方言の力 復興に生かす、民話の世界 観客魅了〜「おらほ弁で昔話を語っぺし」南部弁さみっとin釜石


2017/01/31
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

「金太郎」の歌を漁火の会バージョンのおらほ弁替え歌で楽しませるメンバーら

「金太郎」の歌を漁火の会バージョンのおらほ弁替え歌で楽しませるメンバーら

 

 「おらほ弁で昔話を語っぺし」南部弁さみっとin釜石は21日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。被災地の方言の保存・継承、方言の力を活用した復興への取り組みを支援することで、方言の再興や地域コミュニティー再生につなげる文化庁の事業で、3年目の開催。岩手大が事務局を務める「おらほ弁で語っぺしプロジェクト」が主催した。

 

 釜石で民話を語り伝える漁火の会(須知ナヨ会長)の7人と青森県、盛岡市、遠野市からのゲスト6人が出演。漁火の会は新年にちなんだ「十二支の始まり」の話や釜石、遠野に伝わる民話を地元の方言で語った。釜石の話は「長ぇ長ぇ綱っこ」(両石)、「釜石のお産婆さま」(東前)など4話。同会がこの日初めて披露する演目もあり、約50人の観客は興味をそそられながら物語の世界に引き込まれた。

 

 青森県のゲストは、江戸時代に南部藩の領域で、岩手とは”南部弁仲間”の関係にある「八戸童話会」メンバーと、津軽弁で民話を語る「北の会」メンバーの計4人。それぞれに特徴ある方言で地元の昔話を聞かせた。釜石・遠野の昔話の締めの言葉「どんどはれ」は、八戸では「どっとはれ」、津軽弁では「とっちぱれ」と言うそう。他にも地域独特の言葉が飛び出し、方言の魅力を際立たせた。

 

 北の会の千葉涼子さん(66)=弘前市=は「私たちはとにかく津軽弁が好きで、旅行してもほとんど津軽弁で通している。今回のように方言で他地域の人とつながれるというのもいいですね」と地元の言葉に愛着を見せた。

 

 NHK盛岡放送局のラジオ番組「まじぇ5時」のパーソナリティーを務めるシンガーソングライター田口友善さんは、「クラリネットこわしちゃった」の盛岡弁版を弾き語りで披露。「どうしよう」という歌詞を「なじょするべ」と置き換えるなどユーモアあふれる”なまり歌”で楽しませた。

 

 須知会長(85)のめいで、遠野市で語り部の活動を行う菊池栄子さん(76)は、「まめっこの話」「そば屋のかまり代」などを披露。遠野民話を広める源となった「菊池力松一族」の語り術を見せ、観客を喜ばせた。

 

遠野の昔話語りの名手「菊池力松一族」について話す須知ナヨさん(中左)と菊池栄子さん(中右)

遠野の昔話語りの名手「菊池力松一族」について話す須知ナヨさん(中左)と菊池栄子さん(中右)

 

 このほか観客も一緒に、おらほ弁ラジオ体操(釜石バージョン)で体を動かすなど、全身で方言の素晴らしさを感じた。只越町の復興住宅に暮らす大河内静子さん(65)は「方言は自分も使った覚えがあり懐かしい。初めて聞く話ばかりで面白かった。今は方言や昔話に触れる機会も減ったので貴重な時間だった」と振り返った。

 

(復興釜石新聞 2017年1月25日発行 第557号より)

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