釜石高SSHゼミ、「地歴甲子園」で全国1位〜南部藩虎舞の起源探る、市民を前に研究発表会

復興釜石新聞2019/01/04

研究成果を発表する釜石高高橋ゼミ

研究成果を発表する釜石高高橋ゼミ

 

 第12回全国高校生歴史フォーラム(奈良大学、奈良県主催)で、南部藩の虎舞の起源を探った釜石高の研究グループ「SSH地歴公民(高橋ゼミ)」が「知事賞」を受賞。“地歴甲子園”とも呼ばれる大舞台で、「学長賞」と並ぶ全国1位の栄冠に輝いた。22日、受賞した生徒4人が釜石市大町の情報交流センター1階ラウンジで研究発表会を開き、1年半にわたる探究活動の成果を地元住民らに披露した。

 

 文科省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受ける釜石高は、全校生徒と教職員で探究(ゼミ)活動に取り組み、全教科のうち生徒が興味を持つ分野で、グループごとに自ら設定したテーマを研究する。

 

 今回受賞したメンバーは、いずれも3年の菊池知里さん(遠野東中出身)、多田栞さん(同)、鈴木笙子さん(大平中出身)、佐々木滉士君(釜石中同)。郷土芸能に着目し、「日本には虎がいないのに、なぜ釜石に虎舞があるのか」という素朴な疑問から研究をスタート。数少ない資料や文献を手掛かりに登場人物について調べ、舞が奉納される尾崎神社の宮司や虎舞分布を研究する盛岡大教授から聞き取りも行った。

 

 南部藩の虎舞の由来としては▽鎌倉幕府の命で伊豆から三陸に来た閉伊頼基が、士気を鼓舞するために虎の着ぐるみを着せて踊らせた▽三陸の豪商・前川善兵衛が江戸で近松門左衛門の「国性爺合戦」を見た際、和藤内の虎退治の場面に感動し、故郷に持ち帰った―という口伝が釜石、大槌に残る。

 

 生徒らは調査過程で浮かんだ疑問も探究。虎頭の形状、生態を詳しく表現した踊りから「生きている虎を実際に見たのでは?」と考え、調べた結果、27代南部藩主・南部利直が、カンボジア使節団から徳川家康に献上された虎を拝領し、盛岡城の一角で飼育していたことが分かった。利直は1611年に三陸を襲った〝慶長の大津波〟を受け、沿岸部を視察。後に港や帆船2隻を造り、1隻に「虎丸」と名付けている。航海安全、大漁を祈願する虎舞には、虎と海を結びつけた利直の存在も背景にあった可能性を示した。虎舞がある伊豆地方と三陸との関わりについても考察した。

 

 2011年の東日本大震災以降、沿岸住民らは虎舞で地域の絆を強くし、まちの再生を誓ってきた。「400年前の大津波で、利直が虎の力を借り復興を誓ったのと同じ。虎舞から東日本大震災につながるとは思わなかった」と発表を締めくくった。

 

 これら研究内容は8千字の論文に仕上げ、同フォーラムに応募。釜石高は全国45校73編の応募の中からベスト5となる「優秀賞」に選ばれた。さらに先月、奈良大で行われた受賞5校による発表会では、練習した虎舞の実演も交え、地域の歴史・文化を発信。見事、奈良県知事賞を獲得した。

 

 佐々木君は「正直驚いたが、みんなでやってきたことが評価され、うれしい。研究が行き詰まった時も協力して乗り越えることができた」、弟が平田虎舞に所属する鈴木さんは「歴史が好き。身近な虎舞について調べ、成果を得られたのは大きな経験。虎舞は釜石の象徴であることを改めて感じた」、遠野出身の多田さんは「虎舞は、震災で苦しい体験をした釜石の人たちを勇気づけ、元気にしたと思う。郷土芸能の力を感じる」、菊池さんは「史実と合わない部分も多く、事実だけを突き詰め、論文にまとめる作業は大変だったが、疑問から調べる経験は今後の糧になる」とし、社会科教諭になる夢を膨らませた。

 

 4人を指導した高橋利幸教諭は「生徒オリジナルの視点で、仮説を導き出した切り口が評価されたと考える。限られた時間の中で、本当によく頑張った」と、生徒らの取り組み姿勢をたたえた。

 

 同ゼミの研究成果は、来年2月に市民ホールで行われる虎舞フェスティバル、SS理数探究発表会でも報告される予定。

 

(復興釜石新聞 2018年12月26日発行 第752号より)

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