仕分け作業が絆つなぐ、移行期迎えた桜木町仮設団地〜栃木から今も届く支援物資


2016/06/03
復興釜石新聞アーカイブ #地域

届いた野菜を手分けして箱詰めする桜木町仮設団地の住民ら

届いた野菜を手分けして箱詰めする桜木町仮設団地の住民ら

 

 東日本大震災から5年がたち、釜石市では東部地区などで整備中の復興公営住宅の完成が相次ぎ、仮設住宅からの引っ越しがこれから本格化する。仮設住宅の集約も始まり、被災した人たちの住環境が大きく変わる時期を迎えており、桜木町仮設団地でも来月以降、新住宅への入居などで退去者が増える見込み。そんな中、同団地に月に一度届けられる支援物資の仕分け作業が26日にあり、住民らはこれまでつないだ絆を生かした連携プレーで作業に取り組んだ。

 

 ワゴン車いっぱいに積み込まれた大根や雪菜、シュンギク、トマト、甘夏……。栃木県鹿沼市のリサイクルショップ「飛行船」(桶田正信社長)が震災直後から釜石や大槌の仮設団地などに届けている支援物資で、今回で109便になる。野菜は自社農場で採れたものや地元農家の差し入れ、果物などは全国の支援者から寄せられたもの。同団地には2013年春ごろから届けられるようになった。

 

 この日は楽しみにしていた同団地の住民、近くで暮らすみなし住宅の住民ら約20人が談話室前の広場に集合。届いた野菜や果物の取り分け作業を分担し、希望のあった41世帯分の物資を箱に詰めた。

 

作業を終え、笑顔を見せる飛行船関係者と仮設住宅住民ら

作業を終え、笑顔を見せる飛行船関係者と仮設住宅住民ら

 

 最大約110世帯あった同団地は昨年北側の約50戸が撤去され、現在は60戸に約50世帯が暮らす。山本理悦子自治会長によると、同団地から新しい住宅に移り住むのは8月までに10世帯ほどが予定しているという。一方、同団地は「拠点集約地」となる見通しで、仮設団地の集約により新しい住民の入居も見込まれる。

 

 今回が、これまで参加していた住民の転居が始まる前の最後の作業。来月初めに大町の復興住宅に移る70代の女性は「月に一度の贈り物が楽しみで、本当にありがたかった。普段あまり外に出なくとも、この日に集まって顔を合わせる人もいて交流も楽しめた。つながったものがなくなるのかなと、寂しさもある」と名残惜しそうだった。

 

 物資を届けた同社の桶田博信専務(37)は「この物資支援活動をレクリエーションの一つに感じてもらえれば」と願う。昨年9月に関東などで発生した記録的な大雨で鹿沼市も大きな浸水被害がありながら活動を続けており、「お互いさま。だからこそ頑張れる」と博信専務。「必要とされる限り続ける。コミュニケーションの場として活用してもらえたら、いい」と、移行期の被災地に通い続ける思いを話した。

 

 山本自治会長は「長く続けることは簡単じゃない。離れていても見守る人がいて、心をつなぐことができるのはうれしいこと」と感謝。今後も届く物資の仕分け作業には、「せっかくつないだ絆だから大切にしたい」と、同団地を離れた住民も参加できるようにするという。

 

(復興釜石新聞 2016年5月28日発行 第490号より)

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