東日本大震災の津波で校舎などが全壊し、仮設校舎で授業を続けている釜石市鵜住居地区の幼稚園、小・中学校などを一体で整備する新校舎建設工事の安全祈願祭が17日、鵜住居町の高台に造成した建設地で行われた。市立鵜住居幼稚園、鵜住居小、釜石東中の学びやとしてだけではなく、地域活動の拠点、災害時の避難場所の機能も備えた複合施設を整備。地域に開かれた復興のシンボルとして、17年3月の完成を目指す。
市立鵜住居幼稚園、鵜住居小、釜石東中の完成予定模型
旧鵜住居駅近くにある山を切り崩し、海抜15~26メートルの高台に造成した14万1千平方メートルの敷地に、校舎や体育館、プール棟、園舎などを建てる。校舎は鉄骨4階建てで、延べ床面積約1万1千平方メートル。1、2階は鵜住居小、3、4階を釜石東中が利用する。
緊急時の避難所として活用できるよう、体育館のそばに調理室を配置し、炊き出しができるようにするほか、食糧や毛布を収納する防災備蓄庫も設置。敷地のり面に複数の避難階段も設ける。造成工事を含めた事業費は約96億円。
安全祈願祭は施工者の大林組・熊谷組・東洋建設・元持特定共同企業体が主催し、関係者約100人が出席。神事を行った後、発注者の野田武則市長が「学校建設は復興の希望の光。これに合わせて住民が戻る、地域再生の第一歩。子どもたちにとっても未来への希望の扉になる。地域振興、釜石の発展に尽くす多くの人材を輩出する場となることを期待する」とあいさつした。
くわ入れをした鵜住居小児童会長の小笠原朋宏君(6年)は「新しい校舎に入るのが楽しみ。見晴らしもすごくいい」、釜石東中生徒会長の佐藤繁君(3年)は「震災の時は小学生で大変な思いをして逃げた記憶があるが、ここは高台なので大丈夫だと思う。後輩には安心して楽しい学校生活を送ってほしい」と願った。
くわ入れして工事の安全を願う児童、生徒ら
震災後、鵜住居小は1~4年生が双葉小、5・6年生は小佐野小を間借りし、12年2月に鵜住居町田郷の仮設校舎に移った。釜石中を間借りした釜石東中は同4月から仮設校舎で授業を開始。鵜住居幼稚園は天神町の旧市立第一幼稚園で保育を行っていたが、こども園の開設に伴い閉園となり、14年4月から鵜住居町太田に建設された仮設園舎で保育を続けている。
10年度から12年度まで釜石東中の校長を務めた平野憲さん(現・北上北中校長)は「東中、釜石中、仮設の校舎と3度移ったので、生徒が落ち着ける、安全な校舎がつくられることに思い入れがある。時折、足を運んで見守りたい」と話した。
完成イメージ 夢膨らませる
同日は、建設現場の児童生徒見学会も行われ、鵜住居小の4、5年生56人と釜石東中1年生36人が参加。設計者が完成予定の模型を使い、施設の設備などを説明した。中学校の校舎が建てられる海抜26メートルの地点では工事が進む鵜住居地区の様子を見学。児童生徒からは「高いねー」「海が見える」などの歓声が上がった。
学校施設の建設現場を見学する児童ら
小笠原由樹也君(鵜住居小4年)は「新しい校舎で、どんなことがあるか楽しみ」、佐々木穂乃花さん(同5年)は「これから住宅も建ってくると思うので、すごく眺めがいいと思う。新しい校舎で入学式をしたい」と期待。釜石東中の伊藤千尋さんは「(建設現場は)広かった。海が見え、風が気持ちいい。新校舎は仮設の校舎とは違い、ゆとりがあり、生活しやすそう」、吹奏楽部に所属する小林凜さんは「広い音楽ホールみたいなのはあるかな。たくさん練習し、コンクールでいい賞をとりたい」と夢を膨らませた。
この見学会は、開校を予定する2年後のイメージを膨らませるとともに、工事の過程を見学することで鵜住居地区の復興を実感してもらうのが目的。市教育委員会の村井大司総務課長は「今のまちが変わっていることを感じてもらったようだ。機会を見て他の学年も見学できるよう調節したい」と話した。
(復興釜石新聞 2015年7月22日発行 第404号より)
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