岩手と秋田つなぐ盤上の熱戦 釜石で腕競う「国道107号沿線支部交流将棋大会」
釜石を舞台に熱戦を繰り広げた岩手と秋田の将棋愛好家ら
岩手県と秋田県の将棋愛好者が集う「国道107号沿線支部交流将棋大会」は1日、釜石市鵜住居町の鵜住居公民館で開かれ、参加者が盤上で熱戦を繰り広げた。1994年に始まった大会は26回目。日本将棋連盟釜石支部が主催。東日本大震災やコロナ禍などの影響で中止もあったが、顔を合わせる機会を楽しみに続けており、関係者は「それぞれの県でやり方が違う。学び、競い、腕を磨き合いたい」と語り口も熱い。
国道107号は、岩手・大船渡市を起点とし、秋田・由利本荘市までを結ぶ。「横のつながり」を深めようと、両県で交互に、参加支部の持ち回りで継続。この国道に接続する釜石も仲間に加わり、2003年には戦いの場にもなった。開催地として順番が回ってきても震災の影響で受け入れが難しかったが、21年ぶりに集いの場に手を挙げた。
「国道107号沿線支部交流将棋大会」が釜石で開かれるのは21年ぶり
5人1組の団体戦に、両県から11支部14チームが出場。2ブロックに分かれて1人5局ずつ対戦し、点数制で順位を競った。将棋盤を挟んで向かい合うのは、小学3年生~80代までと幅広い年代。対局が終わると、駒を動かしながら感想を伝え合ったり、白熱する戦いを囲んで見守る光景があちらこちらで見られた。
優勝旗を狙って集う愛好者。静かなる戦いが展開した
幅広い年代が盤面に向かい合う。注目の対局を見つめる姿も
対局後に振り返りながら親睦を深める光景もあった
一関ごきげん支部(岩手)の大将として臨んだ高橋桜子さんは、宮城県登米市の中学1年生。家に将棋盤があったことから始め、「いろんな手を探すのが面白い」とハマって4年ほどになる。同支部に所属し、大人に混じって大会に出場しながら鍛錬中。この日の対局も「序盤からリード。優勢に進められている」と手応えを口にした。結果、同支部は3位に入賞。冷静さをのぞかせつつも「勝つと景品がもらえるのがうれしい」と中学生らしい一面も見せた。
3位に入賞した一関ごきげん支部。高橋桜子さんも活躍
大会長を務めた北上支部(岩手)の軽石初彦支部長(82)は「対局を通じ、学びを深める機会。将棋の楽しみを感じてほしい」と意義を強調する。昨年、岩手初のプロ棋士が誕生したことに触れ、「小山怜央四段の活躍は岩手の誇り。将棋熱が高まる釜石は将棋のまちだ」と力説。意欲あふれる同支部から3チームが出場し、Aチームが5戦全勝で優勝旗を手にした。
熱い戦いを制し優勝旗を手にした北上Aチーム(左側)
終局すると感想戦がスタート。遠野支部(右)は準優勝
小山四段は7月にフリークラスからC級2組への昇級を決め、来年度から順位戦に臨む。それを祝って釜石支部がつくった巾着袋が参加賞として贈られた。震災後の支えや今大会の協力に加え、「過去に出場経験がある小山四段を育ててもらった」と感謝を込めたもので、土橋吉孝支部長(68)は「前回、釜石大会の景品は秋の旬サンマだったが、今の旬は小山怜央」とニヤリと笑った。同支部は4勝1敗の成績だったものの、個人勝ち数の差などで5位だった。
地元釜石チームも対局に集中。右上写真は参加賞の「小山怜央四段巾着袋」
「強い若手の勝負は面白い」。本庄支部(秋田)の真坂政悦支部長(71)は仲間の戦いぶりをじっと見つめた。“西の端”から釜石に乗り込んできたが、台風の影響が残った道中は2カ所の通行止めがあって一苦労。それでも「地震、コロナ、雨にも風にも負けず続けてくれたことに感謝」と県をまたいだ交流を楽しみにする。
ただ、団体戦のため人数の確保が難しくなっていたり、移動距離にためらう支部があってか、参加数が「以前より少ない」と残念がる。「参加数が増えたら」と望む声は他にも聞こえてきて、主催者側は今回107号につながる岩手県内の沿岸支部にも声がけしていて、宮古市からの参加もあった。
秋田vs秋田、強い若手の対局は注目を集めた。左手が本庄支部
若手もベテランも互いに高め合う大会―。来年は由利本荘市で開催する予定。真坂支部長は今回の運営の様子にも目を光らせていて、「参考にしつつ、準備を進めたい」と前を向いていた。
結果は次の通り。
◇団体戦順位①北上支部A(畠山和人さん、高橋英聖さん、菅原大典さん、盾石拓さん、藤原隆幸さん)②遠野支部(中村道典さん、昆隆志さん、米澤祐太さん、小島常明さん、新沼光幸さん)③一関ごきげん支部(高橋桜子さん、千葉大胤さん、小林秀雄さん、横田努さん、吉田拓生さん)
◇個人全勝者/岩泉毅さん(宮古)、畠山和人さん(北上A)、昆隆志さん、米澤祐太さん(遠野)、梅村琴和さん(東和まほろば)、土橋吉孝さん(釜石)、藤原隆幸(北上A)
釜石新聞NewS
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