あんべ光俊さん企画 思い出の校歌 高らかに〜第2部は復興祈念コンサート


2019/08/19
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

現在の日向グラウンドの場所にあった「鵜住居中」の校歌を歌う同窓生ら

現在の日向グラウンドの場所にあった「鵜住居中」の校歌を歌う同窓生ら

 

よみがえる心のふるさと、17小・中・高の旋律響く

 

 釜石市出身のシンガーソングライターあんべ光俊さんがプロデュースする東日本大震災復興祈念コンサート「ふるさとはかまいし」(同実行委主催)が4日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。閉校になった市内の学校の校歌を同窓生らが歌う1部、あんべさんが釜石ゆかりの音楽仲間とオーケストラ演奏で届ける2部と、古里への感謝が込められたプログラムを延べ約720人が楽しんだ。

 

 午前の1部「思い出の校歌コンサート」には86人が出演。昭和から平成にかけ学校統合などで閉校した17小・中・高の校歌が披露された。歌う前には時代を感じさせる校舎写真も映し出され、出演者が在籍した当時の思い出を発表。代々歌い継がれた校歌は各校出身者にとってまさに心の古里で、高らかな歌声が会場に響いた。

 

 釜石鉱山学園出身の橋本(旧姓・佐々木)秀子さん(71)=東京都小平市=は、同窓のあんべさん、大橋小・中出身者らと声を重ねた。「朝礼時、全員で『明るい心、良い言葉、真心こもった行い』と斉唱してから校歌を歌ったのが思い出される」と懐かしみ、「どこの学校も、くろがね、五葉山、太平洋など釜石らしい言葉が入り、釜石人の精神が歌詞に表れている」と実感を込めた。

 

 最多の同窓生が集った鵜住居中の歌唱を応援団の手ぶりで盛り上げた徳増初子さん(68)は「何十年ぶりかで会う同級生も。校歌は忘れかけていても少し聞けばよみがえる。ついでにあの頃に帰ってしまう」と、今はなき学びやに思いをはせた。

 

 最後は全員で「ふるさと」を大合唱。県小学校長会で県内の校歌を集めた経験を持ち、同コンサート実現に協力した太田代政男さんは「校歌は年を取れば取るほど、大きな生きる力になる」と述べた。

 

復興祈念コンサート 音楽仲間と奏でる“ふるさと愛”、あんべさん「釜石には宝物がたくさん」

 

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

 

 午後の2部は、オーケストラコンサート。1日限りで結成された「碧き風のオーケストラKAMAISHI」は、あんべさんの新旧の音楽仲間で編成。釜石出身のオーボエ奏者池田肇さん、指揮、フルート奏者として釜石の音楽活動をけん引する山﨑眞行さん、山﨑さんの愛弟子で、アマチュアオーケストラ「ムジカプロムナード」の代表を務める瓦田尚さんとオケメンバーなど総勢15人が演奏を担当した。

 

 あんべさんの代表曲「遠野物語」で幕開け。オケ伴奏で自身のさまざまな楽曲を届けた。 釜石南高の先輩ミュージシャン大瀧詠一さんの名曲「君は天然色」「恋するカレン」、釜石ゆかりの作家井上ひさしさん作詞「ひょっこりひょうたん島」は、地元で音楽活動をする小笠原拓生さん、Sachiさん、高橋成弘さんらと一緒に歌った。釜石出身の民謡歌手佐野よりこさんは三味線の弾き語りで「釜石浜唄」を披露。瓦田季子さん、加藤直子さんが踊りで花を添えた。

 

 井上さん作詞の釜石小校歌「いきいき生きる」、あんべさん作詞作曲の釜石中校歌「心に翼」をあんべさんと児童、生徒が合唱。「力は無限大」、「ロングラン」などのアンコールまで全16曲に約600人が酔いしれた。

 

 陸前高田市から訪れた熊谷登代子さん(58)は30年来のファン。あんべさんが釜石市芸文協前会長の岩切潤さんら、自分を支えてくれた故人への思いを述べる姿に「ジーンときた」と目頭を押さえ、「今日は地元の方が多く出演し、いつもとはまた違った雰囲気。あんべさんの曲は歌詞がすごくいい。震災後、被災地を応援してくれるのも力になる」と感謝した。

 

 野田町の紺野節子さん(69)は「演奏中、懐かしい街並みや市民の姿が背景に映され、歌とともに楽しめた。釜中の校歌もあんべさんらしい味が出ている。地元愛を強く感じる構成が良かった」と喜んだ。

 

 あんべさんが新設された市民ホールでコンサートを開くのは初めて。自身の提案で始まった「釜石よいさ」が震災後、若い世代に引き継がれ、昨年30回目を迎えたのを機に「何かでよいさを応援できれば」と、翌日のコンサートを企画。「帰省した釜石出身者がよいさを見る流れで、閉校した母校の校歌を歌って帰るのもいいのでは」と校歌コンサートとの2本立てプログラムを組んだ。

 

 「釜石には音楽に関わる宝物がたくさんある。新しい空間(市民ホール)をみんなで使って元気になっていければ」とあんべさん。

 

(復興釜石新聞 2019年8月7日発行 第814号より)

 

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