市内最大級の復興住宅自治会、入居開始から1年 上中島2期に設立〜難しいコミュニティづくり、”大世帯”の問題も浮き彫り
設立総会に続き交流を深める上中島2期復興住宅の住民ら
釜石市上中島町の上中島2期復興公営住宅に12日、住民自治会が設立された。4棟の156戸に155世帯、313人が暮らす市内最大級の災害公営住宅。市内で被災したほぼ全域から被災者が入居してほぼ1年。約10カ月の準備期間を経て、やっと自治会発足にこぎ着けた。今後、市街中心部の東部地区などに復興住宅の完成が相次ぐ市は「モデルケースに」と期待を寄せるが、設立総会では早速、”大所帯”ならではのさまざまな課題も浮き彫りとなった。
同住宅内にある中妻地区生活応援センターで開かれた設立総会には委任状を含め142人が出席。野田武則市長も駆け付け、「被災者一人一人が復興の歩みを実感できるよう取り組みたい」と決意を述べた。
自治会規約を決めた後、会長には大和田泰佑さん(72)を選出。大和田さんは「みんなで知恵を出し合い、互いに顔の見える関係をつくりたい」と協力を求めた。金銭管理が難しいことから、当面は会費を徴収しないことも確認した。
上中島2期復興住宅自治会の会長に就任し、あいさつする大和田泰佑さん(右から2人目)
同住宅の入居が始まったのは昨年3月。南は平田、北は鵜住居まで市内のほぼ全域にわたる被災者のほか、建設場所にあったアパートの住民も入居するなど、さまざまな境遇の人たちが集まって暮らし始めた。7月から住民交流会を重ね自治会設立を目指した。
市内では同住宅を含め、野田、平田、上中島1期、日向の5カ所で自治会が組織された。今後は東部地区の14カ所に相次いで復興住宅が完成する。今回の市内最大級の復興住宅自治会設立について、市地域づくり推進課の見世健一課長は「自立への流れをどう導くか考える必要があり、準備に十分時間をかけてきた。今後の参考になれば」と期待する。
しかし、設立総会では新しいコミュニティーづくりをめぐるさまざまな問題も噴出。「立派な住宅に入って幸せだが、隣にどんな人が住んでいるのか分からず、友達付き合いができない」「掃除当番の方法が棟によって違い戸惑う」「仮設住宅とは違い、集会所が使いづらい」など不満の声が相次いだ。
桜木町仮設団地の自治会長も務めた大和田さんは「これだけの大所帯なら問題が出るのは当たり前。新しいコミュニティーづくりは簡単ではない。孤独死などが出ないよう、住みやすい団地にしたい」と思いを語った。
(復興釜石新聞 2016年2月17日発行 第462号より)
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