「防災ポリパン」って? 幼い子を持つ母親ら災害時に役立つ知識学ぶ 震災経験の先輩ママが伝授


2024/03/28
釜石新聞NewS #子育て #防災・安全

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

 
 災害時、被災者の命をつなぎ、心身に力を与えるのはやはり食事。限られた食材、調理器具で簡単に作れるメニューは知っておいて損はない。その一つが「ポリパン」。高密度ポリエチレンの袋に材料を入れてゆでるだけでできるパンだ。蒸しパンのようなやわらかい食感、具材を入れれば味のアレンジも可能で、幼い子どもでも食べやすい。釜石市天神町のかまいしこども園子育て支援センターバンビルームが開催したポリパン作り教室を取材した。
 
 同センターの3月のイベント。市保健福祉センター内の調理室で開かれた教室にはセンターを利用する母親4人が参加した。講師を務めたのは同市在住で、一般社団法人ポリパンスマイル協会(梶晶子代表理事)認定のポリパンジュニアマイスター櫻井京子さん(40)。天然酵母を使ったフライパンでのパン作りなども教えている。
 
 ポリパンの材料は強力粉、薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩、卵、牛乳、オリーブオイル。湯せん調理が可能な高密度ポリエチレン袋に2種の粉を同量ずつ入れ、砂糖、塩、ベーキングパウダーを加えて、袋を振ってよく混ぜる。次に、溶いた卵に牛乳とオリーブオイルを加えたものを袋に入れ、さらに混ぜる。卵や牛乳のアレルギーがある場合は水でも代用可能。この日は具材として甘納豆、レーズンが用意され、好みで入れた。材料が混ざったら空気を抜いて袋を閉じる。袋は菜箸につるし、湯を沸かした鍋に入れて、弱火で20分ほどゆでる。時々、袋を動かし、熱が均一に伝わるようにする。
 
粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

 
卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

 
 櫻井さんは「災害時は断水で洗い物ができない場合がある。袋調理なら食器も不要。計量スプーンの代わりにペットボトルキャップ(約大さじ2分の1)も利用可能。最近は計量目盛りのある紙コップも販売されている」などと教えた。この日は、同じ要領で作る簡単“肉じゃが”も作った。肉の代わりにコンビーフを入れ、調味料は麺つゆを使った。
 
 ゆで時間を利用し、講師の櫻井さんは自身の東日本大震災の経験を語った。当時は海岸部の会社に勤務。後輩と避難し津波から逃れた。妊娠初期だった櫻井さんは避難所に身を寄せたが、体調が悪くても自分からは言い出しにくかったという。「困った時に『助けて』と言えるのは大事。声を上げないと、助けたいと思っている人も助けることができない。子育ても同じで1人では限界がある。『受援力』を身に付けて」とアドバイス。
 
 産前産後の母親のサポート活動も行い、2児の母でもある櫻井さん。小学生の子どもが準備したという防災(避難)バッグも見せ、非常持ち出し品や飲料水、非常食など備えの例を説明した。「車に膝掛け、子どもの着替え、お菓子などを常備しておくと、普段はもちろん、災害時にも役立つ。幼い子どもがいる場合はそれ用の準備も必要」と話した。
 
講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

 
震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

 
 ゆで上がったパンは少し試食し、子どもと一緒に食べるのを楽しみに持ち帰った。1歳2カ月の子を持つ沼倉絵梨さん(34)は「ゆでるだけでパンができるのは新たな発見。とても簡単。子どもも食べられそう」と感激。災害時の心配は、やはり子どもの食事。「何を食べさせたら…と不安はある。今日はいろいろ勉強できてありがたかった」と話し、「この機会に防災バッグの中身も再度確認したい」と意識を高めた。
 
時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

 
袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

 
 ポリ袋調理は災害時だけでなく、キャンプなどアウトドア活動でも活躍。講師の櫻井さんは、みそを使った常備食のレシピなども教えた。防災食といっても災害時に特化したものばかりではない。日常の食のアレンジが非常時にも有効であることが分かる教室となった。
 
ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

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