最後まで全力プレー 甲子園に爽やかな風〜釜石大敗 ベスト8進出ならず
八回表の釜石のピンチ、伝令役の菊池主将(右)がマウンドに走ると、岩間投手ら内野陣に笑顔が広がる
第88回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で初戦を突破した釜石(岩手)は25日、2回戦で滋賀学園(滋賀)に1―9で敗れ、ベスト8進出はならなかった。頼みのエース岩間大投手(3年)の制球が乱れ、初回に2点、二回に1点、四回は3点を失うなど序盤から主導権を握られた。攻めては五回の1得点にとどまった。大敗に終わったものの、釜高ナインは最後まで走攻守に全力で、はつらつとしたプレーを披露。震災の逆境を乗り越えて臨んだ甲子園の晴れ舞台に、爽やかな風を吹かせた。(学年は新年度)=4面に関連記事
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接戦に持ち込み、後半に勝負をかけたい釜石だったが、先発岩間は立ち上がりから制球が定まらない。失策から走者を許し、連続安打と中犠飛でいきなり2点を失った。リズムを取り戻せないまま二回、四回にも連打を浴び、失点を重ねた。中でも3番後藤に二塁打2本を含む5安打、4番馬越には本塁打を含む3安打と主軸を抑えることができなかった。攻めては五回に新沼康大(2年)の右中間二塁打から2死一、三塁とし、大尻悠矢(2年)の左前打で1点を返すにとどまった。
九回裏2死、最後の打席に入った岩間大投手が捕飛に終わりゲームセット。釜石ナインは唇をかみ、滋賀学園の校歌を聞いた。足取りも重く三塁側のアルプススタンド前に整列し、応援団に向かって深々と頭を下げた。
「何もできなかった。打たれるとは思ったが、守りでミスが出た。粘れればと思っていたが、流れをつかめなかった。私自身の試合に対する気持ちの作り方が足りなかった」。インタビュールームで佐々木偉彦監督(32)は肩を落として、そう答えた。
試合直前に選手に見せて士気を高めるメッセージ動画をこの日も見せたが、「もう1回ピークをつくるのは難しかった」。
「(小豆島との)初戦は話題性が大きかったが、今度は野球そのものが問われる」(佐々木監督)と気を引き締めて臨んだ2回戦。19安打を浴び、9失点と完敗に終わった。しかし釜石ナインは最後まで笑顔を絶やさず、野球を楽しんだ。
そこには、「たくさんの期待を背負い、子どもたちにはつらい時期もあったと思うが、甲子園では伸び伸びと野球を楽しんでほしい」という佐々木監督の願いもあった。
象徴的だったのは、八回のピンチ。菊池智哉主将が全力で伝令に走ると、マウンドに集まった内野陣に笑顔が広がった。新沼康大一塁手が「投げさせてくれ」と冗談交じりに言うと、「オレも」「オレも」となったという。岩間投手がボールを渡すことはなかったが、笑顔で落ち着きを取り戻した。
最後までベンチで声を出し続けた菊池主将は「悔しい結果となったが、釜石らしい全力野球は見せることができた。チーム全体が成長し、夏には甲子園に戻ってきたい」と誓った。
(復興釜石新聞 2016年3月30日発行 第474号より)
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