過去最多276人がエントリー 釜石オープンウオータースイミング 根浜の海で泳力競う


2023/08/04
釜石新聞NewS #スポーツ

釜石オープンウオータースイミング2023=根浜海岸、7月30日

釜石オープンウオータースイミング2023=根浜海岸、7月30日

 
 第7回釜石オープンウオータースイミング(OWS)2023根浜(実行委主催)は7月30日、釜石市鵜住居町の根浜海岸特設会場で開かれた。全国から過去最多の276人がエントリー。2016年の岩手国体から同競技が正式種目に採用され、会場地となった同海岸で続けられる大会は、競技環境の良さや地元の支援体制などが選手の心をつかみ、着実に参加者を増やしている。今年も幅広い年代のスイマーが己の目標に挑んだ。
 
 OWSは海など自然水域でタイムを競う長距離泳。国体後の翌17年から地元主導で始まった釜石大会は、2年目から日本水泳連盟(日水連)の認定大会となり、今大会は国内サーキットシリーズ第10戦として行われた。種目は500メートル(小学4~6年)、1キロ(小学生以上)、3キロ(中学生以上)、5キロ(同)。5キロは、男女上位3人に本年度の日本選手権への出場権が与えられる「トライアルの部」も設けられた。
 
新型コロナ対策で中止していた選手を激励するハイタッチも今年は解禁

新型コロナ対策で中止していた選手を激励するハイタッチも今年は解禁

 
スタート地点に向かう選手を家族や仲間が笑顔で送り出す

スタート地点に向かう選手を家族や仲間が笑顔で送り出す

 
 海上に設置したブイでつくる四角形(1周1キロ)周回コースで3キロ、5キロ競技、三角形(1周500メートル)周回コースで500メートル、1キロ競技が行われた。小学3年以上を対象とするOWS検定5級の集団泳もあり、3人がチャレンジした。総合順位と、年代や男女別での順位で1~3位を表彰した。
 
部門ごとに時間をずらしてスタート。波は穏やか

部門ごとに時間をずらしてスタート。波は穏やか

 
3キロ、5キロの部のスタート前準備

3キロ、5キロの部のスタート前準備

 
午前10時台は5キロ男子日本選手権トライアルから順にスタート

午前10時台は5キロ男子日本選手権トライアルから順にスタート

 
 500メートルのトップでゴールしたのは、花巻市の小学6年蛯名勝絆君(11)。2歳から水泳を始め、昨年初挑戦した同大会では2位。今年は「最初から突っ込んだら(後続と)距離が離れたので、後半も楽だった」と戦略勝ち。「来年は1キロに挑戦したい」と意欲を高めた。東日本大震災があった2011年の9月生まれ。震災時、両親は鵜住居町に暮らし、勝絆君は母親のお腹の中にいた。母有美さん(39)は「元気に育ってくれてうれしい。被災し大変だったが、こういう形でまた鵜住居に戻ってこられて幸せ」と喜びをかみしめた。
 
生まれ故郷の鵜住居でOWSに挑む蛯名勝絆君

生まれ故郷の鵜住居でOWSに挑む蛯名勝絆君

 
 実力者がそろう5キロトライアルの部は、ラスト1周の時点で男子トップ集団が10~20秒差の激しい競り合い。混戦を制したのは本県一関市出身、慶應義塾大2年の菊池幹大さん(19)。競泳で鍛えた泳力で大会初参加、初優勝を果たした。「ずっと2番でついていき、ラスト1周で追い越そうと考えていた。最後はきつかったが、誰も前に行かせまいと気合いで押し切った」。国体出場を目指し、今年からOWSに参入。同大会は本県代表選手選考会を兼ねており、「選ばれたら、入賞して岩手県に貢献したい」と話していた。大会後、県水泳連盟は今年の鹿児島国体OWSの代表に男子・菊池さん、女子・辻山小珀さん(東北学院大1年、一関市)を選出した。
 
5キロ男子日本選手権トライアルで初優勝した菊池幹大さん

5キロ男子日本選手権トライアルで初優勝した菊池幹大さん

 
 今大会、最も遠方からの参加は長崎県の高校3年小串優佳さん(17)。今年の国体の同県代表に選出され、強化事業の一環で女子のトライアルに参戦した。昨年は2位。「今年こそ(優勝を)」と臨んだレースは、ラストスパートで大学生選手と競り合うもゴールタッチでミスがあり、わずか0.2秒差で惜しくも優勝を逃した。レース後、悔しさをにじませつつも、「タイムは昨年より3分ほど縮まっている」と自己ベスト更新に手応えを実感。国体の県代表には3年連続で選ばれているが、過去2年は新型コロナの影響や開催池の水質悪化でいずれも競技ができず、今年が国体初レースとなる。「今日の悔しさをばねに入賞を目指して頑張る」と誓った。
 
5キロ女子日本選手権トライアルで2位の小串優佳さん

5キロ女子日本選手権トライアルで2位の小串優佳さん

 
 タイムを競う一方、距離で記録を打ち立てる人も。新潟県小千谷市の星雅文さん(68)は2019年以降に参加した日水連認定大会(サーキットシリーズ)の総完泳距離が、この日の釜石大会(5キロ)で101.7キロに到達。20年はコロナ禍で全大会が中止、21年も2大会のみの開催となる中、地元新潟県の佐渡大会では1.5キロ、3キロ、5キロの3種目完泳を3回(19、22、23年)果たすなどし、100キロ超えの偉業を成し遂げた。
 
この日の大会で5キロを完泳し、19年からの総完泳距離101.7キロを達成した星雅文さん

この日の大会で5キロを完泳し、19年からの総完泳距離101.7キロを達成した星雅文さん

 
 「100キロは1つの目標としてやってきた。達成できほっとした」と星さん。今後、日水連に自己申告し、「100キロスイマーズ」の認定を受ける予定。同制度でこれまで認定されているのは女性2人だけで、星さんが認定されると男性では初となる。星さんは30代から趣味で水泳を始め、自分に合った長距離泳で各地の大会に参加。定年後は平日午前中に3~6キロを泳ぐのが日課。「70歳になると出られない大会もある。次は200キロが目標。地道に100キロ単位で」と生涯現役を描く。
 
花巻東高の水泳部は昨年から釜石大会に参加

花巻東高の水泳部は昨年から釜石大会に参加

 
地元のライフセービングクラブや漁協、海上保安部などが協力し救助体制も整えられた大会

地元のライフセービングクラブや漁協、海上保安部などが協力し救助体制も整えられた大会

 
 大会を主管する県水泳連盟の小田島秀俊会長は「目標とする参加者数300人規模まであと少し。OWSは国体種目になったことで少しずつ知られるようになった。個人競技だけでなく、リレーのような参加しやすい要素も取り入れていければ」と今後の大会の形を模索する。

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