3年ぶりのみこし渡御 震災15年の鵜住居地区に活気 出身者、ゆかり人、近隣の町からも応援多数


2026/10/06
釜石新聞NewS #地域

3年ぶりにみこしが繰り出した鵜住神社例大祭=9月27日

3年ぶりにみこしが繰り出した鵜住神社例大祭=9月27日

 
 釜石市鵜住居町の鵜住神社(花輪宗嗣宮司)の例大祭は9月27日に行われ、3年ぶりのみこし行列が町内を練り歩いた。まちに甚大な被害をもたらした東日本大震災から15年―。津波被害を受けた同神社のみこしは、全国からの支援で2015年に新調され11年の時を刻む。新みこしの渡御は今回で6回目。虎舞や鹿踊りなどの郷土芸能団体を従えた行列は、再建された家々の前を進み、待ちわびた住民らの熱い歓迎を受けた。
 
 同神社で例大祭の神事が行われ、ご神体がみこしに移された。行列の出発を前に、祭典実行委員長の前川義博さん(同神社氏子総代長)は町内外の協力者に深い感謝の気持ちを表し、「みこし渡御祭を成功させ、次世代の方々にも祭りを通して地域への愛着を持ってもらえれば幸い」とあいさつした。
 
神事を終え渡御に出発する本みこし(左)、古峯神社みこし(右上)、子どもみこし(右下)=鵜住神社

神事を終え渡御に出発する本みこし(左)、古峯神社みこし(右上)、子どもみこし(右下)=鵜住神社

 
 高台の神社境内から本みこし、子どもみこし、同神社の敷地内に祭られる古峯神社のみこしが繰り出した。子どもみこしは12年に銀座西七丁目町会(東京都)から、古峯神社のみこしは13年に京都府南丹市園部町から寄贈されたもの。参道沿いの祭り場では3基のみこしに地域の代表者が玉串をささげ、鵜住居青年会の手踊り、外山鹿踊が奉納された。
 
鵜住居青年会の子どもたちによる手踊り「うさぎ舞」

鵜住居青年会の子どもたちによる手踊り「うさぎ舞」

 
刀振りとともにダイナミックに舞う外山鹿踊

刀振りとともにダイナミックに舞う外山鹿踊

 
祭り場から国道45号に出て進むみこし行列。沿道では地域住民らが出迎えた

祭り場から国道45号に出て進むみこし行列。沿道では地域住民らが出迎えた

 
 祭り場を出発した行列は国道45号を北進。スーパーなどが入る商業施設「うのポート」の角を曲がり、再建された住宅が並ぶエリアに入った。住民らは自宅前に塩や酒を準備してお出迎え。さい銭をあげてみこしに手を合わせた。行列は折り返し地点となる寺前交差点付近の金毘羅公園に到着。津波で被災し、移設安置された金毘羅神の石碑の前で、神事と郷土芸能の奉納が行われた。地元の神ノ沢鹿踊、新神大黒舞などが踊りを披露すると、集まった地域住民らが盛んな拍手を送った。
 
感謝を込め、みこしに手を合わせる住民。行列参加者と笑顔を重ねた

感謝を込め、みこしに手を合わせる住民。行列参加者と笑顔を重ねた

 
地元芸能、神ノ沢鹿踊は2017年3月に市指定文化財となった

地元芸能、神ノ沢鹿踊は2017年3月に市指定文化財となった

 
こちらも古くから伝承される新神大黒舞。小槌と扇子を手に祝いムードたっぷり

こちらも古くから伝承される新神大黒舞。小槌と扇子を手に祝いムードたっぷり

 
 同公園近くに暮らす83歳女性は被災した自宅を再建。行列に参加する地元の知り合いらと笑顔を重ね、「やっぱり祭りはいいよねー。踊りを見るとうきうきする」と心を躍らせた。震災後のみこし渡御は復興に向かう住民らに大きな力を与えてきた。「こうして続けられているのは皆さんの協力があってこそ。なくさないでほしい。自分も長生きしないとね」と笑った。
 
 神ノ沢鹿踊の刀振り、松本朱利さん(30)は産後初の祭り復帰。幼い子ども2人も金子振りで参加した。祖父が同鹿踊の笛吹きで、自身は4歳から踊りに参加。代々、地元芸能に携わってきたことに「感慨深い」と特別な思いを抱く。地域では家族ぐるみの参加で芸能の継承に努めるが、近年は踊り手となる若い世代が減少し、人員確保には苦労を伴う。「どうやって残せるか。課題は多いが何とかつないでいければ」と願った。
 
みこしは住宅の敷地に乗り入れるサービスも!

みこしは住宅の敷地に乗り入れるサービスも!

 
 行列はこの後、震災犠牲者を追悼する祈りのパークがある駅前広場「うのすまい・トモス」に向かった。渡御ルート一帯は震災前、住宅や農地があり、祭りには2町内会が手踊りで参加していた。区画整理で姿を変え住宅の数も大幅に減ったが、駅前には市民体育館も整備され、各種大会やイベントに市内外から多くの人が訪れている。広場では田郷鹿子踊などが踊りを奉納。見物客も広場を囲み、各団体の踊りを楽しんだ。
 
うのすまい・トモスに到着したみこしは広場を旋回。見物客を楽しませた

うのすまい・トモスに到着したみこしは広場を旋回。見物客を楽しませた

 
虎舞のお囃子(はやし)、威勢のいい掛け声でみこしを盛りたてる

虎舞のお囃子(はやし)、威勢のいい掛け声でみこしを盛りたてる

 
田郷鹿子踊の金子振りの子どもら。はかま姿がりりしい

田郷鹿子踊の金子振りの子どもら。はかま姿がりりしい

 
広場には大勢の見物客が集まり、各団体の踊りに見入った。雌鹿をめぐる雄鹿の戦い「突合い」(右上)は激しい踊りが特徴

広場には大勢の見物客が集まり、各団体の踊りに見入った。雌鹿をめぐる雄鹿の戦い「突合い」(右上)は激しい踊りが特徴

 
 鵜住居出身の佐々木敬子さん(79)は友人らと祭り見物。父や兄が田郷鹿子踊の太鼓や踊りをやっていたといい、「見ると親や兄弟が思い出されて胸がいっぱいになる」と古里愛をにじませた。震災からの時の流れも実感。「みんなの力があってここまできたと思うと感動。まちに若い人が増えてもっとにぎやかになればいい」と郷土の未来に期待を寄せた。
 
 本みこしの担ぎ手には約40人が結集。地元住民のほか山田町、大槌町、釜石市の各神社の担ぎ手衆が協力した。みこし責任者の藤原輝行さん(64)は「今は他からの応援がなければ渡御は成り立たない。今回も近隣市町から多くの方々が集まってくれた」と感謝。震災後の人口減が著しい鵜住居ではあるが、「いざ、祭りとなればこれだけの人が集まる。沿道で喜んでくれる顔を見ると、絶やしてはだめだと実感する」。
 
 釜石市浜町、尾崎神社のみこし担ぎ手団体「輿衆(よしゅう)会」の甲斐谷定貴さん(53)は今季、県内外の複数のみこし渡御に応援協力。担ぎ手の横のつながりができているといい、「みこし好きなので、人が足りないとなれば快く駆け付ける。人数不足でできないというのは担ぎ手としては悲しいもの」と仲間を思いやる。「地域を盛り上げたい」との思いもあり、「震災前以上のものをお見せするお手伝いができれば」と望んだ。
 
みこしの担ぎ手衆は心を一つに巡行。笑みもこぼれる

みこしの担ぎ手衆は心を一つに巡行。笑みもこぼれる

 
 行列は最後の御旅所となる日向グラウンドへ―。前回は諸事情で同所への立ち寄りを見送ったため、楽しみにしていた地区住民らが大勢集まった。日向振興会の手踊りは7年ぶりの参加。こちらも踊り手不足が課題となる中、今年は頼もしい若手女性2人が加わった。タイ出身で、市内の工場で働くウォンサー パパッソーンさん(31)とセーンジャン サウワラツクさん(30)。「日本の音楽や文化、祭りに興味がある」というウォンサーさんが誘って参加。「最初は難しかった。でも練習して上手になった」と2人。2週間ほどの練習で全6曲の踊りを覚えたという。「母国の家族に伝えたらびっくりしていた」とセーンジャンさん。初めての祭りを「みんなやさしい。笑顔いっぱい」と満喫。ウォンサーさんも「いろいろな踊りがあって素晴らしい」と地域の伝統文化に感激。たくさん撮った写真を家族に送るのを楽しみにしていた。
 
日向振興会の手踊りに初めて参加したタイ出身女性2人は踊りも完璧。日本の祭りを存分に楽しんだ

日向振興会の手踊りに初めて参加したタイ出身女性2人は踊りも完璧。日本の祭りを存分に楽しんだ

 
7年ぶりの日向手踊りを喜ぶ地元住民ら

7年ぶりの日向手踊りを喜ぶ地元住民ら

 
 同神社の花輪宮司は「住民がみこしに手を合わせてくれるのを見ると、やはり待ち望んでいるのだと感じる。『いい祭りだ』と言ってくださる方も多い」と安堵の表情。震災からの15年、地域住民は幾多の困難を乗り越え、まちの再生に力を尽くしてきた。祭りは住民の結束力を高め、明日への希望にもなってきた。「氏子の方々にとって渡御への参加は誉れ。気持ち良く祭りを楽しみ、その後の日常でも神様のご加護を感じながら、ちょっとした幸せをかみしめてもらえれば」と花輪宮司。住民の心のよりどころとなる祭りの継続へ意欲を高めた。
 
鵜住居青年会の虎舞には飛び入りの踊りも!

鵜住居青年会の虎舞には飛び入りの踊りも!

 
鵜住居青年会の踊りの締めは「傘甚句」(下)。住民らが楽しみにする演目の一つ

鵜住居青年会の踊りの締めは「傘甚句」(下)。住民らが楽しみにする演目の一つ

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