釜石山岳協会創立60周年、震災乗り越え大きな節目〜五葉山山小屋改修も後押し
釜石市内の登山愛好者らで組織する「釜石山岳協会」(菅原長一郎会長)は25日、同会の創立60周年記念式典と祝賀会を大町のホテルサンルート釜石で開いた。会員と来賓65人が出席。震災を乗り越え迎えた大きな節目に会員の思いもひとしおで、積み上げてきた歴史の重みを感じながら、会のさらなる発展を誓った。
式典で菅原会長は会の活動実績を紹介し、「これからも山のロマンを追い続け、健全な登山活動の啓もうに努めたい」とあいさつ。長年にわたり組織の強化と安全登山、登山技術の普及に尽力した友菊忠男さん(78)=釜石岳友会会長=を功労者として表彰した。
友菊さんは「加入団体が団結し、各種活動を行ってきたことが思い出される。花やパノラマなど山の魅力は尽きない。あと5年ぐらいは五葉山に登りたい」と80代現役に意欲を見せた。
同協会は市内の山岳団体が集まり、1955年に創立。製鉄業の繁栄で、まちの人口がピークとなった頃には約10団体が加盟した。89年に協会体制を再構築。現在はアトラス山岳会(後藤好克会長、27人)、釜石岳友会(友菊忠男会長、25人)、シャモニー山岳同人(菅原長一郎会長、33人)の3団体に個人会員10人を加えた95人が加入する。
長年にわたり、釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる五葉山(標高1351メートル)を中心に活動を展開。毎年4月29日の山開きでは各地から訪れる登山者をサポート、夏山シーズンが終わる11月には登山道と山小屋の清掃活動に励む。熟練者は同山をパトロールする自然保護管理員や遭難救助会員としても活躍する。
昨年から今年にかけては、老朽化が進む山小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」の改修促進協議会(会長=市川滋・同協会顧問)を関係団体と立ち上げ、署名募金活動を実施。3市町で組織する五葉山自然保護協議会(会長=野田武則釜石市長)に多額の寄付を行い、早期改修を求めてきた。
式典に招かれた野田市長は「石楠花荘は改修への設計段階に入った。環境整備を進め、五葉山の素晴らしさを内外に発信していきたい」と協会との連携を願った。
同協会は県山岳協会に役員を派遣し、岩手山の避難小屋管理などにも協力する。各団体は遠征登山を含む積極的な活動で、知識や技能の習得、健康増進、仲間との親睦を図る。3団体の交流登山も行う。
海外の名峰登山も経験してきた菅原会長(77)は「ハードな挑戦も楽しんで登るのも続けてきたが、今の協会員は60代が中心。今後は若い人にどんどん入ってもらい、登山の面白さを伝えるとともに、将来の指導者育成にもつなげていきたい」と新たな目標を見据えた。
2011年の震災で同協会では役員や会員7人が犠牲になった。60周年は本来、15年だったが、諸事情を勘案し記念行事は見送り、7回忌を迎えた本年に開催した。
(復興釜石新聞 2017年11月29日発行 第643号より)
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