「共生」学び考える 釜石商工高生、世代交流と防災で実践「地域の一員として」

高齢者と子どもたちのつなぎ役を担う釜石商工高の生徒(中)
釜石市大平町の岩手県立釜石商工高(小松了校長、生徒160人)は、地域の一員として共生社会について考える取り組みを活発化させている。多世代が交流する機会をつくり出したり、東日本大震災からの復興、防災を子どもたちに伝えるため学びを深めたり。地元の機関や団体、住民、そして学校のサポートを得ながら実戦的に取り組む2つの活動を紹介する。
復興も防災も「一緒に」

遊びながら顔見知りになる関係性づくり=7月14日
一つは、復興防災教育を通した交流活動。高校生が地域と協働して学びながら、他者との関わりや人を尊重する心を育み、広い視野で復興と防災を考える力を養ってもらうのを狙いに、今年度から始めた取り組みだ。全2回実施する計画。機械科、電気電子科、総合情報科の1年生計52人が学区内にある小学校や支援学校、高齢者福祉施設などに出向いて学びを伝えながら触れ合う。
1回目の活動が7月14日にあり、同市平田の平田こども園(小松美香園長、園児61人)には生徒10人が訪れた。初顔合わせということで、テーマは「仲良くなること」。年中、年長児約30人と鬼ごっこやゲームをしながら、とにかく遊びまくった。

園児も高校生も本気で楽しむ鬼ごっこ

引っぱれー!高校生の力に挑む園児たち
生徒とすぐに打ち解けた様子の園児たちは、はしゃぐ声を園舎いっぱいに響かせた。「力強いし、足が速くてすごかった」「明るくて優しかった」「一緒に遊んでくれてうれしかった」と感謝を伝える子も。「また来てね」と待ち望む声も聞かれた。
次回は11月頃に実施する予定で、その時が本番となる。同園での活動リーダー、山口玲さん=総合情報科=は「災害が起きた時に安心して避難行動につなげられることを伝えられたら」と、活動内容を思案。最近は地震による揺れを感じることや注意報などが発令され避難しなければならない状況が続いたことから、防災教育の大切さを改めて感じている。「小さい頃から防災を知るのは難しいと思うが、災害はいつどこで起こるか分からないから、一緒に学んで考える機会にしたい」と意欲を話した。

交流を深めた園児と高校生。秋には一緒に防災学習に取り組む
機械科1年担任の藤本武士教諭は「高校生が地域と関わりながら成長し、学びを伝えながら防災への意識を高める機会にしてほしい。“教える”ことの勉強にもなるだろう。人の前に立って話をする場面はそう多くないから、この機会に体験し、将来の就職や進路にもつなげてほしい」と見守る。
この活動は、同園にとってもメリットがある。海が近くにあり、最大クラスの津波想定では防潮堤が壊れた場合に浸水する区域に入っている。防災訓練は地震・津波のほか、火災避難を想定して毎月実施。「集まる」「逃げる」という行動を繰り返し教えているが、小松園長は「目線の近い高校生に教えてもらえたら、もっと関心を持って聞くはず」と想像する。人口減少が続く地域では幼保、小中高が防災面でも関わり合うことが必要と考えており、「この触れ合いが自然な交流を生み出し、その結果、いざいという時の助け合いにつながれば」と期待を込める。
地域も人も「笑顔をつなげたい」

釜石商工高生が企画運営を担当した「平田つながるカフェ」=8月1日
もう一つは、多世代交流の場の企画運営を担うボランティア活動。行政、社会福祉法人、地域住民が連携して定期開催する「平田つながるカフェ」に関わることで、地域理解の促進やコミュニケーション力の向上などを目的にする。生徒有志によるボランティア団体「PEACE(ぴーす)~笑顔と笑いを届ける」を立ち上げ、2025年度からカフェに協力。今年度は5月に校内で参加者を募り、手をあげた1~3年の生徒計18人が市や法人関係者、住民サポーターらと3回ほど打ち合わせをしながら準備してきた。
つながるカフェは8月1日、上平田ニュータウン集会所で開かれた。42回目の今回、高校生が挑戦したのは、高齢者と子どもの“ふれあい交流”の場づくり。世代を超えて楽しめるよう、ヨーヨー釣りやスーパーボールすくい、折り紙などの遊びを用意したほか、焼きそばやかき氷など食も提供した。

高校生が提供したのは遊びと食を絡めた“おもてなし”

命中してもしなくても楽しい!笑顔が並んだスイカ割り
盛り上がったのはスイカ割り。タオルで目隠しし、硬くはない発泡スチロール製の棒を手にした挑戦者たちは、おぼつかない足取りで目標物に向かって進んだ。頼りは、周囲からの「バック、右。違う!左」「OK!行けー」といった声。力いっぱい棒を振り下ろし、見事に命中すると、歓声や拍手が沸き起こった。
参加者、運営側を合わせて60人余りの笑顔が会場に広がった。高橋彩花さん(9)、碧葉ちゃん(6)姉弟は「ちょっと緊張したけど、みんなで一緒にいろんなことができてよかった」と喜び、菊地カヨ子さん(85)は離れて暮らす孫らを思い出しながら「子どもたちに元気をもらえた。こういう楽しい機会をつくってくれた高校生や地域の皆さんに感謝したい」とうれしそうに目を細めた。
高校生もカフェを満喫。2年の佐藤百奏さん=同=は「歳の差がすごかったけど、共通の話題を見つけて、たくさん話ができた。こんな風に人がつながる場はすてきだなって思う」と充実感をにじませた。3代目リーダーで3年の佐藤駈さん=同=は「活動できる時間が限られる中で、何ができるか考えるのは大変だった」と振り返りつつ、「ボランティア活動を通じ、人とのコミュニケーションを学べる機会。人と関わるのが苦手と感じている人も楽しく交流できると思うので、後輩たちにも挑戦してほしい。このチームがずっと続くといい」と期待した。

楽しさを共有した参加者。つながりで地域が活気づく
カフェを支える特別養護老人ホームあいぜんの里(平田)の久保修一副施設長(55)は「商工生との連携は3回目だったが、回を追うごとに主体的に取り組めるようになった。手探りながらも、自分たちで考え、動いてくれた。地域の一員として人と関わり、盛り上げる活動に興味を持ってもらうきっかけになれば」と話した。
ボランティア団体ぴーすは、毎年参加者を募る形で活動をつなげていく予定。地域に向き合い、課題を見つけて解決策を探り実践する機会として、つながるカフェへの協力を続けるほか、独自の取り組みを発案できるような体制づくりも進めたいとしている。

釜石新聞NewS
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