被災した根浜海岸の松林や植生の再生を願い、イベントに参加した地元住民ら
釜石市鵜住居町の根浜海岸に広がっていた海岸林の再生を目指した植栽イベントが21日、同海岸の旅館・宝来館で開かれ、40人が育苗ポッド400個にハマヒルガオとハマエンドウの種をまいた。苗は参加者らが育て、秋に海岸の砂地に移植する。
地元住民などで組織する根浜海岸林再生実行委員会(前川昭七会長)が主催。震災犠牲者に黙とうしたあと、前川会長は「根浜にマツが植えられて87年ほど。苗を育て植林しようとしているが、立派になるには80年かかる。長い時間をかけてもマツや植物を育てていこう」と呼び掛けた。
防潮堤がなかった時代の片岸町まで延長2キロにわたった広い砂浜、大勢の海水浴客など「根浜の今昔」が映像で紹介され、宝来館女将の岩崎昭子さん(61)、前川会長ら4人がコメントを添えた。
ドローンで撮影した現在の根浜の姿も動画で紹介された。根浜ハマボウフウ研究会の佐々木虎男会長(79)は、防潮林として人工的に造られた松林の歴史を語った。
松原と海浜植物の復活に取り組む陸前高田市のNPO高田松原を守る会の4人も参加。千田勝治副理事長(69)は「住田町に残された高田松原のマツボックリから採取した種子から育てた苗木を3年計画で移植し、2年目の今年も3800本を植える予定。砂が少なくなり、養浜、海浜植物の復活には課題が残る」と報告した。
海浜植物の復活を支援している県立大総合政策学部の島田直明准教授(植生学、環境生態学)は、根浜海岸の植生再生ついて「根浜の堤防を震災前と同じ高さの5・6メートルで復旧し、自分たちの住居は高台(標高20メートル)に移した住民には、根浜の景観を将来に残そうという強い思い入れがある」などと語った。
種まき作業に取り組んだ参加者はそれぞれ2種、数個のポッドを持ち帰った。高台に造成された新しい住宅地から参加した3人の女性はそれぞれ6個以上を受け持った。佐々木虎男会長の妻絹子さん(73)は、「どちらも震災以前から海岸で見慣れていたが、苗を作るのは初めて。心配はある。大切な預かりものだから気を付けて育てたい」と大事そうにポッドを抱えた。
「日本の白砂青松100選」にも選ばれた根浜海岸には、震災からマツ233本や、ケヤキ、ニセアカシアなど250本が免れた。その復興へ、住民や県は「根浜由来」のマツを育てている。島田准教授によると、根浜周辺の海浜植物は13種が確認されている。
(復興釜石新聞 2018年3月28日発行 第676号より)
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