ウメの実 近年にない不作、降水量の少なさ影響〜釜石地方梅栽培研究会集荷「来年に向け また一から」


2020/07/13
復興釜石新聞アーカイブ #地域

会員が持ち寄った青梅を観察。大船渡農業改良普及センターの職員から来年に向けてのアドバイスも

会員が持ち寄った青梅を観察。大船渡農業改良普及センターの職員から来年に向けてのアドバイスも

 

 梅酒製造に使うウメの実の品質向上などを目指し、生産者らが組織する釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長、24会員)は6月29日、2020年度総会と集荷会を釜石市栗林町の栗橋地区基幹集落センターで開いた。今年のウメの実は降雨量の少なさが影響し、近年にない不作。地元酒造会社、浜千鳥(新里進社長)に提供する量は、最終的に1トン程度と見込まれる。

 

 総会には12人が出席。前川会長(74)は「自然とうまく付き合いながらの栽培は、つくづく大変なこと。来年に向け、また一から頑張っていこう」と呼び掛けた。

 

 事務局を務める浜千鳥によると、昨年の青梅集荷実績は4060キロ(前年対比160・5%)で、出荷者は19人(うち会員16人)。前年産の青梅を使った梅酒の出荷量は約1万1千本(720ミリリットル入り)だった。

 

 本年度は計4回の集荷会、剪(せん)定や病害防除を学ぶ栽培講習会、会員圃(ほ)場の見学などを計画。現在、ほぼ廃棄されている梅酒製造後のウメの実(漬梅)の活用法を探るため、漬ける前後の実に含まれるクエン酸量の分析を県工業技術センターに依頼することも承認した。

 

 同社の漬梅は、5月に開店した魚河岸テラスのジェラート店で梅酒ジェラートに使われているほか、食品加工会社麻生が漬物への活用を研究中。道の駅釜石仙人峠で無料配布され、消費者から返ってきたアンケートでは、ジャムや肉料理への応用例もあるという。

 

 会員からは「クエン酸の健康効果をアピールし、商品開発を目指しては」「漬梅の商品化が増えれば、実の買い取り価格も上げられるのでは」などの意見が出た。

 

 今年の青梅の集荷は6月22日から始まり、この日が3回目だったが、持ち寄った会員は2人で、量は計140キロにとどまった。会員らによると、今年は暖冬の影響で開花が早まったが、遅霜など低温被害はなく、順調に実が付いた。ところが、成長期に入る5月から約1カ月間、雨がほとんど降らず、極度の乾燥で多くの実が落ちてしまった。水分不足は粒の大きさ、張りにも影響するという。

 

 甲子町洞泉の佐々木耕太郎さん(72)は複数品種の約50本を栽培するが、収量は例年の3分の1。「収穫直前に降ったひょうで傷ついたり落ちたりした実もあり、ダブルのダメージ」と肩を落とす。

 

 浜千鳥の梅酒製造のため、地元産ウメの一括集荷が行われるようになって10年。遊休農地の利活用、生産者の出荷先確保など農業振興につながる要素は大きいが、安定供給を維持するのは難しい。同社の奥村康太郎杜氏(39)は「釜石・大槌地区の収穫能力の7割、約4トンが毎年供給されると理想。講習会や新植の成果にも期待したい」と話す。

 

 昨年収穫されたウメで製造された梅酒は、6月18日から販売されている。

 

(復興釜石新聞 2020年7月4日発行 第893号より)

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