釜石市民劇場「心の復興」へ30回公演〜「小さな幸せの花」被災者と周囲の人々を温かく


2016/11/21
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

悲しみ、哀惜の気持ちを抱えながら、互いの思いが支え合う日常が明るく、淡々と、描かれた

悲しみ、哀惜の気持ちを抱えながら、互いの思いが支え合う日常が明るく、淡々と、描かれた

 

 釜石市民劇場の第30回記念公演、「小さな幸せの花PARTⅡ~Believe~」(同実行委員会主催)は13日、鈴子町のシープラザ遊で上演された。子どもからお年寄りまで幅広い世代の市民が出演。東日本大震災の津波で大切な人を失った悲しみや哀惜の思いが潜む家族の「心の復興」が描かれた。客席には約200人が詰めかけ、悲しみをこらえ淡々と暮らす家族や、その家族を見守る周辺の人々の物語に温かい拍手を送った。

 

 震災で2年間中断したあと、再開してから4回目の公演。照明、音響、舞台装置などに大きな制約を受けながら、関係者と観客、市民の熱意で続いてきた。今回も、JR釜石駅に出入りする列車の汽笛も効果音として生かしながら、2幕9場、約2時間の舞台が繰り広げられた。

 

 ストーリーは前回と同じ家族を中心に展開。アキは震災で夫が行方不明となり、小学生の娘3人を育てながら生活に奮闘している。義父母、弟、夫の同僚や近所の人たちが、母子の日常生活を彩る。夫(父親)への思慕が家族の日々の底流にあり、周囲は静かに見守る。

 

 どこか憎めない空き巣が夫の形見のカメラを盗んだり、アキが体調を崩して入院する”事件”はあるものの、周囲の人々との交流で家族の心に大きな衝撃は残らない。子どもの正直な恋心や、それを好意的に見守る大人たちの気配りも織り交ぜ、「よくある日常」が描かれた。

 

 震災の被災を免れ大町の市営アパートに住む多田和子さん(75)は、初めて市民劇場に足を運んだ。「みんな(演技が)上手。とくに子どもは良かった。震災の物語ではあるが、明るく表現していて楽しめた」と感想を語った。

 

 「学校劇で『グスコーブドリの伝記』(宮沢賢治原作)のネリ役をした」という白山小6年の山陰愛珠さんは、友達などが舞台で演じる姿を初めて目にし、「みんな上手だった。私もやってみたい気持ちになった」と刺激を受けていた。

 

 空き巣役を演じた鬼頭美憲さん(42)=千鳥町=は、佑太君(釜石中2年)と親子仲良く舞台に立った。釜石の初代市長、小野寺有一の物語を描いた第13回公演「やぁやぁ市長」から足掛け18年目の参加。「初めてセリフのない役で、イメージづくりに戸惑った。共演者との出入りのタイミングに気を付けた。仲間の反応が良かったのでホッとした」と満足そうな表情を浮かべた。

 

 主人公のサキ役を演じた小笠原景子さん(32)は「今回は、自分で演出し、場をつくれるキャストが多かった。子どもの集中力には感心した。市民劇場はプロの舞台とは違う。見てくれる多くの人が、自分も参加できるかもしれないと感じてもらえば」と願った。

 

 舞台の幕が開く前に平田裕彌実行委員長と野田武則市長があいさつ。野田市長は「市民劇場はスタッフと観客の市民が一体になって盛り上がる。来年冬に完成を見込む市民ホール(仮称)で上演されるよう願う」と激励した。

 

(復興釜石新聞 2016年11月16日発行 第538号より)

 

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