和山へ牛放牧2年目のエム牧場(福島県) 釜石市と連携協定締結 市内に肉の自販機設置も


2026/08/06
釜石新聞NewS #産業・経済

連携協定締結式の後、エム牧場の和山放牧を見学する市職員=7月27日

連携協定締結式の後、エム牧場の和山放牧を見学する市職員=7月27日

 
 昨年度から釜石市の和山牧場で肉用牛の放牧を行っている福島県二本松市のエム牧場(吉田和代表取締役)が、釜石市と地域活性化に向けた連携協定を締結した。同社の和山放牧牛はハンバーグに加工した商品「和の風バーグ」が本年1月から同市のふるさと納税返礼品に登録されるなど、地域振興に貢献している。今後、釜石駅前の商業施設入り口に同放牧牛の食肉自動販売機が設置される予定で、市民や観光客にも広くアピールしていく考えだ。
 
 連携協定締結式は7月27日に橋野町で行われ、吉田代表取締役と小野共市長が協定書に署名した。協定は両者が相互に連携し、和山牧場での牛の放牧事業を通じた地域振興策の展開、市内畜産農家などとの交流機会創出を推進することで、同市の畜産業、地域活性化につなげることを目的とする。連携事項には放牧牛への付加価値の企画、新規特産品やふるさと納税返礼品の企画、畜産業に対する理解促進への取り組みなどを盛り込む。
 
署名した協定書を取り交わしたエム牧場の吉田和代表取締役(左)と釜石市の小野共市長

署名した協定書を取り交わしたエム牧場の吉田和代表取締役(左)と釜石市の小野共市長

 
 エム牧場は肉用牛の繁殖から肥育、精肉加工、販売までを手がける農業生産法人。福島、宮城、岩手3県に15カ所の牧場を所有し、2500頭を飼育する。釜石市は和山牧場の活用について2021年度から同社に情報提供。地元との協議も重ねながら放牧の誘致活動を続けてきた。その結果、昨年度から放牧事業が実現。市が管理する公共牧場地の“立岩”エリアで、5月から10月まで5種25頭を放牧した。
 
昨年5月、エム牧場による初めての放牧=和山牧場立岩エリア

昨年5月、エム牧場による初めての放牧=和山牧場立岩エリア

 
今年5月15日に放牧された牛。見学に訪れた市職員らをお出迎え!?

今年5月15日に放牧された牛。見学に訪れた市職員らをお出迎え!?

 
和山で行うのは「放牧肥育」。“山で肉を仕上げる” のがコンセプト

和山で行うのは「放牧肥育」。“山で肉を仕上げる” のがコンセプト

 
 同社が和山で行うのは「肥育のための放牧」。肉本来のうまみを味わえる赤身肉の需要拡大に応えるため、新たな挑戦の場に和山を選んだ。「広大な山の牧場で青草を食べて駆け回り、伸び伸び自由に育った牛」という付加価値が食肉卸業者や料理人の心をつかみ、昨年度は全25頭が買い取られた。素材にこだわる東京・六本木のスーパーでは「釜石・和山の牛」として写真付きで紹介されたほか、都内のフランス料理店などでもメニューの一つとして提供されたという。
 
 2年目となる本年度は同エリア14ヘクタールに短黒(日本短角牛と黒毛和牛の交配)、ジャー黒(ジャージー牛と黒毛和牛の交配)、褐黒(褐毛和牛と黒毛和牛の交配)の3種20頭を5月に放牧。昨年度の経験を踏まえ、放牧に向く種類に絞った。本年度も10月まで放牧する予定。
 
黒毛と掛け合わせた3種の牛がそろい踏み!

黒毛と掛け合わせた3種の牛がそろい踏み!

 
「好きな時に草を食べ、暑い時には林の中に入って休む。自由な生き方をしている牛たちです」と吉田代表取締役

「好きな時に草を食べ、暑い時には林の中に入って休む。自由な生き方をしている牛たちです」と吉田代表取締役

 
 昨年度は、興味を持つ人たちを何度も現地に案内したという吉田代表取締役。遠くは京都などから足を運ぶ人もいて、「釜石・和山で半年間過ごしたストレスフリーな牛」というストーリー性や“いいとこ取り”の変わった畜種がうけ、「使ってみたいという声をたくさんいただいた」という。今年もすでに購入の予約が入っていて、耳標に予約業者の名前が入った牛も。
 
耳標に買い取り業者の名前が付いた牛も。「信濃屋」は東京のスーパー

耳標に買い取り業者の名前が付いた牛も。「信濃屋」は東京のスーパー

 
 同社は「地元釜石の皆さんにも食べていただきたい」と、今後、釜石駅前の商業施設サン・フィッシュ釜石の入り口に食肉の自動販売機を設置する。和山放牧牛の冷凍精肉(ステーキ用など)やハンバーグを中心に販売予定。同社の自販機は二本松市にもあり、釜石が2カ所目。吉田代表取締役は「釜石にも牛がいることをどんどんアピールしていきたい。放牧頭数をさらに増やすため、人材育成にも取り組んでいければ」と今後の展開に夢を膨らませる。
 
群れで仲良く暮らす牛たち。広々、ほどよい傾斜地もある牧場を駆け健康に育つ

群れで仲良く暮らす牛たち。広々、ほどよい傾斜地もある牧場を駆け健康に育つ

 
和山牧場の現状について水産農林課職員から説明を聞く小野市長(中央)

和山牧場の現状について水産農林課職員から説明を聞く小野市長(中央)

 
 同社の釜石での放牧は後継者不足が課題の地元畜産業に新たな風をもたらし、再興への起爆剤になるものと期待される。小野市長は「和山牧場の活用は市や市議会、地元の栗橋地域振興社の関心の的だった。吉田社長のご英断に心から感謝したい。協定を機に連携を深め、市としても一次産業の振興に一丸となって取り組んでいきたい」と話した。

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