W杯から3年「ラグビーのまち釜石」を発信 SW、中学生が交流試合&体験イベント


2022/10/17
釜石新聞NewS #スポーツ

ラグビーW杯釜石開催から3年を記念した2022ラグビッグドリーム。約1300人が観戦

ラグビーW杯釜石開催から3年を記念した2022ラグビッグドリーム。約1300人が観戦

 
 2022ラグビッグドリーム~RWC MEMORIAL~(釜石ラグビッグドリーム実行委主催)は9日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の会場となった同スタジアムで、ジャパンラグビーリーグワン2部の釜石シーウェイブス(SW)RFCと1部の東芝ブレイブルーパス東京が対戦。市内中学校の特設ラグビー部による交流試合も行われた。W杯のレガシー(遺産)継承、台風の影響で中止された「ナミビア対カナダ」の再戦を願い、企画された。
 
 中学生の交流試合は、特設ラグビー部を結成している釜石東中と甲子中の対戦。2週間後に県中総体を控えた両チームにとって力試しの場となった。試合は15分ハーフで行われ、4トライを挙げた釜石東が26-12(前半12-5)で勝利した。3年生を中心に生徒らの強い希望で、数年ぶりにチームを結成した釜石東。黒澤強優主将(3年)は「ボールを手にした一人一人が自信を持って走り抜いたことが勝因」と胸を張った。この日はチームにとって初めての試合。見つかった課題を修正し、最終目標の中総体に挑む。
 
釜石東中、甲子中の特設ラグビー部が対戦した交流試合

釜石東中、甲子中の特設ラグビー部が対戦した交流試合

 
相手ディフェンスを寄せ付けず、インゴールへ走る釜石東の選手(左から2人目)

相手ディフェンスを寄せ付けず、インゴールへ走る釜石東の選手(左から2人目)

 
 市内の現中学生は小学生の時に、同スタジアムで行われたラグビーW杯を観戦した。甲子中特設ラグビー部の悦渕嵩主将(3年)は「W杯が行われた芝生でプレーすることができて光栄。ラグビーは釜石の誇りであり象徴。高校に行っても続けたい。台風でできなかったナミビア対カナダ戦が実現したら仲間と応援に来たい」と願った。
 
 一般来場者がラグビーに親しめる場も設けられた。W杯を機に釜石でも体験機会が増えたストリートラグビーのコーナーは一般社団法人STREET RUGBY ALLIANCE(ストリートラグビーアライアンス、東京都)が開設。幅広い年代がトライを楽しんだ。甲子町の夏目未咲さん(27)は長女梨世ちゃん(4)と体験し、「誰でもできてすごく親しみやすい」と笑顔。W杯や釜石SWの試合にも足を運んでおり、「ラグビーって面白い。地元なのでSWも応援したい」と声を弾ませた。
 
誰でも体験できるストリートラグビーのコーナー

誰でも体験できるストリートラグビーのコーナー

 
子どもたちも笑顔でトライ!「ラグビーって楽しいな」

子どもたちも笑顔でトライ!「ラグビーって楽しいな」

 
 同法人エグゼクティブプロデューサーの出口圭造さんは「釜石は僕らにとっても神聖で特別な場所。来るたびに身が引き締まる思い」と、震災復興、W杯誘致の力を称賛。コロナ禍で同法人の活動も停滞してきたが、「来年のW杯フランス大会に向け、再度ラグビー熱を盛り上げる一助を担えれば。ラグビーの楽しさを感じ、興味を持ってもらえるような場を積極的に提供していきたい」と意気込んだ。
 
 釜石SWとBL東京の試合前には甲子中の生徒が「ハカ」を披露。ラグビーニュージーランド代表(オールブラックス)が国際試合前に見せる先住民マオリの民族舞踊を再現し、両チームを鼓舞した。
 
気合いの入った掛け声とともに甲子中の生徒が披露した「ハカ」

気合いの入った掛け声とともに甲子中の生徒が披露した「ハカ」

 
 釜石SWは前半23分、左ラインアウトモールからつないだCTBヘルダス・ファンデルボルトが相手ディフェンスを突破し初トライ。今季新加入のSOジョシュア・スタンダーのゴールで7-5と逆転したが、前半終了間際に2トライを奪われ、7-19で折り返した。後半、控え選手に次々と交替した釜石は粘り強いディフェンスを続け、相手を1トライに抑えた。アタックはゴール目前のプレーが何度か見られたが、セットプレーのミスやペナルティーなどであと一歩届かず、7-26で敗れた。
 
前半23分、釜石SWのCTBヘルダス・ファンデルボルトが同点のトライ

前半23分、釜石SWのCTBヘルダス・ファンデルボルトが同点のトライ

 
ファンデルボルト(左)は後半も強力な突破でゴールラインに迫った

ファンデルボルト(左)は後半も強力な突破でゴールラインに迫った

 
 釜石SWはプレシーズンマッチ5戦目。格上の1部チームとの試合は3戦目となった。WTB小野航大主将は「コンタクトエリアで劣っている感じはしなかったが、細かい部分で(BL東京の)質は非常に高かった。自分たちとの違いを体で感じられたのは大きい」と収穫を得た様子。須田康夫ヘッドコーチは「ラインスピード、ダブルタックルを意識し、ディフェンスが粘れるようになってきた」。1部チームの接点の激しさ、しつこさを経験し、「プレッシャーの中で、いかに自分たちのゲームができるかが課題」と話した。
 
 ハーフタイムには、市内の中学生が描いた5メートル四方の「釜石の大きな絵」がお披露目された。NPO法人アース・アイデンティティー・プロジェクツ(河原裕子代表、東京都)から同市に「世界一大きな絵」プロジェクトへの参加依頼があり、「復興と世界平和」をテーマに完成させた。
 
虎舞、大観音、ラグビーボールなどが描かれた釜石の大きな絵(右下拡大)。W杯で試合が中止になったナミビア、カナダ国旗とともに披露された

虎舞、大観音、ラグビーボールなどが描かれた釜石の大きな絵(右下拡大)。W杯で試合が中止になったナミビア、カナダ国旗とともに披露された

 
 同プロジェクトは世界中の子どもたちが描いた絵をつなぎ、一枚の大きな絵を作ることで、平和を愛する気持ちを育み、世界的視野で平和と環境を守る機運を広げようとするもの。同市では震災で受けた支援への感謝と、復興を遂げた被災地からの平和への願いを絵に込めた。「世界一大きな絵」はパリ五輪が開催される2024年にフランスで披露される予定。

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