ボランティアで包丁研ぎ 堺工科高(大阪)定時制生徒
ボランティアで刃物を研ぐ堺工科高定時制の生徒たち
大阪府立堺工科高(堺市)定時制の生徒たちが27、28の両日、釜石市の復興住宅や仮設住宅を訪れ、ボランティアで住民の包丁などを研いだ。東日本大震災から5年余りが経過。支援活動で同校がこれまで被災地に届けてきた包丁などを研ぎ直し、被災者の生活再建に少しでも役に立てば、という願いを込めた。ピカピカになった刃物を手にした住民らは「これで少し、明るい気持ちで生活できます」と笑顔で感謝していた。
刃物作りは堺市の伝統産業の一つ。同校定時制は2005年から「堺学」を開講し、生徒らが刃物づくりを学んでいる。震災が起きた11年以降は部活動の一つとして「東北支援プロジェクト」を立ち上げ、生徒が講座で作ったステンレス製の万能包丁約300本を、家庭科で使う包丁が津波で流された小中学校に贈ってきた。釜石市には12年に102丁が贈られている。
被災者に笑顔届ける 釜石の復興住宅、仮設住宅で活動
今回は堺学で習得した技術を生かし、被災地で包丁など刃物を研ぐことを計画。生徒3人のほか、伝統工芸士で堺学の講師も務める味岡知行さん(72)が2人の弟子を伴い手弁当で参加した。宮城県名取市、気仙沼市で活動した後、釜石へ。27日は大町1号復興住宅、28日は鵜住居町の第2D仮設住宅で活動。包丁のほか鎌などを持ち込む人もあり、合わせて110本もの刃物を無料で研いだ。
3年の東島虎司(たけし)さん(17)は電車で1時間半もかけて通学。「さまざまな進路を考えていますが、好きな刃物関係の仕事に就ければ」と技術を磨く。ボランティア活動が好きで、「包丁を研ぐことで笑顔になってもらえれば」と願う。
大町の復興住宅で2丁の包丁を預けた丸木啓子さん(67)は「これで刺し身もつくれます。本当にありがたい」と感謝。「津波で砥石(といし)も流され、切れない包丁を使っていた。高校生と聞き、驚きました」と笑顔を見せた。
ピカピカになった包丁を笑顔で受け取る住民=大町1号復興住宅
東前町で被災し、甲子町松倉の仮設住宅から大町の復興住宅に移った田代宰子さん(76)はピカピカになった包丁を手に、「魚関係の仕事をしたこともあり、切れない包丁が情けなかった。いい気持ち。本当に大助かり」と声を弾ませた。
同校は同じ堺学で取り組む線香作りの技術を生かし、販売実習の益金を義援金として釜石市に贈るなどの活動も継続している。進路指導主事の保田光徳教諭(56)は「被災地に笑顔が増えた。こちらの方が元気や勇気をもらっている」とボランティア活動の継続を誓う。
(復興釜石新聞 2016年7月30日発行 第508号より)
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