祈りのパーク、鎮魂の桜植樹〜「釜石に桜を植える会」震災伝承の決意込め
「安らぎの場に」と願いを込めた「植える会」のメンバーや遺族
東日本大震災で多数の犠牲者を出した釜石市鵜住居町の鵜住居地区防災センター跡地に整備中の追悼施設「釜石祈りのパーク」に22日、犠牲者の鎮魂と悲惨な記憶を乗り越えて生きることの大切さや素晴らしさを感じる場に―との願いを込めて、桜の木が植えられた。被災地に安らぎの場をつくろうと活動する「釜石に桜を植える会」(中川淳会長)が主催。同会メンバーや遺族ら約20人が参加した。
パークを囲む形に盛り土した緑地の斜面に、高さ約4メートルのヤマザクラ3本を植樹。根元に丁寧に土をかぶせ、間もなく訪れる暖かい陽気の中で花開き、震災に思いを寄せる散策路を彩る日を心待ちにした。
枝には、参加者や県内外の支援者の名前を書いた木札を結び付けた。「わすれない」「優しい笑顔があったあの時にタイムスリップしたい」「桜の下で皆が笑顔になれますように」。亡き人への思いや地域の復興を願う言葉もつづられ、震災を後世につなぐ場となることへの願いも込めた。
被災地を見下ろす「祈りのパーク」に鎮魂の桜を植樹
震災で片岸町室浜の実家が被災し、兄夫婦など親族4人を亡くした佐々和代さん(71)は「この場所を訪れることで、心の中にゆとりや和みができると思う。春にすてきな花を咲かせてほしい」と待ち望んだ。
町内の災害公営住宅で共に暮らす妹の光代さん(67)はパーク周辺に整備が進む建物、つながる鉄路、開催が迫るラグビーワールドカップ(W杯)にまちの変化を実感。「三陸鉄道が開通したら、姉と行ったことのない場所へ足を運んでみたい。少しずつでも人が戻り、にぎわいのある地域になればいい」と願った。
同会はパーク内に計18本を植える予定。桜を植える会理事で仙寿院の芝崎惠應住職は「鵜住居のみならず市内全体の犠牲者、遺族の心安らぐ祈りの場になれば」と思いを寄せた。
植樹費用として全国から届けられた寄付金50万円を市に贈呈。野田武則市長は「御霊に手を合わせ祈る、二度と悲劇を起こさない決意―さまざまな思いの込もった場所。寄付した多くの人の気持ちもあり、慰霊しながら大切に守っていく」と受け止めた。
パークには震災犠牲者の芳名板・献花台を備えた慰霊碑のほか、震災の津波の高さを示すモニュメント、市防災市民憲章碑を設ける。中央の慰霊の場は階段で結ばれ、円形の緩やかなスロープに沿ってパーク内を巡ることもできる。スロープの脇には、防災センター跡地を示す碑も設置する。
慰霊碑などモニュメントは完成しており、震災から8年となる3月11日に献花式などを行う。仕上げ舗装、スロープなど一部外構工事が残り、12日から22日は入場を制限。3月末の事業完了を予定する。
(復興釜石新聞 2019年2月27日発行 第769号より)
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