ニュージーランドー釜石、中学生交流〜ラグビーW杯へ 異文化、復興学び合う
釜石シーウェイブスのNZ出身選手から話を聞く中学生=ラグビーカフェ釜石
ニュージーランド(NZ)南島の都市、クライストチャーチの中学生6人が日本での教育体験プログラムの一環で5、6の両日、釜石市に滞在し、市内の中学生と交流を深めた。ラグビーが盛んで、2011年の大地震からの復興途上であるクライストチャーチ。両市の中学生は、互いのまちの共通点に親しみを覚えながら、異国の生活や文化、復興の現状などを学び合った。
釜石を訪れたのはクライストチャーチの公立中学校、コバム、ケースブルック両校の生徒で、全員が初めての訪日。5日は、市球技場で行われた国体のラグビー競技を釜石中の生徒と一緒に応援観戦。6日は、東日本大震災で被災した大槌町の旧役場を訪れ、町民から津波の体験談などを聞いた後、釜石市の甲子、大平の両中学校で生徒と交流した。互いの学校生活について紹介し合い、書道の体験など日本文化にも触れた。
6日夕方からは、NPO法人かまいしリンク(遠藤ゆりえ理事長)が主催する市内の中・高校生との交流会に臨んだ。会には、釜石シーウェイブスRFCに所属するNZ出身の3選手も招かれた。このうち、ダラス・タタナ選手(25)はケースブルック中の卒業生。3人は釜石でプレーすることになった経緯や異国でのコミュニケーションなどさまざまな質問に答え、中学生の夢を膨らませた。
ラグビー経験があるケースブルック中のベンジャミン・イングリッシュ君(12)は「釜石がこんなにラグビーが盛んだとは。NZの選手が活躍していることにも驚いた。自分は今、バスケットボールをやっているが、海外でやってみたくなった」と刺激を受けた様子。
英語で自己紹介し合う釜石とクライストチャーチの中学生
クライストチャーチの生徒のホームステイ先に協力した大平中3年の佐々木桜子さんは「英語で話ができるか心配だったが、コミュニケーションがとれて良かった。お互い復興途中で大変だけど共に頑張っていけたら。3年後のラグビーW杯にはいろいろな国の人が来るので、たくさん交流したい」と気持ちを高めた。
釜石市は次世代を担う人材育成を目的に、2012年度から市内の中学生をNZに派遣する事業を実施。現地の受け入れをサポートするキウィ・ジェイ・アナ社(クライストチャーチ)が今回の訪日プログラムを提供している。同社の及川孝信代表(盛岡市出身)は「ラグビーと復興をきっかけに両市の子どもたちがさらに交流を深められれば。NZは地方分権国家なので、復興も国ではなく地域が主導している。日本とは全く違う仕組み。そうした部分も、交流を通じて学び合ってほしい」と期待した。
NZの公立学校では世界中から多くの留学生を受け入れているほか、学生たちを広く海外に連れていくことで、真の世界観の醸成を目指している。今回は釜石、盛岡のほか東京や長野を訪れるプログラムで、1日から13日までの日程で、日本の文化、生活、自然などに触れながら理解を深める。
コバム中のライバ・カーンさん(12)は釜石の風土について「小さなまちだが、落ち着いた雰囲気がいい。住民はちょっとシャイだが、とてもやさしい」と好印象。最も心に残ったのは震災のことで、「津波の真実を聞き、とても悲しかった。現地に来て復興へ歩む姿を目の当たりにし、希望が感じられた」と実感を語った。
(復興釜石新聞 2016年10月12日発行 第528号より)
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