「まちづくり」を女性目線で、起業促すワークショップ 市内外から30人が参加〜小堀さん「怖がらないで」とエール
女性が身近なまちづくりに関わる一歩にしてもらおうと開かれたワークショップ
新しい何かに挑戦したい──との思いを持つ女性らを対象に、「あたしのリノベーション」をテーマにしたお話し会が23日、釜石市内で開かれた。会場となったのは、5月にオープンを控えた上中島町のカフェ。商売経験のないカフェの女性オーナーが開店を決めた思いを語った。空き店舗などの再生(リノベーション)に関わることで身近なまちづくりに興味を持ち、活動している女性は経験談を紹介。自身を見つめ直すワークショップもあった。
お話し会は、より良い釜石実現を目指す「釜石○○(まるまる)会議」から生まれた市民グループ「釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト」(宮崎達也代表)が主催。市内外から約30人が参加した。
これまでは空き店舗が目立つ仲見世通りを再生させ、にぎわいや交流の場をつくるイベントを企画、実施してきたが、同通りに新しい事業を生み出すための活動に方向転換。近く、空き店舗を活用した女性限定のリノベプロジェクトを始める計画で、そのプレイベントとして行われた。
講師には、盛岡市を中心にリノベーションを手掛ける祥薫(じょうくん)カンパニー代表取締役の小堀薫子さん(54)を招いた。本業はキャリアコンサルタントだが、建物の再生、まちづくりに関わることになった経緯などを紹介。「女性は普段から買い物などで街を使っているのに、まちづくりの多くは男性が行っている」と指摘した上で、女性目線のまちづくりへの強い思いを語った。
普段の相談業務などから「何かをしなければと思いながら生活をしている人が多い」と小堀さん。「誰かがやってくれると思わないこと。きっかけは勢い。怖がらないで。あれやこれや考えず、どんどん進め」と激励した。
参加者は5グループに分かれ「世界が狭い。外部の人の考え方を取り入れたい」「仕事を辞めた。次の仕事、何をやるか決める機会にしたい」「やりたいことに挑戦するきっかけに」などリノベーションへの思いを交換。「自分を再認識できた」「とりあえず動く、思いを口に出してみることが大事」「釜石にはすてきな人がいると分かった」などと前向きな声が聞かれた。
山田町の荒川奈津美さん(23)は起業を視野に入れており、「本業にかまけて難しいことだと思っていたが、大事なのは勢いだと学んだ。自分を考え、人と出会うすてきな機会になった」と満足そうだった。
女性の目線で仲見世のリノベーションに挑戦したい宮崎代表は、参加者に積極的な関わりを呼び掛け、「取り組みの延長上に、お店を開く人が出てくれば」と期待。お話し会の開催に協力した市総合政策課の千田典信さん(34)は「まちづくりの方向性に迷いがあり、新しい人たちと新しいことを始めたいと考えた。それが女性目線。まちに新しいものを一緒に生み出したい」と思いを話した。
山崎さん準備着々、5月にカフェオープン、震災で上中島へ
会場を提供したカフェ「ブルーア・シエーロ」は、卸売業の山崎清三商店内にある。同商店は只越町にあったが、震災で被災。現在の場所に移る際、カフェのオーナー山崎鮎子さん(39)の義母が「天然酵母を使ったパンの店をやりたい」と提案し、それに合った建物を2年ほど前に新築した。
お話し会の参加者に提供するスイーツを盛り付ける山崎鮎子さん
しかし、事業を始めようとした矢先、義母が病気になり、昨年1月に他界。山崎さんは卸売業を引き継いだが、義母のもう一つの願いが込められた建物の一部は、使われないままになった。
転機となったのは昨年夏の人材育成塾への参加。中学校教員だったが出産を機に退職した山崎さんにとって、塾は自身を見つめ直す機会になり、さまざまな人との出会いに刺激を受け、以前から興味があったカフェの運営を決意。自家焙煎(ばいせん)コーヒー、天然酵母パンなどを提供する店として、5月21日のオープンに向け準備を進めている。
5月にオープンするカフェ「ブルーア・シエーロ」
「人との縁、つながりが背中を押してくれて、こうして前に進める。経験が増えることは大きな後押しになり、ステップアップになった」と振り返る山崎さん。経営の経験がなく、「本当にできるか不安、怖さもあるが、できるところからやる」と力を込めた。
(復興釜石新聞 2017年4月26日発行 第583号より)
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