未来を感じる修学旅行に!東京・文京学院大女子中 訪問地は釜石 震災の復興支援が縁


2026/09/22
釜石新聞NewS #文化・教育 #観光

いのちをつなぐ未来館でガイドの説明を聞く文京学院大女子中の生徒たち

いのちをつなぐ未来館でガイドの説明を聞く文京学院大女子中の生徒たち

 
 防災学習をしながら未来を考える修学旅行に―。東京都文京区の文京学院大学女子中学校(島田美紀校長、生徒320人)の3年生90人が14、15の両日、釜石市を訪れ、東日本大震災の被災状況や復興まちづくりの過程を学んだ。当時の小中学生の避難行動も追体験。「命を守る」ことを自分事として捉え、必要な行動をとるための判断力、選択力を育む機会にした。
 
 同校が修学旅行で東北、岩手県を訪れるのは初めて。昨年度までは京都など関西方面を訪れていたが、近年のオーバーツーリズム(観光公害)の影響もあり宿泊先の確保や公共交通を使った班別活動などが難しくなったのを背景に、新たな訪問先を検討した。文京学院大の学生らが震災の復興支援を機にイベント参加や、現地に滞在し地域活性化に挑むインターンシップ(就業体験)を行うなどして交流を続けていることもあり、釜石市を選んだ。
 
 全国で自然災害が相次ぐ中、防災・減災への関心も高まっており、被災地での学びは時事性の高いテーマの一つ。「生徒が自分の目で被災地を見て、何かを感じ、考えるきっかけに」との教員らの思いもあり、3泊4日の日程の中に被災地での学習を盛り込んだ。
 
記念にパチリ!修学旅行で釜石にやってきた中学生

記念にパチリ!修学旅行で釜石にやってきた中学生

 
 14日は同市大町の釜石PITで、市職員から復興まちづくりに関する話を聞いた。いつ起こるか分からない災害からまちを守るための多重防御、被害の大きかった中心市街地の商業・なりわいの再生とにぎわいの創出などの観点から取り組んだ「まちを創り直す」事業を説明。その際に大切にしたのは「住民の声」で、生徒らは市民がまちづくりに関わり協議する場が何度も設けられたことに関心を示した。
 
釜石PITで行われた復興まちづくりに関する講話

釜石PITで行われた復興まちづくりに関する講話

 
復旧復興に携わった市職員の話に耳を傾ける生徒

復旧復興に携わった市職員の話に耳を傾ける生徒

 
 その後、鵜住居町に移動。3班に分かれ、いのちをつなぐ未来館、釜石鵜住居復興スタジアム、鵜住居川水門と片岸海岸防潮堤の3カ所を巡る防災学習プログラムに臨んだ。
 
震災時の避難を追体験。出発点は釜石鵜住居復興スタジアム

震災時の避難を追体験。出発点は釜石鵜住居復興スタジアム

 
 避難の追体験では震災当時に釜石東中、鵜住居小の児童生徒が津波から逃れるために向かった高台へのルートを、未来館スタッフの案内でたどった。2つの学校があった跡地に建設したスタジアムから国道45号の恋の峠までの距離は約1.6キロ。釜石の子どもらが想定の避難場所ではなく、状況を見極めてより高いところを目指してとった行動を「どう思うか」と問いかけられながら歩き、「自然が相手で、想定外は起こりうる。その時には自分で考え、選択、判断する場面が何度もあり、そのたびに最善を尽くすことが大事」などとの言葉をじっと受け止めていた。
 
震災を経験した未来館スタッフ(左)の語りを受け止める生徒

震災を経験した未来館スタッフ(左)の語りを受け止める生徒

 
震災当時に鵜住居町の子どもたちが避難したルートをたどる

震災当時に鵜住居町の子どもたちが避難したルートをたどる

 
 未来館では震災当時の被災状況、津波の緊急避難場所ではなかったが避難した多くの人が犠牲になった鵜住居地区防災センターの話、釜石東中や釜石小が取り組んできた防災活動について展示やガイドを通じて理解を深めた。水門(長さ180メートル、高さ14.5メートル)では管理する県職員から施設概要や機能などの説明を受け、点検時に入る機械室を見学したりした。
 
発見を共有⁉片岸海岸防潮堤から海を見つめる生徒たち

発見を共有⁉片岸海岸防潮堤から海を見つめる生徒たち

 
 松浦柚希さん(14)は「大きな地震を経験したことがないが、たくさんの人が被害を受ける災害はいつ起こるか分からないから、震災のことを受け継いでいくことが大事だと感じた。実際に歩いてみて、津波の到達した場所が思っていたより広くて驚いた。『情報を信じすぎてはいけない』という言葉が印象に残った。何かあったら命を守るためにできることを考えて行動したい」と意識を高めた。
 
 高橋心鈴さん(15)は「近頃、東京でも地震が連続しているから、防災を学べてよかった。(旅先は変わったけど)楽しいし、結果オーライ」と笑った。被災地を訪ねるにあたり、生徒それぞれが深堀したいテーマを設定しているようで、高橋さんの関心事は、商店街の再生と増加する訪日外国人の受け入れについて。釜石でその一端に触れた後、テーマ別に活動する15日は宮城県南三陸町の復興商店街を訪れ、「別の視点からも理解を深めたい」と意欲を見せた。
 
釜石祈りのパークも見学。生きること、未来を考える機会にした

釜石祈りのパークも見学。生きること、未来を考える機会にした

 
 15日はスポーツや伝承、産業、環境といったテーマの中から生徒が選択して活動。釜石ではラグビー体験、ユニバーサルビーチの取り組みに関する講義、海洋保全を考えるSDGs(持続可能な開発目標)プログラムなどが用意された。
 
 島田校長は「実際に見て聞いて感じる経験が子どもたちにとって大事になる。縁のある釜石で学びつつ、未来や社会に対して何ができるか、自分事して考えるきっかけにしてほしい」と期待。今年2月に釜石の地方創生アドバイザーに就任した学校法人文京学院の島田昌和学院長・理事長も同行し、「東京でも必ず災害は起こると言われている。生活体験のようなこの修学旅行で、いろいろと気がついてもらえたらいい」と見守った。
 
「か・ま・い・Cー」とポーズを決めて写真に納まる生徒たち

「か・ま・い・Cー」とポーズを決めて写真に納まる生徒たち

 
 今回、観光地域づくり法人かまいしDMCが修学旅行を受け入れ、各種プログラムを提供した。今年度、防災学習を含め受け入れた修学旅行生は小中高校を合わせ計20校の約1300人。例年と同程度で推移しているという。修学旅行は秋頃が多い傾向にあり、同社では「これから」とする。
 
 修学旅行の定番とされる地域ではオーバーツーリズムが問題となっているが、訪問先変更に伴う変化は「あまりない」のが現状。それでも好機と捉える同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さん(30)は「受け入れの際はどういった学びを得たいか、希望を聞いて提案している。これからも釜石ならではの体験、オーダーメードを売りにやっていく」と話した。

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