震災復興へ願い込め、グリーンベルトに桜植樹 釜石市民「かけがえのない故郷の風景を」
グリーンベルトに桜の苗木を植える地域住民
東日本大震災の津波で被災した釜石市東部地区、釜石港周辺に築造された盛り土避難路(通称・グリーンベルト)に10日、桜の木が植えられた。市と釜石に桜を植える会(中川淳会長、会員17人)が植樹会を開き、市民ら約60人が参加。まちの復興と震災の風化防止を願い、「きれいに咲いた桜並木を歩く日」を想像しながら、協力し合って作業に励んだ。
グリーンベルトは、港湾労働者や港周辺にいる人が津波発生時に、いち早く高台の避難場所まで安全に避難できるようにする堤状の盛り土緑地。普段は市民の散歩コースになるなど、憩いの場としても利用されている。
セレモニーで、野田武則市長は「桜をめでながら散策を楽しんだり、地域の人に喜ばれる場に。いざという時に人と地域を守る場でもあることを忘れないでほしい」とあいさつ。代表者13人が、エドヒガンザクラを記念植樹した。
桜の苗木を記念植樹する野田武則市長ら
釜石に桜を植える会メンバーらも記念植樹
その後、参加者は手分けして植樹。エドヒガンのほか、ジンダイアケボノ、ヤエザクラ、ヤエベニシダレザクラの4種計80本の苗木を植えた。枝には、参加者の名前を書いた木札を結び付けた。「桜もみんなも元気になりますように」「きれいな花を見せて。会いに来ます」。桜の成長に込めた思いや願いをつづった。
子どもも大人も協力し合って作業に励んだ
名前や願いをつづった木札を結びつけた
丁寧に作業を進めていた野田町の佐々木ヨネ子さん(77)は「丈夫に育ってほしい。花が咲いた頃、歩くのが楽しみ」と期待。初対面の子どもたちとの交流も楽しんだ様子で、「みんなが笑顔で集える場になればいいね」と待ち望んでいた。
「未来の釜石を桜の里に」と願いを込めた植樹会の参加者
釜石に桜を植える会は2013年に発足。復興のシンボルとして桜を植え、未来の遺産とすることを目的に活動してきた。全国から多くの苗木や支援金が寄せられ、これまでに市内の津波被災地区や老人福祉施設、公園などに1000本超を植えた。グリーンベルトには16年に70本余を植えたが、シカの食害で残ったのは数本。この植樹会を前に約40本を追加で植樹した。今回は、幹にテープを巻き付けるなど食害防止の対策も施した。
古里を離れ北海道函館市で暮らす中川会長は「震災で色彩を失った故郷の懐かしい風景をよみがえらせたい。植えるのは始まり。手をかけ育ち、咲いた花を見て豊かな心をほころばせてほしい。この桜並木が、新しい時代を生きていく人々のかけがえのない故郷の風景になるだろう」とメッセージを寄せた。
釜石新聞NewS
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