命を守る避難訓練へ〜検討専門委員会設置、齋藤さん(岩手大名誉教授)危機管理アドバイザーへ
地域の実態に即した避難訓練について話し合う専門委員会
釜石市は5日、効果的な津波避難訓練の在り方について話し合おうと、市防災会議に「命を守る避難訓練検討専門委員会」を設置し、市役所で初会合を開いた。市内の自主防災組織や漁協、福祉関係者ら約30人が出席し、委員長に片岸町自主防災会の山﨑長也会長、副委員長には松原町自主防災会の柴田渥事務局長が就任。二度と津波による犠牲者を出さないため、各地域の実態に即した訓練について意見を交わした。
委員会を前に、地域防災の専門家として岩手大名誉教授の齋藤徳美さん(71)に市防災・危機管理アドバイザーを委嘱した。齋藤さんは地下計測学・地域防災学を専門とし、地震・火山・津波の研究と津波被災地の復興に関する研究に携わっている。鵜住居地区防災センターの津波被災調査委員長として、調査の取りまとめと提言に尽力。市の震災前後の状況を理解しており、今後の実効性、即応性のある防災体制と危機管理体制の対応能力の向上について、専門的立場から指導、助言する。任期は2018年7月4日までの、2年間。
防災危機管理アドバイザーに就任した齋藤徳美さん(右)
会合では、同委員会アドバイザーも務める齋藤さんが「命を守る避難訓練の必要性」と題して講話。三陸沿岸部での過去の津波被害や対策について話し、「やれるだけのことはやってきたが、いつかまた必ず津波は襲来する。『避難のみが生命を守る』に尽きる。行政職員と住民双方の防災意識、防災力を底上げすることが必要」と訴えた。
市が20日に予定する津波を想定した避難訓練について説明。全市民の参加を目指しているが、消防団関係者からは「団員の多くが仕事を掛け持ちし、平日の訓練では会社を休む必要がある。被災して地域を離れている人もいる。多くの参加を期待するなら休日に行ってほしい」と声が上がった。
福祉関係者は高齢者や障害者など要支援者の避難行動の難しさを指摘。漁協関係者は「海上では震度5の地震も気付かない。小型船へ地震を知らせる防災無線を半島部に数カ所設置してくれると助かる」と要望した。
箱崎町自主防災会の荒屋正明会長は「避難所となる集会所が再建できておらず、避難場所がない。今回の津波が来なかった人は避難する必要がないと考えている人も多い。住民より工事関係者が多いので、そういう人が参加できるようにした方がいいのでは」と提案。尾崎白浜婦人消防協力隊の佐々木淳子隊長は「避難訓練をしてすぐに解散しているが、炊き出し練習や消火訓練も併せて行ってはどうか」とアイデアを出した。
齋藤さんは「従来の発想では多くの犠牲者を出した震災と同じ結果になる。思い切った取り組みが必要。『日本一安全なまち釜石』にするために、市民総出の避難訓練を行い、課題を掘り起こし、議論し、見直し続けることが大切」と助言した。
野田武則市長は「誰一人として被災しない、犠牲にならないまちをつくっていくため、今を生きる人が助かる、次につながる訓練にしたい」と協力を求めた。
委員会は今後も定期的に開き、将来的に避難計画に反映させたい考え。次回は9月を予定し、20日に行う訓練の結果を踏まえて意見を交わす。
(復興釜石新聞 2016年7月9日発行 第502号より)
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