釜石を「そばの里」に、地場素材にこだわるメニュー〜製麺業の川喜、そば処「川㐂」開店 野田町の工場を改装
新店舗に夢を描く川端学店長(左)。父實さん、母秀子さん、妻美幸さん(右から)と
釜石市の製麺業、川喜(川端實会長)グループは3日、野田町3丁目に「そば処川㐂家」をオープンした。震災の影響で休業した直営の麺食堂を復活させる形で、場所を移し開業。橋野町和山高原で自社栽培するソバなど県内産の原料にこだわったメニューを提供する。川端会長の長男で、自らソバ栽培を行う川端学店長(45)=カワキ商事社長=は「収量を増やし、釜石のそばの認知度を高めていきたい。夢は『そばの里釜石』」と新店舗からの発信に志を新たにする。
同社は2011年の震災で、定内町の製麺工場の津波被害は無かったものの、物流が途絶えたことにより、首都圏の販路を失う大打撃を受けた。03年から営業してきた食堂「喜庵」が入居する鈴子町のサン・フィッシュ釜石は津波で被災。食堂は閉店せざるを得なかった。
震災後2、3年は売り上げが戻らなかったが、回復に転じたきっかけが、岩手大と共同開発した「いわて南部地粉そば」。独自の殺菌技術で確立した無添加の日持ちする生麺が消費拡大を生み、取引先を増やしていった。15年度の優良ふるさと食品中央コンクール新技術開発部門で農林水産大臣賞(最優秀)を受賞したこともブランド力強化を後押しした。
本業が軌道に乗ってきたことを追い風に、念願だった食堂再開を決意。国や県の補助事業の採択を受け、主力となったそばをメーンにした新たな店を開いた。元の工場を改修した食堂(98平方メートル)は28席で、セルフサービス方式。冷・温のそば、うどんのほか、釜石ラーメンも提供する。名物は標高800メートルの和山高原で栽培するソバを使った「和山もりそば」。一般的な1人前の約3倍、800グラムを800円(税込み)で提供する”8”づくしの一品。喜庵で人気だった、天ぷらを盛った「釜石大皿うどん」(税込み800円)も復活した。
開店初日、にぎわいを見せる店内
開店初日の昼営業には、待ちわびた市内外の客が続々と来店。約80食が出るなど期待の高さをうかがわせた。甲子町の80代の夫婦は和山もりそばを注文。「地元のソバを使っているというので楽しみにしてきた。量が多くてびっくり。おいしいし近いので、今後も通いたい」と大満足。大渡町の鈴子陽一さん(67)は「家族みんな川喜の大ファン。やっぱり一流だと思うよ。サン・フィッシュの店にもよく行っていた。また一通り食べてみたい」と顔をほころばせた。
川喜に県内産の小麦粉などを提供する東日本産業(紫波町)の佐々木徹社長は「ソバ栽培から製粉、製麺、食堂まで手がける川喜さんの取り組みは地元の皆さんの励みにもなるのでは。そばの味もさすがです」と絶賛した。
地粉そばは、そば粉と小麦粉を5対5の割合で使用。自社のソバ農場(11・5ヘクタール)の不足分は県内陸部産で賄う。「挽(ひ)きぐるみ(ソバの殻だけをむき粉にする=全粒粉)で、添加物を使わない生そばとしては国内でも負けない」と自信をのぞかせる川端会長(70)。「安く食べてもらい、地域にご奉仕ができれば」と願う。
川㐂家の営業時間は昼が午前11時半から午後2時半まで、夜は午後5時半から同9時まで。火曜定休。問い合わせは同店(電話0193・27・5811)へ。
(復興釜石新聞 2017年11月8日発行 第637号より)
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