海から町を見てみよう!釜石中1年生、巡視船で体験航海 海保の仕事 触れて実感
巡視船から港内を見つめる釜石中の生徒。海上保安業務を体験した
釜石中(佐々木一成校長、生徒294人)の1年生88人は8月29日、地域を知る総合的な学習の一環として釜石海上保安部(佐々木篤部長)で業務体験学習を行った。業務内容の説明を受け、救助方法・搬送法に挑戦したほか、実際に巡視船にも搭乗し見学。身近にある海に親しみながら、その安全を守る仕事について理解を深めた。
同校では1年生が釜石について学習中。これまでに製鉄体験、ラグビー、漁業・農業などをテーマに学びを深めてきた。今回は「海のまち」に親しんでもらうのを狙いに、釜石市生涯学習まちづくり出前講座に登録されている同保安部が提供するプログラムを活用。2班に分かれ、さまざまな体験に取り組んだ。
釜石海上保安部で業務内容について説明を受けた
市魚河岸の釜石港湾合同庁舎では、同保安部総務係の半澤朋幸さん(36)が船舶の安全な航行や治安の確保、海の環境保全、災害への備えなど多岐にわたる業務の概要を説明した。船舶だけでなく、情報通信や設計など陸上で行う仕事、航空に携わる仕事も。「海上保安部は警察、消防、パイロット、一般事務、潜水士などさまざまな職種があり、将来の仕事を決める参考にしてほしい」と強調した。
海上保安官の業務もいくつか体験。火災時や有害気体物質が発生している時に呼吸を確保するために使用する「ライフゼム」と呼ばれる空気呼吸器を装着する体験では空気ボンベやハーネス、マスクなどを背負い、身に付けると総重量15キロほどになり、「重たい」「これで作業するのはきつい」などと声を上げた。毛布を使った傷病者の搬送方法、船をつなぎ留めるときに使う「もやい結び」などロープワークも実践。釣り中に海中転落した際のペットボトルやクーラーボックスを利用した救助方法も学んだ。
空気呼吸器の取り扱いについて説明を聞く中学生
海上保安官に教わりながら空気ボンベの装着や搬送方法を実践
海中転落時の救助方法やロープワークにも挑戦した
すぐ目の前にある釜石港に移動。同保安部所属の巡視船きたかみ(650トン)に乗船し航海に繰り出した。船では出入港の作業を見学。主任機関士の大越和弥さん(30)らの案内でガントリークレーンや湾口防波堤など港湾施設を海上から見つめた。船を進める際に灯台や釜石大観音が目印になっていること、コンテナ船や漁船など大小さまざまな船舶が利用していることも実感。令和元年に発生した台風災害の際、断水で孤立した市内半島部に給水支援を行ったことも聞き、保安官の仕事へ関心を高めた。巡視艇きじかぜの放水も見学。生徒は手を振って感謝を伝えていた。
釜石港に停泊する巡視船きたかみで生徒らは航海を体験
「出港用意」と号令をかける体験も(左上写真)。出港の様子も見守った
釜石海保職員の説明を聞きながら湾内を巡った
下村篤弘さんは「船にはいろんな機器があって驚いた。知らなかったことを知る貴重な機会になった」と感想。消防士の父親に憧れを持ち、「将来は人の役に立つ仕事を」と考えていて、海保のことも調べてみるという。嶋田芽衣奈さんが印象に残ったのは空気呼吸器の装着体験で、重さや息苦しさを感じたうえ、船上、海上での活動の大変さを想像。安全、命、自然を守る業務にも触れ、「何かあったら、体験した簡単な救助法を生かしたい」とうなずいた。
巡視艇の放水を見学し、感謝を込めて手を振る場面もあった
海上保安官に質問したり海を守る仕事に関心を示す生徒
同保安部ではこの出前講座のほか、職業体験も受け入れる。「将来なりたい職業」に海上保安官を選択肢の一つとして考えてもらうことが目的。佐々木賢一次長は「少しでも海上保安庁の業務を知ってほしい。海に面した釜石で生活していても海上から港の施設を見る機会はなかなかないと思うので、巡視船に乗って違った視点、立場でまちを観察する面白さも感じてもらえたら」と期待を込めた。
釜石新聞NewS
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