台風被災の釜石に勇気の祭り〜尾崎神社の大みこし復活、曳き船中止も盛り上がる


2019/10/28
復興釜石新聞アーカイブ #地域 #観光

お色直し後初の渡御に繰り出した尾崎神社の六角大みこし

お色直し後初の渡御に繰り出した尾崎神社の六角大みこし

 

 釜石市浜町の尾崎神社と桜木町の日本製鉄釜石製鉄所山神社の合同祭「釜石まつり」(同実行委主催)は18日から3日間にわたって開催された。19日に予定されていた釜石湾内での「曳き船まつり」は雨のため中止となったが、天候が回復した最終日の20日は待望のみこし渡御を実施。1週間前の台風19号豪雨で浸水被害に見舞われた中心市街地をご神体を乗せたみこしが練り歩き、災害復旧に追われる市民らを元気づけた。

 

 20日の渡御行列には両神社と神楽や虎舞、鹿踊りの奉納団体、一般参加の各種芸能団体合わせて約1100人(13団体)が参加。鈴子町で合同祭の神事を行った後、中心市街地を走る県道釜石港線を進み、魚河岸の魚市場までにぎやかな行列を繰り広げた。

 

 中でも異彩を放ったのが、尾崎神社の六角大みこし。300年以上の歴史を誇る同みこしは一昨年、70年ぶりに修復され、今回の渡御が一般への初お披露目となった。漆を塗り直し、金具を新調するなどしたみこしは、秋の日差しを受け一層輝きを増した。沿道に詰めかけた見物客らは目の前を通るみこしに手を合わせ、震災や台風被害からの復興、家内安全、商売繁盛などを願い、祈りをささげた。

 

みこしを見つめ手を合わせる沿道の見物客

みこしを見つめ手を合わせる沿道の見物客

 

 大町から只越町にかけてのおまつり広場では、各団体が演舞を披露。行列の到着前には、盛岡市のさんさ踊りチーム、山形大学の花笠サークル、東京・浅草で行われるサンバコンテストで最多優勝しているトップダンサーらが、自慢の舞、ダンスで祭りを盛り上げた。

 

 天神町の野崎富男さん(81)は、なかなか目にする機会のない他地域の芸能に「ベリーグッド!すごいね。(躍動感あふれる踊りを見ると)こっちも若返る」と感嘆の声。釜石まつりは毎年見ているといい、「人口が減っているので、こういう祭りでまちが活気づけば」と願った。

 

華やかな衣装とダンスで魅了した浅草のサンバチーム

華やかな衣装とダンスで魅了した浅草のサンバチーム

 

 今年の曳き船まつりには、震災後最多の21隻が参加予定だったが、台風19号の影響で前日までに11隻に減少。それも当日の悪天候による中止で出船はかなわなかった。震災復興完遂まであと少しという段階で、台風による大きな被害を受けた釜石市。ラグビーワールドカップ(W杯)釜石第2戦の中止、釜石まつり参加予定団体の取り止めのほか、影響は各方面に及んでいる。

 

 背後の山から流れ出た水が低地にたまり、広い範囲で浸水した只越町。地元只越虎舞のメンバーは台風接近に伴い、山車の保管庫前に土のうを積むなどして対策。水が引いた後は泥かき作業に追われた。メンバーの岩崎健一さん(55)は苦労を乗り越え迎えた祭りに「曳き船がないのが残念だったが、行列や演舞で少しでも地域の人たちに力を与えられたら。震災で内陸に引っ越した人たちも祭りには帰ってくる。やっぱり楽しみにしているんだと思う」と古里の良さを口にした。

 

 みこし渡御が行われた20日の人出は主催者発表で約1万人に上った。

 

(復興釜石新聞 2019年10月23日発行 第835号より)

 

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