釜石市「はたちのつどい」 成人年齢引き下げで式典名称変更 20歳の門出祝う


2023/01/17
釜石新聞NewS #地域

 「はたちのつどい」として開催された成人の日の記念式典=釜石市

「はたちのつどい」として開催された成人の日の記念式典=釜石市

 
 昨年4月に成人年齢が18歳に引き下げられ、初めて迎える「成人の日」。釜石市では、「成人のつどい」として開催してきた式典を「はたちのつどい」と改称し、これまで通り、本年度20歳を迎える人たちを祝う場が設けられた。8日、大町の市民ホールTETTOで開かれた式典には193人が出席。それぞれの道で精進を続ける若者らが人生の節目に誓いを立て、大人としての自覚を新たにした。
 
 式典であいさつした野田武則市長は、幾多の困難を乗り越えてきた釜石人の「不撓(ふとう)不屈の精神」、東日本大震災の教訓を心に刻み、今後の人生を切り開いていくことを期待。人口減少が進む同市に希望をもたらすため、「一人一人、何ができるか考えてほしい。釜石の将来を皆さんと一緒につくっていきたい」と呼び掛けた。
 
 式典運営には前回から、当事者らでつくる実行委が参画。今回は12人の委員が昨年6月から準備を進め、生まれた年から20年間の国内外、釜石の動きをまとめた映像、中高時代の恩師から集めたメッセージ動画を作成し上映した。恒例となった有志による郷土芸能の披露はこれまでの虎舞に加え、新たに神楽が登場した。
 
恩師のビデオメッセージを見ながら中高生時代を懐かしむ

恩師のビデオメッセージを見ながら中高生時代を懐かしむ

 
式典初となった神楽の演舞。東前太神楽の継承メンバーら8人が披露した

式典初となった神楽の演舞。東前太神楽の継承メンバーら8人が披露した

 
虎舞は有志15人で。威勢のいい掛け声と舞で20歳のパワー全開

虎舞は有志15人で。威勢のいい掛け声と舞で20歳のパワー全開

 
 東前太神楽の岩間雄史さん(19)は「20歳の節目に同級生みんなで踊りを披露でき、いい思い出になった」と感謝。現在、東北福祉大(宮城県)に在学中。「卒業したら地元に戻ってきて貢献したい。子どものころから親しんできた郷土芸能や祭りをしっかり引き継ぎ、さらに盛り上げて次世代につないでいけたら」と夢を描いた。
 
 抱負を発表したのは、甲子中出身で常葉大(静岡県)在学の金和樹さん(20)。サッカーで夢をかなえるため進んだ強豪・青森山田高での過酷な日々を振り返り、支えてくれた両親、地元の友人、地域の人たちへ感謝の気持ちを伝えた。プロ選手の目標を胸に抱き、「スポーツを通して釜石に貢献できるよう精進していく。新型コロナなど私たちをとりまく情勢は厳しいが、一人一人が困難に屈せず、たくましく前を向いて歩いていきたい」と決意を述べた。
 
出席者を代表し、抱負を発表した金和樹さん

出席者を代表し、抱負を発表した金和樹さん

 
 高校3年時に新型コロナの流行が始まり、この3年間、さまざまな制限の中で生活してきた若人ら。市外在住者は帰省も難しい状況が続いたため、式典での同級生との再会はいつも以上に大きな喜びに包まれた。フォトスポットでの記念撮影、近況報告や思い出話にたくさんの笑顔が広がった。
 
大平中、釜石中出身者らで記念写真におさまる男性グループ

大平中、釜石中出身者らで記念写真におさまる男性グループ

 
バルーンアートで彩られたフォトスポット。釜石商工会議所青年部が開設した

バルーンアートで彩られたフォトスポット。釜石商工会議所青年部が開設した
 
華やかな振り袖姿で笑顔を輝かせる女性グループ

華やかな振り袖姿で笑顔を輝かせる女性グループ

 
 帝京大(東京都)に通う川前優愛さん(20)は「一人暮らしもあって、自分でやらないといけないことが増えた。大人になっていくのを感じている」と自覚。小学2年時に震災の津波で大槌町の自宅を失い、釜石市に転居。コロナ禍の中、始まった慣れない都会での生活に寂しさを感じたこともあった。多くの苦難を経験し、将来に描く夢は「小学校教諭になる」こと。女手一つで育ててくれた母に深く感謝し、節目の年の新たな一歩を踏み出した。
 
 釜石東中出身の小笠原萌さん(20)は「全然会えていなかった中学の友だちに再会でき、記憶がよみがえってきた。みんな大人になっているのを見られてうれしい」と笑顔。大槌町で被災。家族は無事だったが、家など全て流された。今は尚絅学院大(宮城県)で勉学に励む。「帰るたび、まちも自分も少しずつ成長しているのを実感。震災で助け合いの大切さ、くじけない心を学んだ。乗り越えた自信を糧に、何事にも全力で取り組みたい」と誓った。                                                                                                 
 
 虎舞披露でメンバーを束ねた市内在住の鈴木佑太郎さん(20)は、久しぶりに顔を合わせた友人たちと会話を弾ませ、「何も変わっていない」と一言。式典前、「わくわくする。みんなで釜石を盛り上げたい」と心を躍らせた。2年目に入る建設業の仕事は「覚えることがいっぱい。怒られながら毎日頑張っている」と、一人前を目指して奮闘中。間もなく震災から12年を迎える古里に「人口が少ないので、自分たち若者が引っ張っていかねば」と意を強くした。
 
式典内容の企画などを行った、はたちのつどい実行委のメンバー

式典内容の企画などを行った、はたちのつどい実行委のメンバー

 
 同つどい実行委員の会田茉白さん(20)は上映した映像の編集に携わり、「頑張った結果が見られて良かった」と満足げ。今春、東京のダンスの専門学校を卒業予定。プロダンサーを目指して修行中で、「25歳までにディズニーとかの舞台に立ちたい。レッスンスタジオを持って教えられるようになるのも目標」と未来を見据える。愛娘の晴れ姿に母真里さん(49)は「3姉妹の末っ子。長かった子育ても卒業です」と感慨深げ。夢を追い求める茉白さんを応援し、「意志を貫き、好きな道を進んでいってほしい」と願った。
 
 今年の式典対象者は、2002年4月2日から03年4月1日までに生まれた同市出身者など268人。新型コロナウイルス感染症の影響による直前キャンセルなどもあり、出席者数は過去10年で初めて200人を下回った(オンライン開催の2021年を除く)。

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