カラフル・マグネットで外壁彩る〜仮設住宅に愛着を、アーティスト日比野克彦さん企画


2015/09/30
復興釜石新聞アーカイブ #地域

仮設住宅の前で記念撮影

ハートのマグネットで彩った仮設住宅の前で記念撮影するイベント参加者

 

 仮設団地に住む1人の女子高校生の思いが形に――。仮設住宅を「家」として愛着を持って暮らせたらと、釜石市の中妻町仮設団地(昭和園)に住む寺崎幸季さん(釜石高2年)が声を上げ実現したイベントが20日、同団地と昭和園クラブハウスで開かれた。寺崎さんが協力を求めたアーティストの日比野克彦さんら、市内外の”寺崎応援団”が全面的に支援し、ハートマークをあしらったカラフルなマグネットシートで団地の外壁を彩った。

 

 クラブハウス内では、デザインを考え、タイル状のマグネットシートにハートや文字などの形に切り抜いたシールを貼り付けるワークショップが行われた。同団地や近隣住民などが参加し、完成したマグネットは住宅の壁に飾り付けた。

 

 日比野さんは2012年から釜石の仮設建築物の壁を色とりどりのマグネットで演出する活動を始め、青葉公園商店街(大只越町)と中妻、平田の仮設団地を住民らと装飾した。その活動を鮮明に記憶していた寺崎さんは、「仮設」を「家」と呼べる雰囲気を作りたいと、日比野さんに協力してもらうためコンタクトを試みた。寺崎さんの思いを支え続ける釜石市の一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の伊藤聡代表は今年5月、面識のあった日比野さんが釜石を訪れた際、寺崎さんを日比野さんに引き合わせた。話を聞いた日比野さんは、ナビゲーターを務める東京のFMラジオ局J―WAVEの震災復興支援番組と連動し、今回のイベント「ハートトゥーハートフェス イン釜石」を企画した。

 

 8月には仙台市で、ハートをデザインしたマグネットを作ってもらうワークショップを行い、釜石の仮設団地のために1千枚もの作品が製作された。寺崎さんの思いに共感した全国の支援者も協力し、合わせて6千枚が集まった。

 

 寺崎さんは「全国の人たちの『頑張れ』という気持ちが、この団地に集まったと思うとすごくうれしい。マグネットが団地住民の仲間意識を生むきっかけになれば」と願った。

 

 イベントでは栗ご飯、サンマつみれ汁など秋の味覚のお振る舞いや尾崎青友会の虎舞の他、レミオロメンの活動を休止しソロ活動中の藤巻亮太さんの弾き語りライブもあり、ヒット曲「粉雪」などで会場が大きな感動に包まれた。同団地に住む菊池テル子さん(76)は「壁のマグネットを見るとにぎやかで明るい気分になる。歌も聴けて楽しかった。(高校生の発案は)素晴らしい」と顔をほころばせた。

 

 日比野さんは「寺崎さんの発信、行動力は同じような思いを抱える同世代の若者を刺激し、新たなものを生む可能性がある。思い(イメージ)があれば、それを共有する人たちが現れ形に結びつく」と実感を込めた。

 

寺崎幸季さんと日比野克彦さん

寺崎幸季さん(右)の思いに応えた日比野克彦さん。仮設団地住民の思い出づくりに大きな力を貸した

 

 震災前は「釜石が嫌いだった」と話す寺崎さん。震災を機に多くの人と出会い釜石の魅力を発見し、地域のために何かをする喜び、人との温かいつながりを感じた。寺崎さんの行動は復興に携わる周りの大人たちにもパワーを与えている。

 

(復興釜石新聞 2015年9月26日発行 第422号より)

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