新しい風 釜石の美術集団・サムディ45 「見てもらう喜び」実感 57回展
釜石市民ホールで開かれた「サムディ45」の57回展
釜石市の美術集団「サムディ45」(小野寺浩代表、会員21人)の第57回展は14~16日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。発表の機会を求めて新たに3人が加入したほか、招待作品として若者4人が描く世界を紹介。「見てもらう喜び」を実感する「新しい風」の存在が刺激となり、会員らは創作意欲を高めている。
同グループは、岩手県沿岸部を走る国道45号線沿いの美術愛好家の仲間たちが土曜日(フランス語で「サムディ」)に集まったのが始まり。講師を置かず、絵画、日本画、デザイン、工芸、刺しゅう、写真など多彩な分野の人が個々に創作活動に取り組んでいるのが特徴で、会員は地元釜石のほか、北上、花巻、鹿児島など県内外に広がる。
展示会場には幅広いジャンルの個性豊かな作品が並んだ
作品展には幅広いジャンルの約60点が並んだ。モチーフは地元の山や海、アジサイなど自然の風景、静物、動物、反戦を訴える作品など多様。油彩や水彩、色鉛筆、「押す絵の具」と呼ばれるプッシュカラー、水面に垂らした絵の具で模様を描いて紙に写し取るマーブリング、ビーズを使ったモザイクアートなど用いた技法もさまざまだ。
来場した人たちが多様な表現手法の作品をじっくりと鑑賞
同集団での活動10年目の髙橋稔さん(43)は、フェルトを使った小物づくりを得意とする。勤務先の郵便局で、手作りの展示物で市民に季節感を届けており、「喜ぶ姿が励みになる」と継続。今回もチクチクと針仕事を進め、ゲームキャラクターをかたどった約100個のストラップを出品。「若い人たちにも、ものづくりに興味を持ってもらい、将来的にサムディに入ってもらえたら」と仲間入りを期待した。
新加入の3人は市内の別グループでも活動する。会員の減少で展示会の開催が難しくなっていたところ、サムディの関係者から参加の誘いを受けた。釜石港や岩手山などを題材にした風景画3点を並べた中野カツ子さんは「展示場所を設けてもらい、本当にありがたい。見てもらうといろんな意見が聞こえるが、受け入れることで気づきを得て成長できる。『作品を出さなくっちゃ』と意欲もわく」と明るい笑みを広げた。
新加入した中野カツ子さんの作品「釜石港」「ひょうたん」
招待作品は県内沿岸部の14~26歳の若者たちが描いた5点。カラー筆ペンや水性ボールペンなどを使い、細やかな筆致で描き込んだ作品が目を引いた。「母のふるさと」「おじいさん元気でいだすか(「いますか」の意)」と題名がついた作品は、家族の温かさが伝わってくるよう。「まだ表に出ていない、すてきな作品を見てほしい」と小野寺代表(63)が出展を声がけした。
会場では切り絵の体験会も。細やかな手作業に驚きの声が聞かれた
小野寺代表は「新しい風が吹いた。いろんな人の声を聞いたり、ほかの人の作品を見ることでいい影響がきっと出る」と手応えを得た。次は秋ごろに開かれる市民芸術文化祭への参加。見てもらう喜びを力に、会員それぞれがつくり上げる新たな世界を待ち望んでいた。
釜石新聞NewS
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