ。
 
 同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には同振興協が新たな植樹を行い、若木も花を咲かせている。インフォメーションセンタースタッフによると、昨年のまつり開催日(12日)は散り始めていたが、今年は開催日前1週間に寒さが続いたため、咲き始めたのは前日から。当日も曇り空で気温が低く、にわか雨や風もあって、多くがつぼみ状態だった。天気予報によると、今後1週間は最高気温が20度超えの日が続く予想で、一気に開花が進むとみられる。
 
咲き始めたばかりの八重桜=11日午前。14日には4分咲きまで進んだ。週末には見頃を迎えそう

咲き始めたばかりの八重桜=11日午前。14日には4分咲きまで進んだ。週末には見頃を迎えそう

 
 同まつりは地域活性化などを目的に2007年にスタート。震災やコロナ禍での中止以外は毎年継続している。同振興協の菊池会長は「天気は悪かったが、大勢のお客さまに来ていただき、ありがたい。皆さんに愛されているまつりと実感する」と感謝。世界遺産登録10周年を迎える今年は、市主催の記念行事も多数計画される。「登録当初は年間1万人を超える来訪があったが、今は減っている。われわれ地元も市と連携しながら、少しでも来訪者増につながるよう魅力を高める取り組みを行っていきたい」と意気込む。

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広報かまいし2025年5月15日号(No.1856)

広報かまいし2025年5月15日号(No.1856)
 

広報かまいし2025年5月15日号(No.1856)

広報かまいし2025年5月15日号(No.1856)

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【P1】
表紙

【P2-3】
三陸ジオパークとみちのく潮風トレイルって何?

【P4-5】
―右腕型地域おこし協力隊 ― 釜石の未来をともに創る

【P6-7】
マイナ保険証資格確認書で医療機関・薬局にて受付してください。
迷いやすいプラスチックの分け方・出し方

【P8-9】
地域の身近な相談相手「民生委員・児童委員」

【P10-11】
イベント案内
令和7年 春の叙勲 他

【P12-13】
まちの話題

【P14-15】
ツキノワグマの被害に遭わないために
保健案内板

【P16-19】
世界遺産登録10周年記念コラム
まちのお知らせ

【P20】
市民百景

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 オープンシティ・プロモーション室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8463 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025050900023/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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野菜ってどうやってできるの? かまいしこども園児がわくわく苗・種植え 収穫を楽しみに…

野菜の苗を植え、これからの成長を楽しみにする園児=8日、かまいしこども園

野菜の苗を植え、これからの成長を楽しみにする園児=8日、かまいしこども園

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児79人)で、園児による野菜作りがスタートした。普段食べている野菜の成長の過程を知り、植物を育てる楽しみや食への関心を高めてもらう取り組み。本年度は元釜石市地域おこし協力隊員で兼業農家の三科宏輔さん(29)を菜園学習講師に迎え、3~5歳児クラスの47人が6種の野菜を育てる。
 
 8日、同園で行われたのは野菜の苗や種を植える作業。始めに講師の三科さんはトマトの苗を手にしながら、「野菜も小さい種から成長して大きくなる。みんなで観察しながら一緒に育てていこう」と園児に呼び掛け。「いつもありがとう」「大きく育ってね」など、やさしい言葉をかけると元気に育つことも教えた。
 
作業の前に講師の三科宏輔さんがトマトの成長過程を説明

作業の前に講師の三科宏輔さんがトマトの成長過程を説明

 
 3歳児が育てるのはトマトとピーマン。各4本の苗を2人1組でプランターに植え付けた。三科さんは「トマトには水をやりすぎない」ことなど栽培のポイントを伝授。「虫も野菜を育てるお手伝いをしてくれている」と話し、8月の収穫までの間、葉や虫の観察も行っていくことを伝えた。
 
ピーマンの苗を植える3歳児クラスの園児。根本にたっぷり土をかける

ピーマンの苗を植える3歳児クラスの園児。根本にたっぷり土をかける

 
自分たちで植えた苗に「大きくな~れ」と声掛け。これから毎日のお世話も頑張る

自分たちで植えた苗に「大きくな~れ」と声掛け。これから毎日のお世話も頑張る

 
 4歳児はナスと枝豆を植えた。まずは土壌作りから挑戦。プランターの底に水はけを良くするための小石を敷き詰め、培養土を入れた。ナスは苗4本、枝豆は種から育てる。園児らはふかふかの土の感触も味わいながら作業を進めた。土で汚れた手指を広げる園児に、「土の中にはいろいろな菌がいて、野菜の成長に重要な役割をしてくれる」と三科さん。植え付けを終えた水谷暖月ちゃん(4)は「楽しかった。豆が小さくてかわいかった。早く食べたいから、大きくなっていっぱい実をつけてほしい」と収穫を心待ちにした。
 
4歳児クラスはプランターの準備から。鉢底石を入れて(左)から培養土を投入(右)

4歳児クラスはプランターの準備から。鉢底石を入れて(左)から培養土を投入(右)

 
枝豆の種を植える。土に指で穴をあけ、1~2粒入れてそっと土をかぶせた

枝豆の種を植える。土に指で穴をあけ、1~2粒入れてそっと土をかぶせた

 
 5歳児は園庭に設けられているミニ菜園でニンジンとジャガイモを植えた。半分に切った種イモの断面に腐敗防止の灰を付け、土の上に置いてさらに土をかぶせた。ニンジンは種をまいた。講師の三科さんはこれから1週間に1回、園を訪れ、園児たちと一緒に成長の具合を見ながら、必要な世話をしていくという。園児らが育てた野菜は給食の食材に活用される。
 
5歳児クラスは園庭の一角にある菜園にジャガイモを植える。最初にスコップで土を掘り起こした

5歳児クラスは園庭の一角にある菜園にジャガイモを植える。最初にスコップで土を掘り起こした

 
灰をつけた断面を下にして種イモを置く(左)。夏の収穫までにどれくらい育つかな?

灰をつけた断面を下にして種イモを置く(左)。夏の収穫までにどれくらい育つかな?

 
 キリスト教の精神を保育に取り入れる同園では、命を大切にする心を養うことも教育の柱の一つ。藤原園長は「人間だけではなく、動物や植物にも命があることを常々教えている。野菜を育てる過程で、そうした部分も感じてもらえれば。できた野菜をいただくことで感謝の気持ちも芽生える。少しでも心に残る活動になれば」と願う。同園では20日に、初の試みとなる田植え体験も予定している。

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釜石PIT 2025年5月のスケジュール

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釜石PITの5月のスケジュールです。
太字で表示されているイベントは一般の方も参加できます。イベントに関するお問い合わせは、各主催者までお願いいたします。
 
施設に関する詳細はこちらのページをご覧ください。

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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水辺の生き物続々 根浜ビオトープ開設1周年 観察&環境整備で今後の多様性に期待

根浜ビオトープに生息する生き物をタッチプールで観察=6日

根浜ビオトープに生息する生き物をタッチプールで観察=6日

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」内に昨年4月、整備されたビオトープ(生物生息空間)で6日、開設1周年記念イベントが開かれた。沢水が流れ込む大きな池にはこの1年の間にカエルやイモリなどがすみ付いていて、集まった家族連れらが生き物観察を楽しんだ。さらに種類や数が増えることを願い、記念植樹も実施。同所を管理する根浜シーサイドなどは今後、定期的にモニタリング観察会を開き、生き物の生息状況の推移を見守っていく方針だ。
 
 同ビオトープは、東日本大震災の津波で失われた水辺環境と生態系を復活させ、自然との触れ合いや環境教育の場にしようと作られた。同施設の市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)と市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)が、多目的広場(運動場)西側の山林隣接地を市から借用して整備。約80平方メートルの敷地には、山からの沢水が循環する大型の池が設置されている。
 
 1周年イベントには市内外から親子連れなど約60人が参加。池に生息しているヤマアカガエルのオタマジャクシ、アカハライモリがタッチプールに放たれ、参加者が見て触れて姿かたちを確認した。最初は恐る恐るだった子どもも、慣れてくると手のひらに乗せてじっくり観察。やさしくなでたりしながら“小さな命”を体感した。
 
オタマジャクシを手のひらに乗せ、間近で観察。触感も確かめる

オタマジャクシを手のひらに乗せ、間近で観察。触感も確かめる

 
活発に動き回るアカハライモリに興味津々

活発に動き回るアカハライモリに興味津々

 
 池へとつながる小川では、トウホクサンショウウオとヤマアカガエルの卵も観察した。ともにゼリー状の物質に覆われているが、トウホクサンショウウオはバナナ形の「卵のう」の中に卵が入っているのに対し、ヤマアカガエルは大きな塊状の「卵塊」で産み付けられていて、形状や触感の違いを確かめた。
 
トウホクサンショウウオの卵(左上)とヤマアカガエルの卵(左下)。「プ二プ二」「ヌルヌル」… 触った子どもたちの感想もさまざま

トウホクサンショウウオの卵(左上)とヤマアカガエルの卵(左下)。「プ二プ二」「ヌルヌル」… 触った子どもたちの感想もさまざま

 
 陸前高田市の臼井航太郎さん(6)は「生き物を捕まえたりするのが楽しい。カエルの卵はぬるぬるして気持ち悪かった。カエルになった時にまた見に来たい」と目を輝かせた。家族で訪れ、前日から施設内でキャンプを満喫。イベントを知り足を運んだ。母真美さん(40)は「身近に生き物と触れ合える場所は少なくなってきている。ここは観察しやすくてとてもいい場所」と感激。「家ではスマホやタブレットで何かしていることが多い。キャンプも自然と触れ合ってほしいとの思いから」。生き物に夢中の愛息を温かく見守り、「次に図鑑を見る時には今日見た生き物を思い出してくれそう」と喜んだ。
 
池のほとりから目を凝らし生き物を探す子どもら

池のほとりから目を凝らし生き物を探す子どもら

 
身近な生き物との触れ合いは今や貴重な体験。親子の思い出づくりにも

身近な生き物との触れ合いは今や貴重な体験。親子の思い出づくりにも

 
 同所一帯には震災前、根浜地区の集落があり、田んぼも広がっていた。多様な生き物が生息していたが、津波で全て流失。住民らは高台移転し、跡地には同観光施設が整備された。ビオトープの整備地周辺には被災後も山から流れ出る沢水で湿地が形成されていたことから、これを活用して生息空間の再生が図られた。
 
 同環境ネットワークによるとこの1年で、カエル類では他にシュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、タゴガエル(鳴き声のみ)の生息を確認。トンボ類ではオオルリボシヤンマ、シオカラトンボ、ウスバキトンボの姿も確認されているという。この日は事前に捕獲したシュレーゲルアオガエルの成体、オオルリボシヤンマのヤゴ(幼虫)も参加者に見てもらった。
 
今夏、羽化するとみられるオオルリボシヤンマのヤゴ(左上)。鮮やかな体色が目を引くシュレーゲルアオガエル(右上)。生き物は観察後、再び池に放した

今夏、羽化するとみられるオオルリボシヤンマのヤゴ(左上)。鮮やかな体色が目を引くシュレーゲルアオガエル(右上)。生き物は観察後、再び池に放した

 
昨年4月に完成した根浜ビオトープ。豊かな生態系の復活に期待

昨年4月に完成した根浜ビオトープ。豊かな生態系の復活に期待

 
 「たった1年でこれだけの生き物が見られるようになったのはびっくり」と加藤代表(78)。予想では「もっとかかると思っていた」が、2年目の今春、池には大量のカエルの卵が産み付けられた。「生き物がこの池を待っていたんだろうね」。確信が現実となり安心した様子で、「水草や周辺の草が増え、生き物の隠れ家ができてくれば、集まってくる種類もさらに多くなるのでは」と期待感を高めた。
 
 トンボや野鳥に詳しい同ネットワーク会員の菊地利明さん(60)は「トンボは水の匂いと光の反射で水辺を察知して飛んでくると言われている。鳥がカエルの卵などを水かきに絡ませて飛び、遠く離れた水辺に着水することで、それまで見られなかった種が突然見られるようになることも」と話し、今後の生態系の推移に注目する。
 
 この日は生き物観察のほかに記念植樹も行われた。池の周辺に植えられたのは、国蝶のオオムラサキが卵を産み付けることで知られる「エゾエノキ」の幼木2本。菊地さんが日向ダム周辺で育つ木の種を育て、3~4年が経過したもので、同ネットワーク会員らが協力して植え付けた。周りにはシカよけ用のネットも張り、順調に育つように保護した。いつかオオムラサキの滑空が見られる日がくるかも…。
 
植樹するエゾエノキについて説明する菊地利明さん(右)。エゾエノキには国蝶「オオムラサキ」が卵を産み付ける

植樹するエゾエノキについて説明する菊地利明さん(右)。エゾエノキには国蝶「オオムラサキ」が卵を産み付ける

 
植えたエゾエノキの周りにシカよけのネットを張る、かまいし環境ネットワークの会員ら

植えたエゾエノキの周りにシカよけのネットを張る、かまいし環境ネットワークの会員ら

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マグロ、毛ガニ…海産物で「魚のまち」アピール 釜石で春まつり 観光客でにぎわう

かまいし春まつりで買い物客を沸かせたマグロの解体ショー=4日

かまいし春まつりで買い物客を沸かせたマグロの解体ショー=4日

 
 5月の大型連休中の3、4日、釜石市鈴子町の釜石駅前周辺で「かまいし春まつり」(釜石観光物産協会主催)が開かれた。駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石では海の恵みを体感する多彩な企画を展開。駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場には出店ブースや遊びのコーナーが設けられ、市内外から訪れた観光客が思い思いに楽しんだ。
 
 サン・フィッシュでは「魚のまち」をアピールする催しを多数用意。地元で水揚げされた新鮮な魚介類を市価の半額ほどの“浜値”で販売し、その場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。毛ガニ釣りチャレンジは好評で、4日は開始早々に終了。マダコやトゲクリガニ、リュウグウハゼなどの釜石海域の生き物に触れられるタッチプール(岩手大釜石キャンパスが協力)は子どもたちの人気を集めた。
 
海の生き物に触れられるタッチプールは子どもに大人気

海の生き物に触れられるタッチプールは子どもに大人気

 
毛ガニ釣りに挑む子どもたちに周囲の大人が声援を送る

毛ガニ釣りに挑む子どもたちに周囲の大人が声援を送る
 
マグロの重さ当てクイズも。じっと目を凝らす挑戦者

マグロの重さ当てクイズも。じっと目を凝らす挑戦者

 
 4日、大にぎわいとなったのはマグロの解体ショー。施設を運営する釜石駅前商業協同組合の八幡雪夫理事長が中心となって、長崎・五島産の養殖クロマグロ(ホンマグロ)を出刃包丁などで手際よくさばいた。
 
多くの見物客でにぎわったマグロ解体ショー

多くの見物客でにぎわったマグロ解体ショー

 
 「脂、ヤバー」。頭やカマ、身を切り落とす度に、買い物客から歓声が上がった。解体後は大トロや中トロ、赤身に切り分けてパック詰めされ、安価で販売。解体を見守っていた人らが次々と買い求めた。
 
マグロの解体ショーを通じて触れ合う鮮魚店と買い物客ら

マグロの解体ショーを通じて触れ合う鮮魚店と買い物客ら

 
解体後、マグロを買い求める人たちで長い列ができた

解体後、マグロを買い求める人たちで長い列ができた

 
 マグロの重さ当てクイズも行われ、269人が挑んだ。「55キロ」とぴったり当てた2人にはトロと赤身の「サク」の詰め合わせをプレゼント。「当たっちゃった」と驚く神奈川県藤沢市の会社員八木俊明さん(44)は思いがけない戦利品を手に、「刺し身にして味わう」と頬を緩めた。妻の実家への帰省に合わせ、毎年この時期に来釜。「海鮮はおいしいし、山と海の景色もすごくいい。落ち着く」と目を細めた。
 
 八幡理事長は「どこから人がくるのか…ありがたい。いかにして人を集めるか、周辺施設や行政、出店者らの協力があってこそ」と予想以上の人出に手応えを口にした。漁獲量の減少、水揚げされる魚種の変化への対応など鮮魚店の経営は厳しさもあるが、「駅前を盛り上げたい」との思いは変わらず、「計画中」という秋のイベントに向け、早くも腕をまくった。
 
春の陽気と食を楽しむ家族連れでにぎわった

春の陽気と食を楽しむ家族連れでにぎわった

 
 春まつり開催中は晴れの日が続き、行楽日和となった。屋外では串焼きやかき氷などを味わったり、ゴーカートなど子ども用の乗り物での走行を楽しむ家族連れらでにぎわった。

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真っすぐ、時に曲がりながら 若者が刻む田んぼのリズム 釜石で田植え体験イベント

独特のリズム⁉田植え体験で参加者が描いた苗の点線

独特のリズム⁉田植え体験で参加者が描いた苗の点線

 
 釜石市甲子町の水田で3日、県内外の若者たちが田植えに取り組んだ。青々と成長した「ひとめぼれ」の苗を積んだ田植え機での作業に挑戦。真っすぐだったり、曲がりくねったりと多彩な苗の点描が現れた。電子音楽と食を組み合わせた体験型イベント「DEN DEN GAKU」での一場面。農作業を通じ自然や人との触れ合いも楽しんだ。
 
 小佐野町でゲストハウスを運営する「シェアヴィラやまとき」代表の大井祥紀(よしき)さん(30)を中心とする企画。田植えとのかかわりがあるとされる日本古来の伝統芸能「田楽」に、現代の感性を取り入れた新しい体験を提案するのが狙いで、東京を拠点に活動を展開するクリエイティブチーム「ノット」とタッグを組んだ。
 
 体験の場は「やまとき田んぼ」(約40アール)。生まれは釜石だが、育ちや生活拠点は首都圏の大井さんが昨年から挑むコメ作りの場で、祖父(故人)から引き継いだ大切な水田だ。この日は、水を張った17アールの田んぼで作業。大井さんの実演後、希望者が小型の田植え機を動かした。
 
田植え体験をした「やまとき田んぼ」。周囲には豊かな自然が広がる

田植え体験をした「やまとき田んぼ」。周囲には豊かな自然が広がる

 
コメ作り2年目の大井祥紀さんが描く線は真っすぐのびる

コメ作り2年目の大井祥紀さんが描く線は真っすぐのびる

 
大井さんにアドバイスを受けながら機械を動かす参加者

大井さんにアドバイスを受けながら機械を動かす参加者

 
 山形県にある東北芸術工科大デザイン工学部3年の星川涼介さん(20)、小林晴(はる)さん(20)は農業初体験。農機の操縦も初めてだったが、「ゆっくり、気張らず。ちょっとずれてもいいから」「植える先、前を見て」とのアドバイスを受けて気楽に挑み、「楽しい」と声をそろえた。「コメ農家は就きたい仕事のイメージがなかった」と本音を明かしつつ、「育ったコメを食べたい」「自然が豊かで、ジブリみたい。ひとときでも現実から離れ、リフレッシュになる」と、農業に対する好感を植え付けた。
 
田植え機の操縦を丁寧に教える大井さん(右)

田植え機の操縦を丁寧に教える大井さん(右)

 
田んぼに足を踏み入れ、泥の不思議な感覚を楽しむ

田んぼに足を踏み入れ、泥の不思議な感覚を楽しむ

 
 田植え体験は午前中に始まり、昼休みには野外でバーベキューを堪能。午後の作業時にはノットが電子音楽を響かせる中、首都圏などから訪れた若者ら約30人が機械を動かしたり、作業の進み具合を見守ったりした。
 
コメ作り拠点となる施設の前で食と音楽を楽しむ

コメ作り拠点となる施設の前で食と音楽を楽しむ

 
特設の音楽ブースの奥で田植え機が行き交う

特設の音楽ブースの奥で田植え機が行き交う

 
 「みんなでやるから楽しい」。参加者の様子を見つめながら、大井さんは実感した。「コメ農家は辞めていく人も多く、衰退してしまう」と危機感を抱き、「みんなで楽しんでやる農業を広げたい。(祖父が残してくれた)田んぼがちょうどいい広さで、自分も楽しみながらできる。こういう形なら、農業も残っていくのでは」と考えている。
 
 コメ作りへの挑戦には地域の協力も欠かせない。苗を提供するのは、甲子町の農業佐々木隆さん(83)。大井さんの祖父の代からの付き合いだといい、若い挑戦者をあたたかく見守る。「新規に従事する人が増えるのは、いいことだ。パワーがあり、研究も熱心。販売網などアイデアも持っている。若い人の力を借りながらでなければ、やっていけない」と歓迎。若者たちが田んぼに描いた点線に目を向け、「秋に応えてもらえるよう、丁寧にやらないと」と助言を残した。
 
田植え機を動かす大井さん。地域の力も借りて挑戦を続ける

田植え機を動かす大井さん。地域の力も借りて挑戦を続ける

 
 やまとき田んぼでの田植え作業は今月いっぱい続く見込みで、地元の子どもたちも手伝う予定。大井さんはこうした農業体験のほか、ゲストハウスを拠点に首都圏の人との交流など活動を広げていく考えだ。

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ポップな世界で魅せる!釜石のイラストレーター須藤郁美さん デジタルアート展

デジタルイラストでポップな世界観を表現する須藤郁美さん

デジタルイラストでポップな世界観を表現する須藤郁美さん

 
 釜石市鵜住居町のイラストレーター須藤郁美(すとう いくみ)さん(36)の作品展「feel(フィール)」が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。タブレット端末を使ったデジタルイラストで創り出すポップな世界観を紹介。遊び心を加えた作品もあり、「『かわいい!』『おしゃれー』とか感じてもらえたら」と来場を呼びかける。同ホール自主事業「art at TETTO(アート・アット・テット)」の第14弾。11日まで楽しめる。
 
 作品づくりのテーマは「ポップ」。似顔絵、擬人化の表現を得意とし、お笑いコンビのサンドウィッチマンなど著名人の描写や自画像、精霊や妖怪の姿を創造したカラフルな作品など約50点を並べる。モミジやイチョウなどの葉っぱに埋もれる人物を描いた「かくれんぼ」(A3サイズ)は、隠れたリスを探す遊びも取り入れた作品。メイン展示品の「釜石大観音と虎舞」(B1サイズ)は、郷土芸能虎舞の継承と街の未来を見守る擬人化された観音様の柔らかな表情が印象に残る。
 
大小さまざまな作品が並ぶデジタルイラスト展「feel」

大小さまざまな作品が並ぶデジタルイラスト展「feel」

 
カラフルでかわいい作品がずらり。釜石にちなんだ作品も

カラフルでかわいい作品がずらり。釜石にちなんだ作品も

 
会場ではかわいらしさが詰まった作品をじっくり楽しめる

会場ではかわいらしさが詰まった作品をじっくり楽しめる

 
 須藤さんはもともと絵を描いたり、物を作ったりするのが好きで、デザインを学ぶため東北工業大に進学。広告、ウェブデザインの基礎を身につける中で、デジタルアートが趣味に加わった。「仕事にしたい」とは考えていたが、「食べていける仕事」とは思えず、卒業後は地元に戻って教員補助、販売員、事務職員として働いた。
 
 そして、結婚・出産。子育て、仕事と忙しい日々が続く中、全てを頑張ろうとして心身ともに疲弊し、人との関わりに悩んだり、ストレスをうまく解消できず、「適応障害」「抑うつ」と診断されて療養が必要な状態になった。そうした診断があったことで「逆に吹っ切れた」と須藤さん。「キャパオーバー。嫌なことを続けるのはヤダ。いったんリセットしよう」。家族の理解を得て、休息期間に入った。
 
 「人生に欠かせないもの」という絵を描くことは継続。気持ちに余裕ができた頃、SNS(交流サイト)での作品紹介、ウェブショップでのグッズ販売を始めた。すると、「学校の図書室に掲示するポスターを作ってもらえないか」という依頼が入った。知人らのつてで企業や釣り好きの人向けのステッカー制作、似顔絵の要望も受けるように。ちょうど働かなければと思っていた時期で、「人と会うのは…だけど、病気に負けたくない」「やりたいことをやろう。チャレンジしてみよう」と発起。イラストレーターとしての活動に本腰を入れ、3年目となった。
 
仕事として請け負う中で創り出した作品も紹介する

仕事として請け負う中で創り出した作品も紹介する

 
制作過程を知らせるパネルやオリジナルの塗り絵も用意

制作過程を知らせるパネルやオリジナルの塗り絵も用意

 
 地元の美術集団「サムディ45」に所属し、グループ展で作品を紹介しているが、個展は初めて。タイトルのフィールには「直感で動くタイプで、感じたままに生きてきた自分」と「デジタルイラストが身近にあふれていることを知り、感じてほしい」との思いを込めた。
 
 期間中の3、4日には、似顔絵を描いてプレゼントする企画も。「親子一緒に描いてもらいたかったから、うれしい」と満足げな関谷千帆さん(42)は、額に入れて自宅に飾るという。翔也ちゃん(5)は「(ママは)かわいい。(自分は)かっこいい」と、イラストと同じ笑い顔を見せた。
 
「大満足」。似顔絵そっくり⁉な笑顔を見せる親子

「大満足」。似顔絵そっくり⁉な笑顔を見せる親子

 
似顔絵を描く須藤さん(右)の傍らで来場者が作品を楽しむ

似顔絵を描く須藤さん(右)の傍らで来場者が作品を楽しむ

 
 アーティスト活動によって、人と触れ合う機会が増えてきた須藤さん。自身の活動を知ってもらうことで、心身の不調を感じる人たちや周囲の人に「ふとしたきっかけで誰にでも起こりうる身近なもの(病気)だよ」「元気を出してほしい」とメッセージを送る。
 
 「まだ、駆け出し。もっと勉強し、仕事をもらえるようにしたい」。岩手県内には同じようにデジタルアートを活用した活動を展開するイラストレーターが多くいるといい、交流し刺激し合いながら創作の世界観を広げていきたい考え。釜石を飛び出した作品紹介、展示会開催への意欲も持つ。
 
 午前10時~午後6時(最終日は午後4時まで)。入場無料。

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自主防結成後初 釜石東中が新年度スタートで防災オリエンテーション 校内の備えを確認

避難所開設時に使う段ボールベッドを組み立て、寝心地を確かめる=釜石東中防災オリエンテーション

避難所開設時に使う段ボールベッドを組み立て、寝心地を確かめる=釜石東中防災オリエンテーション

 
 釜石東中(高橋晃一校長、生徒86人)は4月30日、年度初め恒例の防災オリエンテーションを行った。2011年の東日本大震災で受けた同校の被害、復興の歩みを知り、防災力を高めるための活動。本年1月に県内初の中学生による自主防災組織(自主防)を立ち上げた同校。“結成元年”の取り組みを深化させるべく、生徒らは各種災害への備えを再確認するなどし、発災時の適切な行動を考えた。
 
 全学年を縦割りにした3つの組団ごとに6項目の活動を展開。2、3年生は初めて臨む新1年生(33人)にアドバイスしながら活動した。校内の災害への備えを確認する活動では、ウオークラリー形式で消火器・栓、担架、自動体外式除細動器(AED)が設置してある場所をチェック。校舎図に印を付けて全体の配置も頭に入れた。合わせて避難経路も確認した。
 
校舎内を歩き、消火器などがある場所を確認。いざという時、速やかに使えるように…

校舎内を歩き、消火器などがある場所を確認。いざという時、速やかに使えるように…

 
AEDや担架は普段の傷病者発生時にも必要。しっかり場所をチェック

AEDや担架は普段の傷病者発生時にも必要。しっかり場所をチェック

 
 2階の防災備蓄倉庫では在庫の種類と数を確認し、リストに書き込んだ。同校が鵜住居小と共用する校庭と体育館はそれぞれ、地震津波、火災、洪水・土砂災害時の緊急避難場所、拠点避難所に指定されている(市指定)。発災が生徒たちの在校時間帯の場合、自らの命を守り、安全が確認された後には、自主防として避難所開設にあたることを目指している。生徒らはこの日、毛布や飲料水、炊き出し釜、暖房器具など必要な備品が倉庫内のどこにどれだけあるかを把握。災害用の簡易トイレや段ボールベッドの組み立てを体験し、避難者名簿の作成の仕方も教わった。
 
「防災備蓄倉庫には何がある?」備蓄品の種類や数を確認

「防災備蓄倉庫には何がある?」備蓄品の種類や数を確認

 
災害時に避難所となる体育館で段ボールベッドの組み立てを体験

災害時に避難所となる体育館で段ボールベッドの組み立てを体験

 
簡易トイレの設置の仕方を学ぶ。座り心地も試した

簡易トイレの設置の仕方を学ぶ。座り心地も試した

 
 震災前から行われてきた同校の防災の取り組み、被災から復興までの歩みを知る活動も。2009年に当時の1年生が制作した津波防災の啓発DVD「てんでんこレンジャー」の視聴では、自分の命を守るために必要な、▽大きな地震がきたら高い所を目指してひたすら逃げる▽いつでも避難できるよう枕元に衣服や持ち物を置いておく▽避難場所や待ち合わせ場所を普段から家族で話し合っておく―ことを学んだ。
 
釜石東中オリジナル防災キャラクター「てんでんこレンジャー」が教える、津波から命を守る方法を心に刻む

釜石東中オリジナル防災キャラクター「てんでんこレンジャー」が教える、津波から命を守る方法を心に刻む

 
 同校には14年前の震災被害や世界中から受けた多くの支援を一堂に見ることができるメモリアルルームが開設されている。津波で全壊した校舎を含む鵜住居地域の甚大な被害、数えきれない支援に力をもらい地域とともに歩んだ復興への道のり…。生徒らは先輩方が経験してきたことを写真や支援品などから感じ取り、学校や地域のためにこれからできることを考えた。
 
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東日本大震災の被害や復興への歩みを知ることができるメモリアルルーム

 
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さまざまな展示品を見ながら気付いたことを書き留める生徒ら

 
 1年の川崎煌聖さんは「段ボールベッドの組み立てなど、避難してきた人たちへの対応の仕方が少し分かった。寝ている時とか、いつ災害があっても逃げられるよう準備していきたい」と知識を深めた様子。震災は生まれる前の出来事だが、親から話を聞き、幼稚園、小学校と避難訓練を重ねてきていて、「いざという時の行動は身に付いている」。中学生になったことで、「自分の命は自分で守ることはもちろん、周りに人がいる時は呼び掛けをしながら逃げたい」とステップアップを望んだ。
 
 同校の自主防は全校生徒と教職員で組織する。本年度は教職員19人を含め105人体制。会長を務める千葉心菜さん(3年、生徒会長)は結成後初の本格的な活動を終え、「みんな真剣に協力し合って取り組めていた」と一安心。組織の立ち上げに携わり、本年度が実質1年目となるが、「災害時に誰もが自分の立場を理解し、的確な判断と行動ができるよう学年を超えて学んでいけたら。全校参加の地域を巻き込んだ訓練もやりたい。活動を浸透させるために回数も増やせれば」と願う。
 
 同校が掲げる生徒像の一つが「助けられる人から助ける人へ―」。防災、命の学習に加え、各種地域貢献活動で「人を助ける」「誰かのために動く」ことができる人間を目指す。意欲的に取り組めるよう設けられているのが「EAST(イースト)レスキュー隊員」制度。各学習、地域活動への参加でポイントを集めると5~1級まで取得可能。普段から地域とのつながりを深めることで、災害時のスムーズな連携を図る狙いもある。オリエンテーションではその隊員証も配られた。
 
 復興・防災教育担当の佐々木伊織教諭(28)は「防災に関してはやれることをやりたいという生徒も多い。自身で必要なことを判断し、地域のために動けるようになってほしい。いかに楽しく学んで力をつけていくかが大事。新しいことにもどんどんチャレンジを」と期待を寄せる。

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岩手ビッグブルズ パブリックビューイング in 釜石PIT vol.5 横浜エクセレンス戦

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パブリックビューイング in 釜石PIT
岩手ビッグブルズを一緒に応援しよう!

対象試合

B3 PLAYOFFS SEMIFINALS 2024-25
岩手ビッグブルズ vs. 横浜エクセレンス(AWAY戦)

日時

GAME2
5月10日(土) 17:00 TIP OFF
開場 16:30
 
GAME3
5月11日(日) 17:00 TIP OFF
開場 16:30

※GAME2までに勝敗が決した場合はGAME3は実施しません。

場所

釜石PIT(岩手県釜石市大町1-1-10)

 

【駐車場について】
・斜向かいにある釜石大町駐車場または周辺の有料駐車場をご利用ください。
・自転車およびバイクは、釜石PITに隣接する駐輪駐車スペースをご利用ください。

参加費(運営協力費)

300円(高校生以下無料)
 
※運営協力費は本パブリックビューイング開催の為の運営費の一部として使用いたします。

その他

・ソフトドリンク、ノンアルドリンクを会場で販売
・来場者全員にスタンプカードを進呈
来場するほどお得!スタンプをためて特典GET!

主催

釜石まちづくり株式会社
協力:株式会社岩手ビッグブルズ

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト