平和の願い、未来へ―釜石小が伝える艦砲射撃の記憶 オリジナル劇「ヒマワリの誓い」上演

釜石艦砲射撃を題材にした創作劇を披露した釜石小6年生
戦後80年の節目に。あの日、何が起こったのか。命のはかなさ、人々の強さ…知ってほしい―。釜石小(五安城正敏校長、児童66人)の6年生9人は8日、釜石市大町の市民ホールTETTOで「釜石艦砲射撃」を題材にしたオリジナル劇を上演した。児童は戦争体験者から話を聞くなどして80年前を想像し、多くの命を散らせた惨禍の実相から学び、感じ取った思いをせりふにのせて発信。戦争の愚かさ、平和の尊さを訴える姿は観客約150人の大きな拍手を誘った。
劇のタイトルは「ヒマワリの誓い」。物語は釜石艦砲を経験した高齢の男性が回想し、孫ら子どもたちに語りかける場面から始まった。劇中では戦時中の市民の暮らし、1945(昭和20)年7月14日に釜石を襲った1回目の艦砲射撃の状況を再現。同級生を亡くした子どもの心情、一緒に植えたヒマワリに誓う平和への思いなどを盛り込み、約30分の劇にまとめた。

子どもたちが虎舞の練習をする現代の場面からスタート。「その音色が聞こえなくなった時代があってな…」

80年前の釜石を再現した一場面。「戦争ごっこ」で遊ぶ

当時の子どもたちは高台にあった監視所に水を届けに行っていた

「敵機、襲来」。7月14日の艦砲射撃の状況を表現

静寂…変わり果てた街に泣き崩れ、ぼう然とした
劇中、激しい砲撃を受け、一緒に学び遊んでいた友達を突然失った子は「戦争って何なんだよ」「いったい何のために死ななきゃならなかったんだ」「僕たちの街も…こんなの間違いだー」と迫真の演技。変わり果てた街を見つめ、ヒマワリが咲くのを楽しみにしていた亡き友に「きっと平和を取り戻す」と誓った。

「なんで…なんでだよ!」。同級生を亡くした子の心情を熱演
現代の場面に戻り、男性の話から戦争がもたらす惨状を想像し、子どもらは「怖かった」と言葉を絞り出した。最後に「この話を語り継いでいく。私たちは生きる。あの空に向かって真っすぐ咲くヒマワリのように。―――これからは私たちが美しい釜石を作り上げていく。だから、戦争は絶対にしない」と舞台の上から思いを伝えた。

「語り継ぐ」「生きる」と舞台上からメッセージを発信
召集令状を渡す兵隊役や生徒役を担当した畝岡蓮恩さんは「戦時中の話、悲惨さを聞いて『本当にあったことなんだ』と感じた気持ちを込めて演技した。争いは良くないとしっかり伝えられた」と満足げにうなずいた。
釜石艦砲や疎開した経験を持つ同市大只越町の女性(86)は「良く演じてくれた。ちゃんと聞こえるようによく練習したのね。現代の子たちが戦争のことを学び、自分のものにして発信するのはすごい。大事なことで、つないでほしい」と感心していた。
6年生の劇は、戦後80年の節目となった2025年の総合的な学習での取り組み。学校近くの平和女神像の塗り替え作業を手伝いながら平和について考え、戦争の歴史や釜石艦砲については市郷土資料館や市立図書館で資料を調べたり、戦跡・防空壕の見学、戦争体験者からの聞き取りなどをしながら理解を深めた。

学習の様子や感じたことを動画にまとめて紹介した
台本は、担任の佐々木侑香教諭と児童が多くの学びをつなぎ合わせ、せりふの言い回しも考えながら練り上げた。集大成として、昨年10月の学習発表会で披露。「もう一度見たい」「広く市民に見てもらいたい」などの声があり、学校を飛び出した大舞台での公演につながった。
広い空間での演技に「緊張した」と山﨑詩(らら)さん。「戦争はしてはいけない」「平和が大事」ということをしっかり伝えようと、劇中、警戒警報が響く場面での叫び声、家族とのやりとりでのせりふを「より大きく、そしてゆっくり」発するよう心がけた。印象に残る学びは、当時の経験談を聞いたこと。防空壕に入った時は「当時の音が聞こえてきた気がした」。感じたことを思い起こし演じ、学校で発表した時よりも「レベルアップできた」と笑顔を見せた。

6年生に艦砲射撃や戦時中の記憶を伝えた渡邊佐一さん(左)
公演後、ロビーに集まった児童は渡邊佐一さん(90)の姿を探した。小学4年の時に体験した釜石艦砲の記憶を語ってくれて、劇を「絶対、見てほしい」と望んでいたから。駆け寄って「どう?」と反応をうかがった。
渡邊さんは「立派にできた。見ている人にみんなの気持ちが通じたと思うよ」と言って、子どもたちと握手を交わした。「戦後80年」で高まったムードが薄れるのを憂慮する一方、「子どもたちの心の中に私の話がすっとしみ込んでいるだろう」と信じる。そして「何かの機会に振り返ってほしい」と願う。

渡邊さんを囲んで、すがすがしい表情を見せる子どもたち
そうした願いを受け止める6年生。「平和の尊さに向き合い、未来を考え、劇を作り上げた。その思いが後輩に引き継がれ、学校の歴史が積み重なっていくと思う」。渡邊さんを囲んで笑顔の花を咲かせた。

釜石新聞NewS
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