世界をめぐる釜石の写真家・岩間幸司さん 郷愁を呼び起こす作品展「原点アジアの旅」


2022/10/06
釜石新聞NewS #地域

釜石市民ホールTETTOギャラリーで開催中の写真展「原点アジアの旅」

釜石市民ホールTETTOギャラリーで開催中の写真展「原点アジアの旅」

 
 釜石市中妻町のフォトグラファー岩間幸司さん(60)の作品展「原点アジアの旅」が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。「旅」をテーマに世界中をめぐってきた岩間さんが、ライフワークとして四半世紀、撮影を続ける東南アジアのインドシナ半島で生きる人々を独自の視点で切り取った作品約30点を展示。「どこか懐かしい風景の中に息づく人々の生活を感じてもらえたら」と来場を呼びかける。10日まで、入場無料。
 
 岩間さんは大学卒業後、写真事務所のアシスタントを経て20代後半に独立。フランス・パリを拠点に活動した。1995年に帰国。東京を拠点に欧州やアフリカなどを旅しながら撮影を続け、旅行誌や雑誌、広告などの仕事を請け負ってきた。東日本大震災を機に地元にUターン。写真家として活躍していたが、新型コロナウイルの流行で海外での撮影が難しくなり、現在は国内を中心に活動する。
 
「昔懐かしい原風景を思い出してもらえたら」と作品を紹介する岩間幸司さん

「昔懐かしい原風景を思い出してもらえたら」と作品を紹介する岩間幸司さん

 
 フォトグラファーとして「何か一つをテーマで撮りたい」と考えていた頃、インドシナのラオスが旅行者の受け入れを始め、「写真集も少なく、仕事のチャンスがある」と96年に撮影のため初めて訪れた。「生活感があふれ出す街々。妙に懐かしく、少年時代の記憶がよみがえってくるようで、五感がうずいた」。その後もインドシナ各国に通い続け、98年に東京で初個展。その時に展示した作品を今回、地元釜石で紹介した。
 
インドシナ半島で暮らす人々の生活を写した作品が並ぶ

インドシナ半島で暮らす人々の生活を写した作品が並ぶ

 
岩間さんは訪れた人に撮影時の裏話なども伝えたりした

岩間さんは訪れた人に撮影時の裏話なども伝えたりした

 
 当時主流だったフィルム写真をパネルにした作品が中心。ラオス、ベトナム、カンボジアで生活する人々の笑顔、雄大な自然風景が並ぶ。長屋のように連なる家々と干された洗濯物、路地でゴム跳びをする子どもたち、家族総出での豆腐作り、川で水浴びしたり洗濯したり…。自然の色をそのまま写し出すフィルム写真の持つ独特の風合いが、岩間さんがファインダー越しに感じた「ノスタルジー」を追体験させてくれる。
 
 デジタルに移行し、コロナ禍前に撮影した作品6点も展示。時の移ろいはあるが、変わらぬ信仰、郷愁を呼び起こすような風景が残る。山田町の50代女性は「子どものころの暮らしと似ているところがあり、懐かしい感じ。行ったことのない場所なのに」とじっくりと見入っていた。
 
コロナ禍前に訪ねたインドシナを写した作品も並んだ

コロナ禍前に訪ねたインドシナを写した作品も並んだ

 
 1日は、スマートフォンを使った写真教室を開催。スマホで写真を撮る時のこつ、無料の画像加工アプリ「Fotor(フォター)」の使い方などを伝えた。参加者はパンやカップ・ソーサーなどを題材に撮影と画像加工に挑戦。上中島町の美容師菊池りささん(50)は「インスタグラムで写真の投稿を始めたばかりで、魅力的な見せ方を覚えたい。少し手を加えると、写真の雰囲気が変わるのが分かった。知ったことを生かして、早速投稿したい」と喜んだ。
 
1日限定の写真教室ではスマートフォン撮影のこつを伝えた

1日限定の写真教室ではスマートフォン撮影のこつを伝えた

 
 「旅行が好き。写真は2番手」と岩間さん。写真は旅を楽しむ手段だが、カメラを持たずに旅することはできないという。これまでに100カ国余りを旅し、今はひと休み中。撮りためた写真を整理し、「1冊にまとめたい」と思い描く。そして、「写真を撮りたいと思える時に旅したい」とも。カメラを手に再び世界に飛び出す日を楽しみにする。
 
 釜石・大槌地域で活動する作家を紹介する同ホール自主事業「art at TETTO」の一環。午前9時から午後9時まで鑑賞できる。

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