歌い継ぐ釜石艦砲戦災 CD完成「翳った太陽」歌う会 収益はウクライナ支援へ


2022/07/04
釜石新聞NewS #地域

完成したCDを手にする(左から)種市会長、最知さん、菊地副会長

完成したCDを手にする(左から)種市会長、最知さん、菊地副会長

 
 太平洋戦争末期に釜石市が受けた艦砲射撃の惨禍を伝える合唱組曲「翳(かげ)った太陽」のCDが完成した。地元の女性コーラスグループ翳った太陽を歌う会(種市誓子会長)が、戦争の悲惨さや命の大切さ、平和の尊さを訴えながら語り継いできた歌。会員らは「形を残し、絶やさない」との思いを強めている。一部は販売し、収益を戦火に直面するウクライナの支援に充てる。
 
 組曲は、艦砲戦災体験者で2006年に他界した石橋巌さん(元市働く婦人の家館長)の絵手紙などを基に作られた。市内でピアノ教室を開く最知節子さん(79)が作曲を手がけ、計6曲(全17分)の作品に仕上げた。
 
 同会は最知さんを講師に05年から婦人の家で活動。市戦没者追悼式で献唱したり、小中学校で披露したりしてきた。東日本大震災後は「戦禍と重なる」としばらく活動を休止したが、戦後70年を迎えた15年に献唱を再開。会員の高齢化が進む中、17年には釜石中の生徒有志による特設合唱部が活動に加わった。後輩に受け継がれ、コールジュニア「蓮(れん)」が誕生。組曲の合唱に取り組んできた。
 
 新型コロナウイルス禍で大人も中学生も通常練習ができず、献唱も中止されるなど活動機会が減少。現在、会員は7人となり、会の存続について思いを巡らせてきた。「戦争体験者の語りを受け継ぎながら活動を継続してきた。何もしなければ、消えていくのでは」「今、残さなければ」。次の世代へ歌い継ぐため、CDという形で残すことを決めた。
 
 昨年7月に市民ホールで録音。小学生から80代までのメンバーが「歌詞の中にある戦禍の人々の不安、怒りが込められた言葉を大切」にしながら歌い上げた。中学生グループによる朗読「平和への願い」も収録。歌に登場する「やすひこくん」に宛てた手紙の朗読(小学生)も収めた。
 
野田市長(左)にCDを手渡す「翳った太陽」を歌う会メンバー

野田市長(左)にCDを手渡す「翳った太陽」を歌う会メンバー

 
 6月29日、最知さん、種市会長(74)と菊地直美副会長(59)が野田武則市長を訪ね、活動を報告。釜石の戦禍の歴史を知り、平和な未来をつないでもらうため、市内の小中学校にCDを贈ることを伝えた。最知さんは「形を残すことが大事。子どもたちに伝えるという意味で道が開けた」と少し肩の荷を下ろした様子。「ウクライナのすてきなまちが一瞬で失われていくのを毎日、目にする。戦争は絶対にいけない」と強調する種市会長は「できることで歌を継承していく」と思いを強めていた。
 
野田市長との懇談では組曲継承への思いを伝えた

野田市長との懇談では組曲継承への思いを伝えた

 
 CDは400枚制作。「聴いてくれたら、釜石艦砲を知ってもらえる」と半分を希望者に販売する。価格は1枚2000円で、送料(500円)を負担すれば郵送する。CD売り上げの全額を日本赤十字社に寄付し、ウクライナの救援活動に役立ててもらう。
 
 終戦間近の1945年、釜石は2度にわたり米英連合軍による艦砲射撃を受け、780人以上が犠牲になった。その7月14日と8月9日、大町の市民ホールTETTOに特設コーナーを設け、CDを販売する。時間は両日とも午前10時~午後4時まで。8月9日には市追悼式が予定されている。
 
 販売に関する問い合わせは事務局(電話0193・22・1364/メールYamayuri3131@gmail.com)へ。

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