ラグビーW杯想定、テロ対策図上訓練〜国、県、釜石市 連携を確認、初動対応や避難指示


2017/01/25
復興釜石新聞アーカイブ #防災・安全

5班の担当者が張り詰めた表情で業務を進めた

5班の担当者が張り詰めた表情で業務を進めた

 

 2年後の2019年にラグビーワールドカップ(W杯)が開かれる釜石市で18日、「会場でテロが発生した」との想定で図上対応訓練が行われた。国、県、市が連携した訓練は、盛岡市内丸の県庁と釜石市役所を結ぶ形で行われ、釜石からは野田武則市長、市職員、関係機関の連絡員ら90人が参加。凶悪事案に対する初動対応、被害拡大防止へ最善の道筋、連携のあり方を探った。市は今後、災害発生の想定を含め、W杯対応の事前訓練を重ねる。

 

豪雨、津波被害などにも応用

 

 県が主体となった同訓練は、国民保護法に基づく「国民保護共同訓練」の一つとして行われた。国は官邸連絡室など、県は情報連絡室を設置し約150人を投入、市も危機連絡調整会議を設けた。釜石を事態発生地域としたテロ対応訓練は初めてだった。

 

 ラグビーW杯の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)で国際テロ組織による化学剤爆弾の爆発があり、多数の観客などが死傷。関連イベントが開かれる釜石市民ホール(仮称)でも爆弾が発見された―との想定。

 

 重大事件の一報を受けて市は緊急事態連絡室本部(本部長・市長)を設置。職員は大会議室(議場)に集まり、情報、通信・広報、統括、対策、総務の5班を組織、活動を開始した。県、自衛隊、警察、消防などの連絡員も派遣された。

 

 ▽負傷者の搬送と医療措置▽現場周辺住民の避難対応▽逃亡するテロ犯人の捕捉▽有害物質の除染―など各機関の動きや応援体制の要請を確認。訓練は3時間半に及んだ。

 

 県の危機管理アドバイザー越野修三さん(岩手大客員教授)は「初めての訓練にしては良くできた。個々の担当者は役割を理解して動いていた」と釜石市での訓練を評価。課題としては、▽全体像のタイムラインを作成していないため、(刻々と変化する事態に)先行した業務ができなかった▽テロだけでなく、豪雨、津波災害にも対応できる体制にグレードアップを▽見積もり、確認の質を高め、どんなことにも対応できるようにする―などを挙げた。

 

評価者の越野さん(左から2人目)が各部門の動きを注視

評価者の越野さん(左から2人目)が各部門の動きを注視

 

 市の佐々木亨危機管理監は「災害と今回の事態では、(国や県の)指示系統が違う。出された対処方針を実行できるようにしないと…。いろいろ課題はあったが、その解決に向けて、さらに検討したい」と語った。

 

 野田市長は「担当職員は初めての経験にも基礎的な理解は得たようだ。(訓練での)混乱の中、東日本大震災の教訓を思った。犠牲者を出さないよう、訓練に参加させていない職員にも危機意識を広める必要がある」と課題を見据えた。

 

(復興釜石新聞 2017年1月21日発行 第556号より)

 

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