三陸の海「今」と「これから」 釜石で「いわて水産アカデミー」研修交流会 漁業者ら共有


2026/10/15
釜石新聞NewS #産業・経済

漁業関係者らが海洋環境の変化と対策を考える研修交流会

漁業関係者らが海洋環境の変化と対策を考える研修交流会

 
 岩手県内の漁業現場で即戦力となる人材を育てる「いわて水産アカデミー」(同アカデミー運営協議会主催)の研修交流会が8日、釜石市天神町の市役所で開かれた。研修生11人のほか、アカデミー修了生、研修を受け入れる漁業者、協議会員ら約40人が参加。漁場となる三陸の海の「今」と「これから」に理解を深め、変化に対応した取り組みを考え共有する機会にした。
 
 同アカデミーは岩手県、県内の漁業関係団体などが連携し、2019年に開講。8年目を迎え、修了した約50人が各地の海で漁業者として活躍している。情報交換の場ともなる研修交流会を沿岸各地の持ち回りで開催しており、釜石では2回目。
 
 三陸の海は海水温の上昇や漁業資源の減少、漁場・漁期の変化など、気候変動によるものと考えられるさまざまな影響が続く。海を糧とする漁業者は不安定な経営を余儀なくされ、担い手を受け入れる環境へ厳しさももたらす状況。「今」を知るため、三陸沖の海洋環境に関する調査研究に取り組む国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)主任研究員の美山透さん(専門は海洋物理学)を講師に迎え、基調講演を行った。
 
基調講演で三陸沖の海洋状況を解説する美山透さん(左の写真)

基調講演で三陸沖の海洋状況を解説する美山透さん(左の写真)

 
 テーマは「三陸の海を読み解く~気候変動がもたらす影響と最新の予測」。三陸の海は親潮(北から来る冷たい流れ。栄養が多く、魚や海藻を育む)、黒潮(南から来る暖かな流れ。栄養は少ない)、津軽暖流(日本海から津軽海峡を抜けてくる暖かい流れ)という3つの流れが出合うことで豊かな漁場となった。日本近海の海面水温は100年の長期変化で見ると平均で1~2度上昇しているが、「近年は表面だけでなく、海の中も暖まっている」と美山さん。25、26年の夏に三陸沖を調査した結果を交え、海洋環境変動の要因を解説した。
 
三陸の海で起きていることや今後の見通しに関心を持ち聴講

三陸の海で起きていることや今後の見通しに関心を持ち聴講

 
 キーワードは「スーパーエルニーニョ」「黒潮大蛇行」「海洋熱波」。海水温の上昇は地球温暖化による「ゆっくりとした底上げ」に加え、海洋熱波(ある海域の過去​の平年値を大幅に上回る水温が5日以上続く現象)が同時に起こることで「上乗せ」されているという。
 
 さらに、親潮の勢いが著しく弱く、黒潮が極端に北上。一因となる黒潮大蛇行(日本の太平洋側を流れる海流が南に大きく湾曲する)は長引いたものの、「26年6月中旬頃に完全終了と見られる」と説明した。太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続くエルニーニョ現象も「過去のパターンではなく、おきて破り」の様相。研究者としても困惑する状況があり、「温暖化で自然のリズムが崩れてしまったのではないか」と指摘した。
 
 「三陸の海では普通ではないことが起こっている。暖かい海流の影響は続くだろう」と、改めて強調した美山さん。研究・調査のほか、海洋情報サイト「黒潮親潮ウォッチ」で黒潮流路の変化とその予測について情報発信を行っていて、JAMSTECなどさまざまな機関が提供する情報サイトを天気予報と同じように使い分けながら海況を予測し「備える」ことを勧めた。
 
変化する三陸の海と養殖業への影響を説明する山口正希さん

変化する三陸の海と養殖業への影響を説明する山口正希さん

 
 岩手県水産技術センター増養殖部の山口正希部長は、高水温化に対応した養殖の取り組みについて話題を提供。ホタテやマガキなどの貝類、ワカメ、コンブなどの海藻類の養殖はともに厳しい状況が続いており、それに代わるものとして貝類ではアサリ、ヨーロッパヒラガキ、ムラサキイガイ(ムール貝)、海藻類ではワカメ生産の回復に向けた品種改良や作業の効率化、省力化などの研究を進めていることを紹介した。
 
 意見交換では、修了生や漁業者らが漁に出て感じていることを伝え合った。高水温化や海洋環境の変化に対する受け止めは共通。大船渡市三陸町越喜来でホタテ養殖に携わる修了生は「自然にはあらがえず、どう対応するかが重要」と話し、稚貝をロープに結びつける「耳吊(づ)り」と呼ばれる作業の時期を春から秋に変えてみるといった挑戦を紹介した。宮古市重茂で海藻養殖に取り組む漁業者は天然コンブを確保する難しさを吐露。工夫として養殖コンブから種をとる生産の動きを知らせた。
 
漁業者が現場で感じていることや工夫していることを情報交換

漁業者が現場で感じていることや工夫していることを情報交換

 
 釜石で研修する三上朗央さん(49)は、平田の尾崎白浜でホタテ養殖の作業に携わっていることもあり、先輩漁師たちが話した工夫点に関心を寄せた。唐丹町の海で各種の養殖やイカ釣りの遊漁船事業に取り組む藤原和貴さん(28)は「先輩たちに教わりながら、のびのびと仕事をさせてもらっている。ムール貝養殖という新しい挑戦にも関わることができ、学びになる。作業の改善点や伸ばしていけることを自分なりに考え、将来に生かせたらいい」と充実した表情で話した。

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