写真でたどる“鉄のまち”の変遷 釜石製鉄所開業140周年記念で鉄の歴史館が企画展


2026/08/04
釜石新聞NewS #観光

鉄の歴史館で開かれている企画展「日本最古の稼働製鉄所『釜石製鉄所』の140年の変遷」

鉄の歴史館で開かれている企画展「日本最古の稼働製鉄所『釜石製鉄所』の140年の変遷」

 
“鉄のまち釜石”の象徴、釜石製鉄所は開業から本年で140周年を迎える。明治時代に稼働を開始した製鉄所は釜石市の玄関口、釜石駅前(鈴子地区)に立地。圧倒的な存在感を放ってきたが、時代の移り変わりとともにその姿も大きく変貌してきた。現代に至るまでの工場と周辺の街並みを写真でたどる企画展が、大平町の市立鉄の歴史館で開かれている。展示は2階会議室で行われ、8月31日まで見学できる。
 
 釜石製鉄所の始まりは、廃業した官営製鉄所の払い下げを受けた田中長兵衛が部下の横山久太郎、地元の製鉄経験者高橋亦助、村井源兵衛らと3トン高炉を建設。試行錯誤の末、1886(明治19)年10月16日、49回目にして製鉄に成功したことに由来する。翌87(同20)年、「釜石鉱山田中製鉄所」が設立され、鈴子に4基、大橋に2基、栗橋に1基の計7基の小高炉が稼働する。94(同27)年には官営時代の高炉を改修し、国内初のコークスを用いる30トン高炉の操業に成功。1903(同36)年には銑鋼一貫体制を確立し、翌04(同37)年には明治期最大の60トン高炉が建設された。
 
140th01

写真左:釜石製鉄所の経営変遷を示すパネル 同右:田中製鉄所時代の製鉄所。上が明治20年代、下が明治40年代

 
大正5年(田中時代)の製鉄所。大渡橋の先に左に折れる鈴子橋が架かり、工場の前には多くの社宅が並ぶ(写真右上)。三の橋の奥には第8高炉が見える(同左上)

大正5年(田中時代)の製鉄所。大渡橋の先に左に折れる鈴子橋が架かり、工場の前には多くの社宅が並ぶ(写真右上)。三の橋の奥には第8高炉が見える(同左上)

 
 企画展では明治20年代からの製鉄所の全景写真を公開する。構内施設の変遷のほか、大正、昭和初期にかけ、鈴子の工場前に社宅が建ち並ぶ様子、周辺に鉱山小学校(大橋は分校)や病院、旅館などが整備されていく過程を見ることができる。現在、商業施設が建つ中番庫地区は湿地帯で、現公共ふ頭の辺りは砂浜が広がる海水浴場だったという。
 
 2度の組織変更を経て、1934(昭和9)年には日本製鉄釜石製鉄所となる。現在地に本事務所が建ったのは41(同16)年。この頃には第8~10の大高炉が稼働し、戦争が始まると軍需工場と化した。太平洋戦争末期の45(同20)年には、2度にわたる艦砲射撃を受け、製鉄所や市街地は壊滅的な被害を受けた。戦後は高炉などの設備復旧が進められ、48(同23)年、第10高炉に火入れ。本格的な操業が再開される。製鉄所の発展で、63(同38)年には人口が9万1千人に達するが、その後の合理化で生産規模が縮小され、89(平成元)年には最後の第1高炉が休止した。
 
昭和15年(日本製鉄時代)の製鉄所。社宅だった場所に製鋼工場が建ち、後に釜石駅前のシンボルとなった5本の煙突が並ぶ(写真右上)。三の橋の背後には第8、第9、第10高炉3基が並ぶ(同左上)

昭和15年(日本製鉄時代)の製鉄所。社宅だった場所に製鋼工場が建ち、後に釜石駅前のシンボルとなった5本の煙突が並ぶ(写真右上)。三の橋の背後には第8、第9、第10高炉3基が並ぶ(同左上)

 
昭和25年(富士製鉄時代)の製鉄所。写真右端中央に現在も使われる本事務所(白い建物)があり、その下には附属病院の建物も見える。左端には釜石線の線路が走る

昭和25年(富士製鉄時代)の製鉄所。写真右端中央に現在も使われる本事務所(白い建物)があり、その下には附属病院の建物も見える。左端には釜石線の線路が走る

 
昭和60年(新日鉄時代)の製鉄所。手前に大渡橋に並行して架かる橋上市場(赤屋根)が見える(写真右上)ほか、三陸鉄道のトラス橋りょうの背後には第1(元第10)高炉と第2(元第8)高炉が見える(同左上)。写真は第2高炉休止時に撮影

昭和60年(新日鉄時代)の製鉄所。手前に大渡橋に並行して架かる橋上市場(赤屋根)が見える(写真右上)ほか、三陸鉄道のトラス橋りょうの背後には第1(元第10)高炉と第2(元第8)高炉が見える(同左上)。写真は第2高炉休止時に撮影

 
 企画展では写真のほか、時代とともに変わる製鉄所構内の施設配置図も展示され、両者を照らし合わせて各時代の製鉄所の姿を知ることができる。写真では1950(昭和25)年の国鉄釜石線全線開通、84(同59)年の三陸鉄道開業で変わる製鉄所周辺の街並みの変化も見て取れる。2011(平成23)年の東日本大震災前後の空撮写真もあり、製鉄所を中心に釜石湾から上中島町に至るエリアを俯瞰(ふかん)できる。
 
平成26年(新日鉄住金時代)に撮影された空撮写真。上中島多目的グラウンドや昭和園グラウンドに仮設住宅が建ち並ぶ。海上には津波で破壊された湾口防波堤の跡が…

平成26年(新日鉄住金時代)に撮影された空撮写真。上中島多目的グラウンドや昭和園グラウンドに仮設住宅が建ち並ぶ。海上には津波で破壊された湾口防波堤の跡が…

 
釜石製鉄所の風景は多くの人たちが描いてきた。写真は最近寄贈された油彩画

釜石製鉄所の風景は多くの人たちが描いてきた。写真は最近寄贈された油彩画

 
 会場には釜石製鉄所をモチーフとした絵画2点、絵はがき2セット、関連する古文書2点も展示する。市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長(鉄の歴史館長)は「今回の企画展では釜石製鉄所の風景の変化にスポットを当てた。昭和の時代を知る市民には懐かしさを感じてもらい、観光客には釜石が鉄のまちであるということを改めて知ってもらえれば」と来館を呼びかける。
 
 鉄の歴史館の開館時間は午前9時から午後5時(最終入館午後4時)。火曜日休館。入館料は大人500円、高校生300円、小中学生150円。

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム


釜石のイベント情報

もっと見る

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス