ドライスーツを着用して救命艇の乗組員になりきる中高生
国内外の中高生が集い、海の安全や海洋環境を考えるスプリングキャンプが3月下旬に釜石市鵜住居町の根浜海岸で行われた。地元岩手県や釜石地域をはじめ、宮城県や佐賀県など日本各地、ニュージーランドなどから32人が参加。変化する海や自然環境を踏まえ、それらへの向き合い方や命を守る技術を体験的に学んだ。
日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で、一般社団法人根浜MIND(マインド)と一般社団法人Atrantic Pacific Japan=APJ(アトランティック・パシフィック・ジャパン)の共催。3月25~29日まで5日間の日程で、海での安心・安全を確保する基礎知識や技術を学んだり、廃プラスチックを使ったものづくり、東日本大震災後のまちづくりを住民に聞くワークショップ、漁業体験などが行われた。
水難救助の心構えを説明するロビン・ジェンキンスCEO(右)
27日は4グループに分かれて活動した。同海岸では水難救助のワークショップがあり、講師を務めたのはAPJの本部・英国の非政府組織(NGO)APのロビン・ジェンキンスCEO(49)。日本と同じ島国の英国に根付く「ボート・レスキュー(BR)」のシステムを進化、普及するため救命艇の提供や乗組員の育成を行っていることを紹介した。
APは2016年に震災の被災地支援で同海岸に英国式の救命艇を提供している。その救命艇の装備や機能の説明を受けた後、参加者は乗組員が使うロープの結び方を実践したり、ドライスーツを着用したりした。ジェンキンスCEOは「近年の気候変動により海の環境が変化、溺水事故も増えている。事故を減らすためには教育、命を守るスキルが大事。APではこれまでに600人以上を訓練したが、将来的にもっと多くの人をトレーニングしたい。ぜひ参加を」と呼びかけた。
水難救助のワークショップ。ロープ結びの習得は海の安全の基本
同海岸にある観光施設根浜シーサイド・レストハウスでは、プラスチックリサイクルに関するワークショップを開催。釜石市内を拠点に再生可能エネルギーの普及や自然と調和した電気の自立供給ができるオフグリットな暮らしの実証実験に取り組む一般社団法人ユナイテッドグリーンの山田周生さんが講師を務めた。プラスチックごみによる海洋汚染について課題提起後、プラごみを再生するオランダ発祥のプロジェクト「プレシャスプラスチック」を紹介。参加者は、山田さん自作の加工用機械を使い、ペットボトルキャップをコースターに再生する体験も行いながら、プラごみの減量や再利用の大切さに理解を深めた。
海洋汚染を学んで廃プラスチックでものづくりをするワークショップ
ペットボトルキャップをコースターに再生する活動を体験した
ニュージーランド・クライストチャーチ市から参加したミリー・ジェルステッドさん(16)は「人を助ける活動に興味を持っている。未来について似たような考え、視点を持つ人と触れ合えて楽しい。さまざまな活動が積み重なって、人や未来のためにできることを見つけることができる」と意義を見いだす。初来日で、文化の違いに興味津々。根浜の風景も気に入った様子だった。
APJなどは19年夏に同海岸で同様のキャンプを実施。20、21年はコロナ禍でオンライン交流にした。昨年夏に現地開催を再開し、釜石高2年の八幡伊吹さんはサマーキャンプに続いて2回目の参加。「日本とは違った考え方の外国人や多様な人と関わることで固定概念をなくし、いろんな考えを取り入れられる。泊まり込みというのも非現実的を味わえる。とても充実している」と明るい笑顔を見せた。
根浜海岸の安全を守る救命艇
根浜MINDでは夏場を中心に、救命艇を使った子ども対象の海の安全教室を実施。同海岸海水浴場の開設期間中の監視活動なども行っており、今年も継続する。