震災から5度目の釜石市民芸文祭、文化のまち再興へ〜心の復興 高まる意欲


2015/11/09
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

各団体が日ごろの活動の成果を披露した作品展示。来場者も興味津々

各団体が日ごろの活動の成果を披露した作品展示。来場者も興味津々

 

 釜石の芸術の秋を彩る「第45回釜石市民芸術文化祭」は1日から3日まで鈴子町のシープラザ遊、シープラザ釜石で開かれた。市内最大の文化の祭典は2011年の震災以降、市民に安らぎと元気を与え、心の復興を後押ししている。被災した市民文化会館に代わる市民ホールの建設も始まり、震災から5度目の芸文祭は、参加団体のたゆまぬ向上心と文化のまち再興への意欲に包まれた。

 

 1日の開会式で市芸術文化協会の岩切潤会長は、各団体が震災後、発表会場の確保などに苦労している現状に触れ、「『市民ホールができるまで』と、みんな一生懸命頑張っている。釜石の芸術文化を次世代につなぎ、潤いのあるまちを作っていきたい」と落成予定の2年後に期待を寄せた。

 

 今年は5年ごとに行う功労者表彰があり、各分野で貢献してきた18人を表彰。謝辞に立った小野寺豊喜さん(釜石市民絵画教室)は、絵を描く気持ちがぐらついた震災直後を思い起こし、「来場者の声に励まされ、芸文祭の展示も続けてこられた。教室を自らの生涯文化活動の場とし、団体活動を支える役割も担っていきたい」と決意を述べた。

 

市芸術文化協会の岩切潤会長が表彰状を手渡した功労者表彰

市芸術文化協会の岩切潤会長が表彰状を手渡した功労者表彰

 

 会場内では3日間にわたり19団体が作品を公開。華道、絵画、写真、書道、ステンドグラスなどさまざまな分野の力作が並び、来場者に感動を与えた。釜石茶道協会は呈茶で、文化の秋に花を添えた。

 

 2年目の企画展示は世界文化遺産に登録された「橋野鉄鉱山高炉跡」がテーマ。1・5メートル四方の台座に自然のコケを敷き詰めて山腹を造形し、鉄の歴史館から借用した三番高炉の模型を配置。鉄鉱石が採掘される岩のイメージで山野草を植え込んだ石を据え、高炉と周辺の風景をジオラマで表現した。今の時節のヨモギやススキ、赤く色づいたモミジで秋の山を印象づけた。

 

すべて自然の植物でつくりあげた「橋野鉄鉱山高炉跡」のジオラマ。「今こそ取り上げねば」と浅利事務局長(左)

すべて自然の植物でつくりあげた「橋野鉄鉱山高炉跡」のジオラマ。「今こそ取り上げねば」と浅利事務局長(左)

 

 各分野の会員がアイデアを出し合った今年の釜石を象徴する大作。芸文協の浅利金一事務局長(66)は「以前、芸文祭に出品していた盤景愛好者にも助言をいただき、ここまで仕上がった。世界遺産の盛り上げに一役買えれば」と自信を見せた。

 

 芸文祭発表部門は8月末から市内外の会場で始まり、12月まで続く。展示部門と日程を同じくしたのは10団体。初日に平稀流糸扇会と合同で華やかなステージを繰り広げた古川舞踊教室は、今年、芸文協に新たに加盟した。古川明美会主(61)は「お弟子さんたちの励みになればと思い、初めて参加させていただいた。釜石復興の一翼に私たちも踊りで、微力ながら貢献できれば」と願った。

 

芸文祭初参加の古川舞踊教室のステージ。中学生による舞「下町の太陽」

芸文祭初参加の古川舞踊教室のステージ。中学生による舞「下町の太陽」

 

 小野寺さん以外の被表彰者は次の通り。
 佐藤悦子(岩手三曲協会釜石支部)、紺野節子(同)、高橋静江(生田流正派釜石会)、鈴木節子(同)、阿部芳子(日本原色押花福祉協会釜石支部)、村岡芳隆(切り絵サークルはまゆり)、菅原照男(日本郵趣協会釜石支部)、三浦すみゑ(釜石芸能連合会)、奥友ヨミ(リボンフラワー石垣教室)、武田ふみこ(琴城流大正琴白百合会)、佐々木和子(釜石書道協会)、菊池婦美(同)、設楽明子(釜石ユネスココーラス)、及川ヒデ(釜石茶道協会)、植田生子(同)、菊池英子(同)、川向修一(釜石フィルハーモニック・ソサイェティ)

 

(復興釜石新聞 2015年11月4日発行 第433号より)

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