「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」公開〜幕末の操業初期の姿に注目、鉄の歴史館


2021/01/20
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

溶解した鉄が流れ出る高炉の前での作業風景=「湯口前働之図」

溶解した鉄が流れ出る高炉の前での作業風景=「湯口前働之図」

 

 日本近代製鉄の原点となった釜石市の橋野、大橋両鉄鉱山の操業を記録した絵図絵巻「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図(しほんりょうてっこうざんおやまうちならびにこうろのず)」2巻が8、9の両日、大平町の市立鉄の歴史館で公開された。昨年11月、日本製鉄から同市に寄贈され、初の一般公開。1974(昭和49)年に県指定文化財となったもので、幕末の操業初期の設備、製造工程などが色鮮やかに描かれている。

 

 「設備編」は幅27センチ、長さ869センチ。19図(大橋3、橋野16)が収録されており、両鉄鉱山の鳥瞰(ちょうかん)図、高炉やフイゴ、水車などの構造が描かれる。鳥瞰図は高炉場のほか採掘場、運搬路を山中の高所から俯瞰(ふかん)して描かれ、高炉場内の設備や建物、各採掘場の位置関係が見てとれる。高炉は断面図や平面図もあり、詳細な構造を知ることができる。

 

 「作業編」は幅26センチ、長さ606センチ。10図が収録され、鉄鉱石の採掘から運搬、高炉の操業、出荷まで一連の工程が描かれる。作業員の表情、動きも生き生きとしていて、当時の鉱山労働の様子が伝わってくる。

 

 見学した甲子町の伊藤雅子さん(61)は「パンフレットなどでは見たことがあるが、本物は重々しい感じ。人力の作業は大変だったろう。製鉄の歴史の古さを感じる」と話した。

 

鉄の歴史館で行われた絵巻の一般公開

鉄の歴史館で行われた絵巻の一般公開

 

 作業の様子や鳥瞰図は盛岡藩お抱えの絵師、設備図面は高炉作業に従事していた技師が藩への業務報告として描いたと見られ、内容から1861~64(文久元~元治元)年作と推測される。かつては盛岡藩主南部家が所蔵し、後に富士製鉄に寄贈された。これまで釜石製鉄所で保管されてきたが、橋野鉄鉱山世界遺産登録5周年の昨年、市に寄贈された。

 

 市世界遺産課の森一欽課長補佐は「橋野に残る高炉の石組みだけではイメージしにくい製鉄の現場、高炉の構造がよく分かる。絵巻のおかげで、当時のまま残されていることが証明された。近代製鉄を知る上で鍵になる資料といえる」と価値を示す。

 

 市は今後、12月1日の「鉄の記念日」前後など年1回程度の公開を予定する。

復興釜石新聞

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