魅力いっぱい!大迫の宝を釜石市民に紹介 大迫高生が大償神楽と大型紙芝居を熱演
釜石市の鵜住居公民館で「大償神楽」を披露する大迫高の生徒
花巻市大迫町の大迫高(三田正巳校長、生徒53人)の生徒16人が17日、釜石市を訪れ、地域の伝統芸能「大償(おおつぐない)神楽」や民話を題材にした大型紙芝居を披露した。生徒らが学校で取り組む伝承活動を地元以外で披露するのは初めて。会場となった鵜住居町の鵜住居公民館(松下隆一館長)には地域住民ら約60人が集まり、高校生の熱演に盛んな拍手を送った。
同校の学芸部神楽班と図書委員会で活動する1~3年生が来釜。図書委員らは地元に伝わる約50の民話の中から「とのさまとごちそう」「キツネの念仏」の2話を大型紙芝居で披露した。図書ボランティアとして活動する地域住民から指導を受けた方言で物語を展開。紙芝居の前後には昔ながらの拍子木を打ち鳴らす演出で楽しませた。
大迫に伝わる民話「キツネの念仏」の大型紙芝居
早池峰神楽の一つ「大償神楽」の伝承に取り組む神楽班は、6つある式舞の3番目の舞曲「三番叟(さんばそう)」を披露した。同神楽は早池峰山信仰に由来するとされ、500年以上の歴史を誇る。早池峰神楽(大償、岳)は1976年、国の重要無形民俗文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録された。大迫高の生徒は地元保存会の指導を受け、弟子神楽として2017年から活動する。
式舞「三番叟」を軽やかに舞う高橋悠斗班長
見せ場では観客から拍手が湧き起こった
修験山伏の祈祷の舞が根源とも言われる同神楽。釜石では生で見る機会はほとんどないだけに、観客は舞い手の動きに目がくぎ付けとなった。鵜住居町の植田敬子さん(82)は「自分の出身地の川井村にも神楽があるが、こちらはまた全然違う。高校生、すごいですね。見ているとうきうきして、一緒になって踊りたくなるよう。心の洗濯もした気分」と大感激だった。
10分以上の演目を1人で踊り切った神楽班班長の高橋悠斗さん(2年)は「年明け最初で、体力に自信がない中での舞だったが、自分の力を全部出し切れた」と充実の表情。外の人たちに初めて見てもらう不安もあったが、「大きな拍手やお褒めの言葉をいただき、自分たちのモチベーションも上がった」と今後につながる収穫を得た様子。
同校で神楽をやるため、留学制度を利用して入学した北上市出身の阿部浬歩さん(3年)は今回が最後の舞台。笛で後輩たちの演舞を支え、「(後輩の)成長した姿が見られて良かった」と笑顔を見せた。3年間の活動を振り返り、「舞の習得など練習は大変だったが、神楽を通してあきらめない心が身に付いた。今後の人生にもきっと生かせると思う」と貴重な経験を胸に刻んだ。
紙芝居と神楽の合間には、藤原愛(まな)生徒会長(2年)による大迫町の魅力発信コーナーも。まちの活性化策として、同校が地元のコミュニティー振興会と取り組んだベンチのリニューアルプロジェクトを紹介し、同町への来訪を呼び掛けた。
同校では昨年度から釜石高の生徒による防災出前授業が行われていて、両校の相互交流が進む。大迫高生の釜石訪問は、新型コロナウイルス感染症の影響で昨年度はかなわず、今回が初。鵜住居公民館の後、釜石高に出向き、2年生の前で同様の披露を行った。両校の縁は2020年度に釜石高の副校長を務めた、大迫高の三田校長がつないだ。
釜石新聞NewS
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