おさかな学習会でマサバの解剖に挑む親子ら
地元の海に生息する生き物に親しむ「おさかな学習会」が7月27日、釜石市上中島町の中妻公民館(小山田富美子館長)で開かれた。学校が長期休みになった子どもたちに楽しんでもらおうと、公民館事業として実施し3回目。親子連れら15人ほどが生き物に触れたり、魚を解剖したりとさまざまな体験をした。
講師は、同市平田の釜石キャンパスで学ぶ岩手大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの加賀谷康太さん(4年)をリーダーにした学生5人。箱崎町桑ノ浜地区の定置網に入ったマサバを取り上げ、名前の由来や特徴を紹介した後、子どもたちと一緒に解剖に挑んだ。
参加者は学生のサポートを受けながら解剖に取り組む
ピンセットやはさみを使って身を切り開いて肝臓や心臓など、さまざまな部位を取り出した。“ふにゃふにゃ”な内臓らしきものがつながって出てきて、学生らは「幽門垂(ゆうもんすい)という消化器官。人間にはない、魚だけが持っている特徴」と解説した。胃袋が“パンパン”に膨らんでいるものが多く、はさみで切り込みを入れてみるとカタクチイワシと見られるものがビッシリ。「めっちゃ、食べてる。メタボサバだ」と食物網を感じる場面もあった。
脊椎動物の頭の骨の中にあるが、取り出すのにコツがいるという耳石。大きさ1ミリほどのマサバの耳石を見事に取り出した加賀谷さんは「平衡を保つ働きがある器官で、魚も音を振動で受け取る。顕微鏡で見ると、年齢が分かるよ」と子どもたちの興味をそそった。刺激された参加者がイシモチを解剖すると、耳石がポロリ。「おー、(イシモチの耳石は)初めて見た。研究できる。ちょうだい」と、子ども以上に気持ちを高ぶらせた。
マサバを解剖したりトビウオに触れたりして観察を楽しむ
夢中になる子どもの姿に講師役の学生も笑みをこぼす
アイナメ、ウマヅラハギ、ウニ、タコ、ヒトデ、ヤドカリ…。タッチプールには学生らが釜石の海で捕まえた生き物が放たれ、子どもたちが楽しそうに触れ合った。鈴木楓さん(11)は「いろんな魚がいることを知った。初めての解剖も楽しかった。サバは目がガラスみたいですごいと思った」と学びを広げた。
タッチプールで笑顔を広げる子どもたち
学習会は、学生らによる地域活動「移動水族館ちょこっとかまいSEA(シー)!」のプログラムの一つ。同館内に26日まで3つの水槽を並べ、研究や調査用に集めたボラ、ヨロイメバル、ムラソイ、トゲクリガニなど約15種を紹介。身近にある生き物の多様性を見せながら岩大、釜石キャンパスの取り組みを発信する機会にした。
多様な海の生き物を水槽で展示した移動水族館
涼しげに泳ぐ魚たちに大人たちは癒やされる
加賀谷さんは「地域の水産を盛り上げたい。魚に興味関心を持ち、好きになってくれる人が増えたらうれしい」と期待。大学の講師陣は三陸の漁師とのツテもあり、「バイトしながら漁業体験したり、魚を分けてもらったり、味わったり、船にも乗れる。さまざまな経験ができるのが魅力。釣りもできるし、魚、水産が好きで仕方ない人はここで一緒に研究しましょう」と仲間入りを求めていた。
魚の特徴を解説する学生リーダーの加賀谷康太さん(左から2人目)
魚の解剖体験などが行われた学習会の参加者
中妻公民館で開催中の「海のいきもの図書展」
同館では催しに合わせ、「海のいきもの図書展」を8月10日まで開催中。魚が出てくる絵本や海に住んでいる生き物図鑑など市立図書館所蔵の約50冊が並ぶ。本の貸し出しは不可。土・日曜を除く午前8時半~午後5時15分までの開館時間中に、その場で自由に手に取って楽しめる。