震災後初 釜石で待望の裏千家淡交会茶会/石川県の和菓子店 絆の岩手支援


2022/07/21
釜石新聞NewS #地域

茶道裏千家淡交会岩手支部が釜石市民ホールで開いたチャリティー茶会=10日

茶道裏千家淡交会岩手支部が釜石市民ホールで開いたチャリティー茶会=10日

 
 一般社団法人茶道裏千家淡交会岩手支部(鈴木俊一支部長、500人)は10日、釜石市でチャリティー茶会を開いた。各地持ち回りで続ける茶会は、新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催。同市で開くのは2006年以来で、東日本大震災後に新設された市民ホールTETTO(大町)が会場となった。市内外から茶道愛好者ら200人以上が集い、心づくしのもてなしを楽しんだ。
 
 釜石、大槌両市町の会員を中心に約40人が運営にあたり、「薄茶席」と「立礼席」で客人を迎えた。来場者は季節感あふれるもてなしを堪能。日常の疲れを癒やす空間で心安らぐひとときを過ごし、笑みを広げた。
 
 新型コロナの流行が続くことから、会場では感染防止対策を徹底。菓子や茶は運んだお盆から各自受け取ってもらい、使用した茶わんは洗浄後、熱湯消毒。菓子や茶をいただく時だけマスクをはずすよう協力を願った。
 
お盆から茶を受け取る来場者。感染症防止の作法

お盆から茶を受け取る来場者。感染症防止の作法

 
待ち望んだ茶会で心地よい時間を楽しむ=薄茶席

待ち望んだ茶会で心地よい時間を楽しむ=薄茶席

 
 来場者に好評だったのが、子どもたちが担当した立礼席。同市で04年度から続けられる裏千家茶道こども教室の受講生15人と茶道に親しむかまいしこども園の園児6人がお点前とお運びで、日ごろの稽古の成果を発揮した。小学1年時から同教室に通う横田楽君(甲子中1年)は一席目でお点前を披露。「いつもよりすごく緊張した」と言いつつも堂々とした所作を見せ、さまざまな人たちと接することができる貴重な場から学びも得ていた。
 
立礼席で薄茶点前を披露する横田楽君。「おいしいお茶を」と真剣そのもの

立礼席で薄茶点前を披露する横田楽君。「おいしいお茶を」と真剣そのもの

 
「お茶をどうぞ」。涼しげな浴衣姿でもてなすこども教室の生徒

「お茶をどうぞ」。涼しげな浴衣姿でもてなすこども教室の生徒

 
 盛岡市の山内敦子さん(61)は「素晴らしい時間を過ごさせてもらい、心が洗われるよう。子どもたちのお席もとても良かった。未来への希望が感じられ、うれしくなった」と喜びの表情。震災から11年が経過したまちの様子にも目を向け、「市民の皆さんが前を向き、復興に力を尽くされてきたのだと改めて実感した。これからも応援していきたい」と思いを込めた。
 
 同支部では来場者から寄せられた募金を後日、釜石市と大槌町に寄付する予定。
 

復興支援の絆 今も強く 「和菓子で笑顔を」石川・行松旭松堂 茶会協力で来釜

 
行松旭松堂(石川県小松市)が開いた和菓子作り体験会=9日、青葉ビル

行松旭松堂(石川県小松市)が開いた和菓子作り体験会=9日、青葉ビル

 
 今回、茶会に欠かせない菓子を提供したのは、石川県小松市の老舗和菓子店「行松旭松堂」(1837年創業)。行松宏展社長(51)は震災後、裏千家淡交会岩手支部が沿岸被災地で行ってきた呈茶のボランティア活動に同行し、菓子の提供や和菓子作り体験で被災者を励ましてきた。釜石訪問は今回が初。茶会前日の9日には、市民対象の和菓子作り体験会も開き、市民と交流を深めた。
 
 青葉ビルで3回に分けて開催した和菓子作り体験会には、地元の親子や茶道関係者ら約80人が参加。初夏を代表する花「夏椿」を模した生菓子作りを行った。4色のあん生地が用意され、参加者は花の形に仕上げる作業に挑戦。薄く延ばした白と緑のあんを重ねて花びらの色合いを再現、丸めた茶あんをくるんだ後、茶巾とビー玉で花の形を作った。最後に網でこした黄あんを雌しべに見立て飾り付けた。
 
出来上がりを想像しながら初めての和菓子作りに挑戦!どんな「夏椿」に?

出来上がりを想像しながら初めての和菓子作りに挑戦!どんな「夏椿」に?

 
網目を通した黄色のあんを慎重にすくい上げる

網目を通した黄色のあんを慎重にすくい上げる

 
 伊藤碧泉さん(双葉小5年)は「あんを包むのが難しかったけど楽しくできた。出来栄えは80点ぐらい。おいしくいただきたい」と満足げ。こども教室で茶道を習う姉の珠奈さん(釜石中3年)は和菓子には親しみがあるが、自分で作るのは初めて。「茶席ではいつもきれいなお菓子を出してもらう。今日の体験で、手間をかけて作られていることも知れた。職人さんに感謝したい」と話した。
 
自分で作った和菓子を手にするボーイスカウト釜石第2団の団員

自分で作った和菓子を手にするボーイスカウト釜石第2団の団員

 
 行松社長は2011年6月下旬に初めて本県被災地を訪問。避難所生活を送っていた被災者らと和菓子作りを行った。以来、年に数回の訪問を継続。仮設住宅、復興住宅などへと生活の場を替えていく被災者らに心潤う時間を届け、寄り添い続けてきた。「被災後間もない大変な時期でも、周りの人のことを思い行動する姿に感銘を受けた。岩手の皆さんのやさしさに触れ、自分自身の人生観も大きく変わった。ご縁をいただいたことに感謝しかない」と行松社長。
 
一生懸命作業する子どもを見守る行松宏展社長

一生懸命作業する子どもを見守る行松宏展社長

 
 今回の茶会では、初めて支援に訪れた時に被災者らと一緒に作った生菓子「星に願いを」を提供。「当時の気持ちを思い出し、皆さんがまた願いをかなえられるよう心を込めて作らせていただきたい」と腕を振るった。
 
茶会で提供した「星に願いを」(左)と体験会で作った「夏椿」(右)

茶会で提供した「星に願いを」(左)と体験会で作った「夏椿」(右)

 
 震災から11年―。今なお続く岩手との絆に行松社長は「喜んでくれる人がいる限りは足を運びたい。『忘れてないよ』という思いを伝えていければ」と末永い交流を願った。

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